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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第一章 入学
17/217

1_15_ハイクの初試合

ゲリラ投稿2発目!

 


【生徒会チーム1番手ハイク 対 ローレライ家チーム1番手シャロン・ローレライ!!】



「おいおい! マジか!」

「どうなるんすか!」

「まさか新入生同士とはな」



最初からチームの代表を出してきたローレライ家チームだったが、一つ疑問がある。



「先輩、あの子って強いんですか?」

「分からん。しっかり教育は受けてるだろうがな」

「系統も不明ですか?」

「水系統が多いとは聞いているが……たしか今回の旗頭は違うらしい」


そうこうする内に試合が始まるようだ。



【試合……開始!!】


ハイクが詠唱を始め、シャロンは4つの鉄輪を宙へ投げた。


「フォトンサテライト!」

「”飛翔し切り裂く風神の戯れ・・・ウインドカッター”」


ハイクの撃ち出した風刃がシャロンへと迫るが、シャロンが投げた鉄輪は宙で動きを静止し、その中央にある穴から光弾が飛び出した。


光弾の一発はウインドカッターを迎撃し、残りの三発がハイクへと迫る。



「なんだあれ!?」

「魔具だ。展開型のようだな」


迫る光弾は速いが、目で追えないほどじゃない。


ハイクは最小限の動きで回避し、光弾は試合前に先生がリング周囲へ展開しておいた魔法障壁に当たって消えた。



「あんなの使っていいのかよ!」

「手数に圧倒的な差が生まれましたね」

「それだけじゃない。間髪入れずに撃ち込まれちゃあ詠唱が難しい」

「名門との試合で最初に出てくる課題は、圧倒的な装備の差だよ」



この話をハイクはクリストフ先輩から聞いていたようで、動揺している様子は無い。


だが、俺達が話す間も次々と光弾がハイクへ迫っている。


それらを躱しつつ、避けられないものは腕で打ち払っているが……傷付いていく。



「先輩! ハイクにも魔具とか渡したんですよね!?」

「渡したが、1つのみだ」

「どんな魔具っすか!?」

「”励起制限の指輪”だよ。一度に使える魔力を制限する効果がある」



おお、なんか凄そう!


「相手の!?」

「自身の魔力だ」

「えぇっ!?」


駄目じゃん!!


なんでそんな魔具渡したんだ!?



「魔具は使い慣れないと危険が大きい。彼に渡すのは安全確保用が精一杯だった」

「つまりだな、反動が起きても大丈夫なように魔力を制限してるんだ」



魔法行使に失敗すると、制御を離れて反動が起こる。


それは構築中だろうが行使中だろうが、失敗した時点で発生するのだ。


だからこそ、無意識で行っている魔力励起を制限しているらしい。


魔力励起とは、体内に蓄えてある魔力が魔法を行使する際に使用可能な段階へ移行した状態を示す。


その励起状態の魔力を使用して魔法を行使するわけだが、それを制限する事で反動の規模をも制限するのが、”励起制限の指輪”の用途らしい。



「制御を離れた魔力が少なければ、反動も規模が小さい」

「焦ると魔法を失敗しやすいし、必要以上に魔力が励起しちまうからな」

「彼に渡した指輪なら初級魔法を平均的な規模で行使出来るよ。それ以上は無理だが、その程度なら反動が起きても安心だろう」


軽い魔法しか使えない状態なのに、あの手数を潜り抜けて攻撃に移るなんてのは難しいんじゃないのか?



「けどまあ、だいぶ慣れてきたらしいぜ」

「回避に専念すれば、だな」

「でも、さっきからあの子……」

「詠唱してますね」


観客席からの歓声もあって、シャロンが何を詠唱しているかは分からない。



「あの光弾は光系統ですよね?」

「そうだな。初級攻撃魔法の”フォトン”だ」

「彼女の魔具はフォトンを継続的に撃ち出すようだね」

「おそらく投げる前に魔力を込めてたんだろう」


「攻撃対象は彼女が事前に認識した相手か」

「だとすれば自動迎撃も含んでるようですね」

「もしくは対象以外の構築を担当する魔具かもね」

「性能高いな!!」



やがてシャロンの詠唱は終わったようで、右腕を振り上げる。


すると光の矢が十数本現れ、矢尻がハイクへと向けられた。



「”ラスターアローズ”」


魔法名と共に腕が振り払われ、一斉に光の矢がハイクへと襲いかかる。



「げ」


ハイクは何事かを呟いて、リングの一方へと走った。


そこに光の矢は追従する……追尾すんのかよ。



走る先には魔法障壁があるが……


「魔法障壁って通り抜けられるんですか?」

「魔法だけを阻むからね。ただ……」

「場外は負けだ」



ハイクは諦めたんだろうか。


そう思ったのも束の間、ハイクが走りながら詠唱を開始した。



「”駆ける我が身に風精の導・・・エアブーツ”」


ハイクが両足に風を纏う。


走る速度が増して、追いつきかけた光の矢はギリギリで膠着状態になった。



しかし、ぴたりと張り付いて逃がすつもりは無いようだ。


その間にシャロンは鉄輪を回収し、魔力を込めている。どうやら一定量の光弾を使うと補充しなければならないらしい。


で、補充中は他の魔法で時間を稼ぐと……隙がねえな。



「おぉ!?」


しかし一方のハイクは魔法障壁を通り抜ける寸前で跳躍し、障壁を蹴って場外を拒んだ。


すぐ背後に迫っていた光の矢は寸前で目標を見失い、障壁に当たって砕ける。



「なるほど。魔法は通過出来ないからこそか」

「魔法が打ち消される一瞬で壁蹴りしたんだな」

「ハイクーー!!」

「そのまま接近してやれ!!」



言われなくても、とでも言うかのようにハイクはシャロンへと走り寄る。



「っく! ……早く……!」


まだ魔力の補充は終わっていないようだ。


今がチャンス!



