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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第一章 入学
13/217

1_11_状況整理

おはようございます!

 


「じゃんじゃん食えよ、美味いぞ」


そう言いつつ肉を頬張っているのはケートス先輩だ。


ペースも早いし、全部自分で食べ切りそうな勢いである。



「幸せぇ……学校来て良かった」


そう言いつつ締りのない顔でケーキを貪っているのはマリだ。



……あ! 俺の分まで食ってやがる!!




「太れ! 嘆け! そして繰り返せ!!」

「乙女になんてこと言うのよ!」


忘れたのか? 俺は乙女の敵だけど? なにか問題が?



食い物の恨みもあるし。



「男なんか去勢されちゃえ!!」

「見境ねえな」

「そしたら世界は平和になる、ってお母さんが言ってたもん!」


大混乱だっつの!



「ちょくちょく親御さんの話を挟んでくるよな」

「何者なんでしょうか」

「闇が深そうな人物だよね」



結局、甘味は食い逃したものの腹は膨れたので、状況確認に戻るとしよう。



「さっき話した通り、名門貴族が中心となって寮が占拠されます」

「これは避けられそうにないね」

「面と向かって歯向かえないだろうしな」

「それでも、なんとかなる体制を保てた要因が、一般生徒の少なさでした」



名門貴族と上級貴族、後で傘下に加わる下級貴族で8棟もが占拠される。


だから一般の学生は全員が大部屋寮に移っていたと。



「そこで今回発生した問題は、一般生徒が多かった」

「大部屋が足りないって状況ね」


「それで相談者が相次いで、生徒会は多忙の極み」

「しかも下級貴族すら居場所を失う始末だしな」


「予想出来なかったのかな?」

「さすがに早すぎた。2週間ぐらいで誘導していく予定だったんだがな……」



現在の状況をケートス先輩に聞いてみたところ、大部屋を確保できた生徒達に協力してもらい、可能な限りの人数を迎え入れている最中らしい。



「けど、そこでも問題が起きてな」

「まあ予想は出来るっすね」

「下級貴族ですか」

「そうだ。順番を先にしろ、とかなら可愛い方だ」



中には大部屋自体を明け渡せと申し出てくる猛者も居るそうだ。


貴族恐るべし。



「事情は同じでも身分が違うってか?」

「後日になったら名門勢力に拾われる可能性もありますからね」

「馴れ合うつもりは無いって考えだよ」



と、ここでケートス先輩が更に情報を足してくる。



「既に生徒会寮へ部屋を移動させるという意見も出てる」

「あの……質問いいですか?」

「おう、どうしたソマリ」

「生徒会寮に名門貴族勢力じゃない生徒を住まわせて良いんですか?」

「? ……どういう意味?」



マリが知らないそうなので、俺が医務室の外でソマリから聞いた話を伝える。


生徒会が勢力争いの主戦場だって話だ。



「それって、ここが一番危ないんじゃないの?」

「らしいな」

「ルイスが誘ってきたんでしょ!?」

「ごめんなさい」



素直に謝っておこう。

事情も知らずに無責任だったよな。



「そういうわけで、生徒会は名門貴族勢力が争う戦場です。なのに生徒会寮へ一般の生徒達が住んでも許されるんでしょうか?」

「まあ大丈夫、とは言い切れねえな」



だが、とケートス先輩は続ける。



「そもそも名門貴族は生徒会寮に住まない」

「へ?」

「住むとしても序列の低い奴らだろうな。拾い上げた下級貴族とか、従者だったりだ」



それまたどうして? と聞きかけた時、ハイクが答えを出してくれた。



「有事の際は一番危険だから、だね」

「そういう事だ」



そういや先輩が昨日言ってたな。中央部を守る布陣だ、って。



「生徒会寮が最前線となるからな。尊い御方は置いておけない」

「でも隣が最上級生寮ですよね?」



名門貴族の血筋が最上級生だったら、最前線のすぐ隣へ住む羽目になるはずだ。


できれば中央にしたいんじゃないのか?



