1_10_部屋への帰還
本日2本目の投稿です。
まだホームメニューが使いこなせません。
マリの体調もある程度回復したため、俺達は雑談しながら生徒会寮を目指している。
医務室は当然のごとく校舎内にあるのだが、経路を分かっているのは今んとこソマリだけだ。
「なんか今日はソマリに頼りっぱなしだな」
「それな」
「何をですか?」
「医務室の場所とかだよ」
「ああ、その事ですか。真っ先に覚えてただけです」
なるほど。
つまり、あれだな。
「お姉さん目当てか」
「違いますよ!」
「照れんなって」
「そうよソマリ君。男の人は本能に逆らえないって言ってたもの」
「それって誰情報?」
「お父さん」
うん、分かってた。
「マリさん、ご両親からの知識は封印しましょう」
「どうして?」
「信じた結果が今の状況だからです」
「……反論できないわね」
ともあれ、マリの系統や出身地を聞いてみる。
「私の系統? さっき見たじゃないの」
「水は分かるけどさ、他には無いのか?」
「無いわね」
てことは水系統のみか。
まあ、系統ってのは複数持つ方が珍しいからな。
過去に最大で4系統を持つ英雄がいたんだが、使いこなすまで20年の修練を必要としたらしい。
「出身は?」
「ノーブレの街よ」
「遠いの?」
「それなりにね」
「そっか」
「……」
「……」
話題が尽きた……
「あ~……ご趣味は?」
「え? えっと、園芸を少し」
「素晴らしいご趣味ですね」
「ありがとうございます……あなたは?」
「冒険を嗜む程度ですよ」
「まあ、逞しいですね」
「お見合いか!」
もちろんネタだが、マリも普通に合わせてくるのが意外だ。
「俺達も色恋沙汰とか今後あるかもね」
「お前は興味なさそうだけどな」
「というより、ルイスとマリさんは発展しないでしょう」
「出会い方が悪すぎたね」
お前ら分かってねえな。
「だからこそ気軽に練習出来るんだろ?」
「うんうん、そういう前向きな考え方は好きよ」
「え……あ、どうも」
「あ……私ったら、いきなり何を……」
「……マリさん」
「はい……」
「今度、お食事でもいかがですか?」
「喜ん」
「もういいから!! なんか痒くなってきた!」
などと話しながら歩いてると、ようやく寮が見えてきた。
俺達が部屋を構えているのとは反対方向の生徒会寮だ。
なにやら生徒達が集まっている。
まだ生徒会に相談したい新入生が押しかけているみたいだな。
ーーーーー
「ひとまず生徒会長が居るか確認しましょう」
「居たらどうするんだ?」
「伝えたい事があります」
「んでもさ、俺らって見付かるとマズいんじゃねえの?」
俺達は今、寮を遠めに見られる木へ登って隠れている。マリは登れなかったので木陰に座り込んでいるが。
「万が一を考えただけです」
「ここはマリさんに見てきてもらったら?」
「そうだな。お〜い」
「なあに?」
「ちょっと偵察してきてくれ」
「へ?」
「あの寮に生徒会長が居るか見てきてほしい」
「顔とか覚えてないんだけど……」
それなら大丈夫。
「いかにも優等生って感じの人」
「分かった。行ってくるね」
すんなり請け負ってくれた。
てくてく歩いていき、人ごみに紛れていく。
「あいつ大丈夫か?」
「ふわっとした説明だけでしたよね」
「大丈夫だって! 分かるはずだ」
その俺の言葉は正しかったようで、すぐにマリは戻ってきた。
「いた! 優等生っぽい人!!」
「ほらな?」
「ダハハハハ!! マジで分かっちまった!」
さすがクリストフ先輩だ。
てことで、今度は言伝を頼む。
「生徒会長の名前はクリストフっていうんだけど、言伝してきてほしい」
「えぇ〜……さっき一緒に言ってよ」
「それもそうだ、悪い」
たしかに、二度手間させるのは申し訳ない。
けど文句を言いながらも、引き受けてくれるようだ。
「まあいいわ。何を伝えるの?」
「時間が空いたら部屋の事で相談させてください。僕達は先に寮へ戻っておくので、と伝えてください」
「はぁい」
またもや、てくてくと歩いていくマリを見送る。
「なあソマリ、どうやって寮に戻るんだ?」
目の前の生徒会寮をA棟とすれば、俺達が戻ろうとしているのはB棟だ。
しかし、いずれにしろ新入生達が押し寄せているらしい。
「それは僕が考える必要はありませんよ」
「は?」
「すぐに分かります」
よく分からず待っていると、マリが戻ってきた。
だが、もう1人一緒に連れている。
あの人は……
「よっ」
「ケートス先輩?」
「会長は忙しいからな。俺が案内してやるよ」
なにを?