「”飛翔し切り裂く風神の戯れ・・・ウインドカッター”」

「フォトンサテライト!」


距離を詰める間にもハイクは風刃で駄目押しするが、シャロンも魔力補充が終わり鉄輪が再び活動を開始した。


ハイクの魔法は迎撃され、残った光弾がハイクを襲う。


だが、威力自体は低いと判断して腕で打ち払いながら走る勢いを緩めない。



そして……



「捕まえた」

「このっ! 放しなさい!!」


とうとうハイクが肉薄した。


シャロンは片腕を掴まれ、抵抗するが振り解けないらしい。



「こっからどうすんの!?」

「あんまし女の子に暴力振るいたくないだろうからな」

「降参してくれると助かるんですがね」

「あっ……」



少しの間抵抗が続いていたが、シャロンは力を抜いて俯いた。


観念したか、と勝利を確信しそうになった瞬間……鉄輪から光弾がハイクの背中へと十数発も撃ち出される。



「!」

「くぅっ!」


直前で察知したハイクは横っ飛びに回避したが、シャロンの腕を放してしまう。


で、その結果シャロンは自分の魔具に攻撃されたわけで……



「自爆かよ!」

「でも、耐えたみたいだね」

「あ、服が」

「ポロリか!?」

「バカッ!!」


咄嗟に腕で庇ったようで、目に毒な光景とはならなかった。


だが肩や足にも被弾しており、覗いた素肌は赤くなっている。



「ダメージは与えましたね。自爆ですが」

「でも距離は離されちゃったね」



シャロンが痛みによって綺麗な顔を顰めている間にも鉄輪はハイクへと光弾を撃ち続ける。


それをハイクは避け続けるが、距離は離されてしまった。



「またしても膠着状態か」

「どうすっかね……ん?」



少し考えるようにしていたが、やがてハイクは詠唱を始める。



なんと光弾を避けながらだ。


詠唱が可能なほど慣れてきたらしい。



「”刻めよ刻め風に囚われ、抉れよ抉れ果てる時まで、全てを包む鋭き抱擁、骨身を晒せ風神の腕・・・トルネード”」



おい!?


上級魔法じゃねえか!



「ここでか! 容赦ねえな!!」

「いや、それより指輪の効果は!?」



風系統の上級魔法”トルネード”がハイクによって行使され、耐魔コンクリを少し削りながらシャロンへと迫る。


鉄輪が迎撃しようと光弾を撃ち出すが、竜巻には全く効いていないようだった。



「なっ、なによこれ!?」

「とどめ」

「こっちも……え……どうして……」



シャロンの叫びに、ハイクは無慈悲に答えた。


彼女には聞こえていないようだが。



「くぅ……”拒み護る光精の加護・・・ライトシールド”!」



動揺しつつも詠唱は出来たようで、光系統の防御魔法がシャロンの前方3mほどの位置に展開された。


だが、それで止まるほど上級魔法は甘くない。


少しの拮抗すら感じられぬほど、あっさりと光の盾が砕かれ、竜巻は進撃を再開する。


すぐさま走って移動するシャロンだったが、ハイクが腕を振るうと竜巻も進路を変えて追いすがる。



「うぅ~~……どうして……」


やがてリングの角に追い込まれ、進退窮まったシャロンは涙目で叫んだ。



「降参よ!!」


その言葉を聞いて、ハイクは竜巻の進路を再び切り替える。


誰もいない方向へ向かい、そのまま魔法障壁へ衝突。



なんとか消滅したものの、耐魔コンクリには竜巻の軌跡が刻まれていて、上級魔法の威力が推し量られる。



「あんな寸前になっても先生達は止めないんすか?」

「魔法障壁の位置を少しズラせば、シャロン嬢を障壁の外へ逃がす事が出来るからね」

「にしてもハイクは上級まで使えるのかよ」

「あれだけしか上級は持ってないみたいですけどね」



てか指輪どうした?



「あいつ指輪は?」

「嵌めてないみたいね」

「いつの間に外したんだか」


俺達が不思議そうに首をひねる間、勝利を飾ったハイクはシャロンへと近付いた。


握手を求めるかのように手を差し出している。




ーーーーー


「なによ! 勝ち誇る気!?」

「いや、指輪返してもらおうと思ってね」

「指輪? ……あっ」

「どうせ魔力不足で相殺は出来なかったと思うよ」


「……私を守ったつもり?」

「は?」

「焦って魔法を失敗したら危ないから、これを」

「いや、違うけど」

「え?」


「思考を別に割かせるため。さっきの竜巻って、制御してる間は動けないんだよね」

「……」

「だから俺が狙われたら危なかった。これから練習すれば、動きながら制御出来るかもだけど」

「そう……どのみち私の負けね」



ーーーーー



指輪を返してもらい、ハイクが俺達の居る待機席へと戻ってきた。


「ハイク!! やったな!!」

「まさか上級まで使うなんてな」

「もう少し情けをかけましょうよ」

「いやあ、結構危なかった。おかげで魔力が空に……」


おぉ!?



「うお……ハイク!大丈夫か!?」

「あ~……ごめん、席まで運んで」

「それはいいけどよ、指輪って接近した時に外したのか?」

「そ。隙を見て相手の指に通しておいたんだよ」

「早業だな!」



ハイクは魔力が枯渇しかけて、力なく寄り掛かってくる。


慎重に待機席へと座らせた俺たちは、未だ収まらない興奮のまま次の試合を待つのだった。



魔具は安全第一です。

続いていきます!

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