「名門に限らず、貴族なら最上級生になった時点で学校に居ない時間が多い」

「……ああ、世に出る準備ですね」

「そうだ。社交の場で顔を見せておいたり、学校では学び足りない部分を補填するんだ」



つまり、アレか。



「最前線ってガラ空きじゃん?」

「建前ってやつだ。いざとなったら前に出て戦うって見せているが、実際は最優先で避難させられる」



何かあっても戦うのは先生達らしい。


考えてみれば、それもそうか。



「てことはさ……住み放題?」

「やりたい放題?」

「いや、そうはな」

「ケーキ食べ放題!」

「だから! そうはならない!」



一瞬見えた希望が打ち砕かれた。



あと……マリ?


お前のは冗談だったよな?


なんでそんなに落ち込んでんの?




「生徒会寮に住んでも大丈夫とは言い切れない。名門貴族が住まなくても、使う可能性がある」


生徒会として活動する際は、校舎内にある生徒会室で最終的な決議が下される。



だが、そこに至るまでの過程は生徒会寮が使われていたそうなのだ。


双方の名門貴族勢力が、相手を出し抜くために画策する場として。



ただ、他の寮も占拠してるわけだし、生徒会寮に拘らなくても良いのでは? という話が出ているらしい。



「あとは下っ端が住む可能性もあるが、こちらも並行して解決の糸口を探っている」



そういった諸々の話は、クリストフ先輩を主導にして名門貴族達と交渉するそうなのだ。




「上手く運べば生徒会寮に一般の学生を移動させられる」

「来年以降はどうなります?」

「そこは要検討、だな」

「とにかく現状の解決が先っすね」



まあでも、大体の状況は整理できたかな。



「先輩」

「ん?」

「一つ確認したいんですけど」



声を上げたのはハイクだった。



「先輩達は貴族じゃないですよね?」



………………んん!?



「そういえば! 貴族らしくない!!」

「クリストフ先輩なら貴族って言われても信じるけど……」

「ケートス先輩は、ちょっとな」

「アレよね」

「無理がある」

「おうおう、言いたい放題だな」



なんてこった……どうして疑問に思わなかったんだ?



今まさに生徒会の人と話してるじゃねえか!


さっきまでの流れなら先輩達も貴族って事じゃねえの?



というか……



「名門貴族が生徒会長じゃ……ないんですか?」

「おう。今の会長は一般人だ」

「一時的な措置ですか?」

「違うな。何事もなければ、このまま卒業まで就任する予定だ」


ハイクに目を向けて聞いてみる。


「いつから知ってた?」

「確信じゃなかったけど、入学式でもスピーチしなかったからね」

「最初っからじゃん!」

「でも、あれは俺達が騒いだから……」

「誰かに引き継いで戻ればいい。他にも色々と不自然だったよ」



たしかに、思い出してみれば親しみ易すぎた気がする。



「そういうのは教えてくれよ!」

「あんまし興味なかったからね」

「ハイクはそういう性格だった!」

「ソマリは!?」

「今朝……いえ、昼ですね」



親しみ易いのは人柄だったとしても、周りに貴族の一人も寄り付かないのが気になったらしい。



「気付いてないの俺だけ!?」

「ルイス、私もよ」

「それが悔しい!」

「どういう意味よ!」


「ラグは!?」

「勘で分かってた」

「それ無効だろ! お前もこっち側な!」

「よしきた! これで3対2だぜ!」

「勝負じゃありませんから」



ひとまず気付けなくても仕方ないと開き直れる人数を確保して、落ち着くのだった。



「とりあえずソマリが言ってた魔法学校の理想的な状況に、現状が全く一致してないってのは分かった」



幾つかあるよな。


「一つ! 庶民が多い!」


「二つ! 生徒会長が一般人!」


「三つ! 下級貴族が全員孤立!」


「四つ! ケーキが美味しい!」



「五つ。今年から旗頭が2人です」



なんですと!?



初耳だけど!?