「僕らが寮に戻ろうとすれば、面倒を避けるために案内役を付けてくれると思ったんですよ」
「そういう事だ。うっかり部屋に戻るとこを見られたらマズいからな」
「忙しい中で人手を割かせるのは心苦しいですけどね」
「気にすんなよ。お前らの居場所が分かって安心出来たからな」
てなわけで、俺達は人目を避けつつ生徒会寮B棟へと移動した。
ソマリの読みが当たった形だが、どうやって部屋に戻るんだ?
「こっちに来てくれ」
ケートス先輩に連れられて寮の側面に回りこむ。
「俺の部屋の窓を開けるから、そこから入ってくれ」
「分かりました」
あ、そういう事か。
納得して待っていると、やがて4階にある窓が開いた。
「それでは行きましょう。”空駆け舞い踊る風精の誘い・・・エアブルーラ”」
ソマリの体が浮遊する。
風系統の補助魔法、エアブルーラだ。
「では、手を握ってください」
「あいよ」
手を握ると、俺の体も浮遊し始めた。これでよく空を飛んでたな。
ただ、ソマリに触っていないと効果が発揮できないし、どう飛ぶかは魔法行使者にしか操作できない。
ラグも続き、3人で部屋の中へ飛んでいく。後からハイクとマリも飛び込んできた。
「この魔法面白いね!」
「だろ? よくこれで飛び回ってたぜ」
「持続型なので配分を間違えると堕ちますけどね」
「それで一回死に掛けたな」
俺とソマリ、ラグとハイクで飛んでた時にソマリの魔力が尽きて堕ちた事がある。
魔力残量が減ってきたから高度を下げていたんだけど、計算が甘くて下降途中で尽きてしまったのだ。
幸い池に落ちたから無事に済んだものの、ソマリが意識を失って溺れる寸前だった。
「なんだ、飛んでこれたのか」
そう言って肩を竦めるケートス先輩の手にはロープが握られていた。
これで登らせるつもりだったらしい。
「それマリには無茶っすよ先輩」
「何言ってんだ。これぐらい登れないと授業に付いていけないぞ?」
「スパルタだぁ……」
「ま、選択授業の内容だから避けられるけどな」
ともあれ寮に戻ってこれたわけだ。
「やっと落ち着ける」
「なんだか1日が長く感じますね」
「今は……午後の4時くらいか」
ちょっと小腹が空いてきたな。
「なんか食いたいし、食堂行くか」
「アホですか! やっと戻ってきたのに!」
「つってもなあ……堂々と出られるまで篭るつもりか?」
「今日中に騒動が収束するとは思えねえしな」
「餓死するのが先かもね」
冗談にもならねえよ。
なんか意識すると余計に腹減ってきた。
「腹減ったべ」
「んだんだ」
「飯ぃ~」
「お菓子でも良いからぁ」
ちゃっかりとマリも混ざりつつ、飯くれコールをする。
ソマリは溜息を吐くばかりだったが、ケートス先輩が自身の胸を叩いた。
「よっしゃ任せとけ。食堂から持ってきてやるよ」
「さっすが先輩っす!」
「尊敬します!」
「わっしょ〜い」
「甘味! 甘味!」
先輩を胴上げしつつ讃えて、食料を持ってきてもらう。
その間に俺達はグダグダ過ごしてたんだが、どうにもなぁ……
「先輩をパシっておいてダラダラするのは良くないですね」
「だよな」
どうすっか……部屋は出られないし。
「状況の整理をしておきましょう。各々が把握できていない部分があるかもしれません」
「真面目か」
「真面目ですよ!」
てなわけでソマリを筆頭に、ハイクが補足として状況確認を行うことになった。
「まず、本来の理想的な状況を説明します」
生徒は名門貴族(頂点)、上級貴族(名門の取り巻き)、下級貴族(色々と事情あり)、一般(庶民)。
この4種類で分ける事が出来る。
そして、生徒が暮らす寮は生徒会用が2棟、最上級生用が2棟、上級生用が4棟、新入生用が2棟を基本としている。
あとは、大部屋用の寮が1棟存在するので合計11棟だ。
「そして入学した時点で、各寮に住み分けられます」
ここで、生徒会寮と大部屋寮を除く8棟は名門貴族勢力が占拠してしまうとさ。
ルール上は学年さえ守れば寮を自由に選べるはずなのだが、一般の生徒が貴族と同じ建物に住むなんてのは不可能に近い。
ソマリが言っていた軋轢というのは、身分差による居心地の悪さやトラブルを示していたのだ。
「そのため、一般の生徒は遠からず大部屋寮を使う事になります」
貴族との軋轢を避けたいのなら、貴族の居ない寮へ移るしかない。
そうして一般の生徒は大部屋へ集まってくると。
「俺の聞いてた話と全然違う」
「何がですか?」
「大部屋ってさ、仲の良い奴らで集まるって聞いてた」
冒険者を目指す仲間同士だったり、よほど仲の良い友人同士とかだ。
同じ部屋だと楽しく過ごせる面子が住む、って印象だったのにさ。
「それは……まあ……」
「補足するよ。ルイスの言っていた大部屋の使い方は、他の魔法学校で適用されるんだ」
「他?」
「そ。このグランバス魔法学校は名門貴族専用と言っても過言じゃない学校だったんだよ」
一般向けの魔法学校であるならば、俺の言った大部屋生活が適用されるらしい。
「外聞が悪いから、ここも一応は一般が入学出来るようにしてたけどね」
「ですが、実際は大部屋に押し込まれます」
「はいっ! 質問!」
「どうぞマリさん」
マリが行儀良く手を上げて質問する。
「名門貴族って、そんなに多いの?」
「いえ、そこまで多くはありません」
他にも有名な魔法学校は存在するのだ。そこにだって名門貴族は入学する。
「なので平均的には2家ぐらいですね」
「それが1棟ずつ占拠したとして、6棟余るわね」
「いえ、余りません」
「どうして?」
「残りの寮は名門勢力に所属する上級貴族が占拠するので」
ん〜……
「よく分からなくなってきた」
「そうね。さっぱりよ」
「いつの間にか貴族の勉強になってるしな」
愚痴を垂れ流す3人だったが、かといって聞かないという選択肢は無かった。
他人事ではないからな。
「……名門貴族の家系は6家です。そして、名門が通う魔法学校が3校あります」
だから各学校に2人ずつの名門貴族が居座る、って事か?
「学校は4年間なので、名門貴族も4年に1人は子どもが産まれるように調整しますね」
「なにその家族計画」
「20歳から子を作り始め、40歳までに5人の子息子女を持ちます」
「いや、だからさ……」
「そうして産まれた5人は魔法学校に通い、最初の1人が20歳になれば世代が交代します」
「最初の1人がまた子を作り始めるの?」
「そうです。20歳の時点から後継者として、子を作りながら更に20年間は現役の当主を支えます」
「で、40歳になったら当主を継ぐんだよ」
「これが名門貴族の世代の流れです」
なんともまあ、規則的だな。
「産まれたタイミングで家を継げるかが決まるの?」
「そうです。0歳から60歳までの間で3人が家督を回していきます」
「20年単位で修練世代、継承世代、現役世代って呼ばれているね」
ハイクが補足し、ソマリが頷く。
でも他に疑問がある。
「継げなかった奴らどうなるんだ?」
「家督に関わる人物を代表として、残りの人は補佐を担当するね。あとは万が一に代表が亡くなった際の保険だよ」
「保険て……」
「貴族ってのはそういうものだよ」
産まれた時から教育され続けるらしい。
息苦しそうな印象である。
「けどさ、そんな都合よく子どもなんて作れるのか?」
「まあ、そう上手くはいかないね。4年を1周期として扱うんだけど、1周期で2人以上出来ちゃったりするから」
「1人も出来ない事は?」
「稀にある。後継者として失格とか言われるよ」
「貴族も大変だな」
「庶民で良かったと思えたぜ」
と、ソマリが紙を持ってきて何やら書いている。
「では、まとめましょう。まずは世代」
現役世代
継承世代
修練世代
「そこに各周期……あ、修練世代の代表は旗頭と呼ばれます」
現役世代
当主
二期
三期
四期
五期
継承世代
後継者
二期
三期
四期
五期
修練世代
旗頭
二期
三期
四期
五期
「そして周期内で複数人産まれれば、第一子、第二子となります」
「継承権は有事の際が上から順番。何事も無ければ継承世代の後継者が一位、修練世代の旗頭が二位だね。残りは省略で」
実際に文字として書き起こすと分かりやすいかもしれない。
「なるほど、名門貴族の家系については分かった」
「じゃ、話を戻そうか」
「……というわけで、この魔法学校では名門貴族の血筋は2家です」
あ〜……つまり、どうなんの?
「これで2棟。後は第二子だったり上級貴族が残りの学生寮を占拠しているよ」
「一般は入居不可能ってわけか」
「今は一般生徒が多いから、空き部屋が乱立しそうね」
と、そこまで話した時、部屋の扉が開かれてケートス先輩が入ってきた。
「待たせたな。たんまり持ってきたぜ」
「「「ありがとうございます!」」」
一旦、食事休憩となるのであった。
設定ややこしいな!
と自分で書いてて思いました。
貴族云々の扱い方とか詳しく勉強した方がいいのかな・・・