「まあ、今更なんで黙ってようかと思いましたが、生徒会長が交渉しているのであれば無関係ではありませんから」



ソマリが自白する話によれば、現在の名門貴族は二家であり、ゼグノート家とローレライ家だ。


ゼグノート家は旗頭の周期にあり、旗頭が3年生、第二子が2年生となっている。


一方のローレライ家も今年から旗頭の周期に入り、旗頭が1年生、あとは……



「最上級生にローレライ家継承世代の五期第二子、2年生に第三子が居ます」

「は? 学生の間は修練世代じゃねえの?」

「世代は、旗頭が20歳になったら交代します」


「つまり、現在のローレライ家当主が後継者だった期間に、37歳と39歳で出来た子って事だね」

「第三子を例にすると、生後1年で継承世代として扱われ、21歳で現役世代です」


「経験が浅すぎるし、第三子ともなれば実家の政治に関われないかも」

「おそらく政略結婚などで上級貴族と縁を結ぶ流れでしょうか」


「それも当主の補佐と言えば、聞こえは良いけどね」

「ですね。一応は明青の血を持つので引く手数多でしょうし」


「あと1年遅かったら暗青の血だった事を考えると、幸運だったのかな?」

「本人次第ですが、旗頭との関係はどうなるのでしょうね」


「それこそ本人次第じゃないかな?叔母と姪ではあっても、継承権に天地の差があるから」

「たかだか1年の年齢差なのに、叔母の立場はキツいものがありますよ」


「そうだね。継承世代だから当主の補佐が最優先だけど、政治に関われないから他を求められるし」

「今なら旗頭の補佐ですね。たしか昨年までローレライ家が生徒会長でしたっけ?」


「そ。五期でありながらゼグノート家の旗頭まで抑えて、4年間生徒会長に居座り続けた」

「傑物という噂でしたね」

「まあ卒業したし、今年は周期が変わってローレライ家も旗頭だけど」


「ここで連覇出来ないと、今回の修練世代は評判が地に墜ちますよ」

「とんでもない置き土産だよね。叔母も姪も胃が痛いんじゃないかな」


「穴が空きそうですね。あと2年は両家の旗頭が在学するわけですから」

「両家とも、負けられない戦いなんだよ。それを補佐する第二子達にとってもね」




……いつしかハイクとソマリが話し込んでるが、言いたい事はただ一つ。



「ややこしい!」

「だな!」

「もっと簡単に教えて!」



ケートス先輩も頷いている。


先輩……



「また紙に書きましょうか」

「じゃあ俺が」



今度はハイクが簡単に説明してくれるそうだ。


何やら書き足していくが……



*2年前から先日まで

 A家:見た目は弱そう、勝者、実は強い、すごい奴


 B家:見た目は強そう、敗者、見かけ倒し、情けない奴




*今年から2年間

 A家:強そう、当然勝つよね?見た目弱そうな人が勝ったんだから


 B家:強いはず、今回こそ勝つよね?負け犬ってイメージあるけど




「こんな感じかな?」

「B家ボロッボロじゃん!」

「A家もプレッシャーすげえな!」



さっきの話しぶりだと、A家がローレライ家でB家がゼグノート家か。




「で、今こうなってる」


お、まだ続きがあったようだ。



*現在

 一般:生徒会長だけど文句ある?

 A家:ふざけんな!

 B家:邪魔すんな!




「恨まれてる!」

「一般はこんな喧嘩腰じゃねえだろ!」

「でも、そう見えてしまう状況なんだよね」


そんな状況でクリストフ先輩は交渉してるのか?



「交渉できるの?」

「現在進行中だ」

「どういう話し合いになるんすか?」

「生徒会長として一般が安らげる場所を確保したい、って内容だな」

「最初の一言でアウトじゃん!」



生徒会長として? 挑発行為にしかならねえよ!



「ここは生徒会長の座を明け渡すって条件で一つ」

「どっちに?」

「……」

「渡されなかった方が何を思うでしょうね」

「一般が潰される……!」

「まあ落ち着け」



その時、扉がノックされた。


ケートス先輩が対応するようだ。



「誰だ?」

「クリストフだ」

「お疲れ様です。おい、生徒会長が帰ってきたぜ」

「え!? もう交渉が終わったんですか!?」



こんな早いってことは、アレか!?


「決裂?」

「戦争?」

「退避! 退避いぃ!!」

「だから落ち着けって!」



ひとまず生徒会長が戻ってきたため、本人に話を聞いてみる運びとなったのだった。




次回・・・狼藉者

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