表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第一章 入学
11/217

1_09_乙女の天敵

眠い時は寝ましょう。

たとえ寝過ぎて後悔するとしても・・・

 


ーーーーー



「んぅ……」


柔らかな感触が頬を撫でて、私は目を覚ました。


なんだか白い部屋で、自分がベッドで寝ていた事に気付く。



こんなところで寝てたかな?


シーツを抱き込んで、足には枕らしき何かを挟んでいる。


とりあえず上体を起こしてみると、少しダルいけど力が入らないわけじゃない。




何が……あ、思い出した!



性犯罪者が出て、魔法を撃ったんだ。



……倒した……よね?



うん、そうじゃないと私は大変な目に遭っているはずだもの。


ひとまず周囲を見渡してみると、白いカーテンで囲まれている。



医務室……かなぁ?



魔法を使って気分が悪くなっていた覚えはある。


そのまま倒れてしまったんだろうし、誰かが運んでくれたのかな?




「あ、目が覚めたみたいだよ」

「そうみたいですね」


誰かの話し声が聞こえる。


1人じゃない……しかも、男子だ。



足音が近付いてきて、カーテンに人影が差す。


ちょっと警戒してしまったけど、きっと医務室に運んでくれたんだと思う。


お礼を言わないと……



「目が覚めた? 入っていいかな?」

「はい、あ……ちょっと待って」

「焦らなくていいからね」

「はい……」



すごく優しそうな声だった。


そういえば髪とか乱れてるし、服にも皺ができてる。


待ってもらえるみたいだから、急いで整えよう。


幸いにも小さい丸テーブルがあって、そこに私の手荷物が置いてあった。


手鏡を取り出して確認しながら準備する。



…………うん、これで大丈夫。



「お待たせしました」

「気にしないでいいよ。こちらこそ突然でゴメンね」

「あ……いえ」

「じゃあ、入っていい?」

「……はい」


どうしてか、ドキドキしてしまう。


誰なんだろう……



カーテンがゆっくりと開かれて、人影の正体が私の眼前に晒される。


艶のある黒髪に、形の良い眉、優しい目、整った鼻、吸い寄せられそうな口元……



高鳴っていた胸が、更に鼓動を早くしてしまう。


だって、こんなに早く会えるなんて思わないもの。



私の…………



「君にサプライズを用意したんだ」

「え?」

「ベッドの下、見てくれるかな?」

「……下?」



ベッドの下に何が……はっ! まさか素敵なプレゼントが!?


どうしよう、そんな、初対面なのに……


でも、折角だし断ったら失礼よね?



決心して、期待に胸を躍らせながらベッドの下を覗き込んでみる。




そこには……




「変態だ!!」

「誤解だ!!」



あの性犯罪者っ! どうして待機してるの!?


こんな場所にまで追ってきたというの!?



なんてこと……まだ窮地は過ぎていなかったのね。


いえ、もしかしたら気絶している間に全て終わっていたのかもしれない。



「倒したはずなのに!」

「バカめ!! 俺には優秀な仲間が……あ、その話はいいや。んでさ」

「もう私では勝ち目がないというの!?」

「あの、話聞いてもらえる?」


きっと何か手段があるはずよ!



「今度こそ倒さないと!」

「誰か助けてくれ!! 俺じゃ無理だっ!」

「そうだ! お母さんに教わった魔法なら!!」

「おい待て! ここ医務室だぞ!?」

「あなたは乙女の敵よ!」


覚悟しなさい!!



「退避!! 退避いぃ!! あ、その前に俺を助けて!!」



慰み者にされるくらいなら、相討ちになってでも……!


「はいストップ」

「!?」


口を塞がれて、目も何かに覆われた。


突然の事態に動けないでいると、耳元で声が聞こえる。



「とりあえず落ち着いて」

「むぅ?」


あの優しそうな人だ。


でも、この人も変態の仲間だと思う。



「驚かせてゴメンね。詳しい事情は後で説明するよ。彼も被害者だから、出来れば許してあげてほしい」

「んぐぅ」

「あ、ゴメン」


目と口を解放されると、目の前には気弱そうな人と、床を転げて笑っている人が居る。


そして優しい声の持ち主……



「ダハハハハハ!!」

「笑いすぎですよ」

「だから言っただろ! 俺を見たらこうなるってさあ!!」

「だって、お前……っぶ! ウハハハハハ!」



状況に付いていけない……あれ?


「あなた達って入学式で……」

「追い出されてねえからな!」

「ルイスも落ち着いてください。それに、入学式からは追い出されましたよ」

「まあ、まずは自己紹介しようか」



なにがどうなってるの……?




ーーーーー




「あら、どうしたの?」

「魔力を使い過ぎて倒れた人を連れてきました」



隠密行動中に勘違いされて魔法を撃たれた俺は、直撃寸前でハイクによって助けられた。



その後、撃ってきた本人である女の子が倒れていたので医務室に連れてきたのだ。


ハイクの診断によると、魔力が枯渇したらしい。



女の子が使った魔法は水系統の中級魔法である”スプレッド”だ。


水柱を撃ち出すんだけど、詠唱も短くて射出速度も速い、お手軽な魔法らしい。



ただ、どれくらい持続するかを制御しないと出続ける。


この魔法で魔力が枯渇した人は多いそうだ。




「そこに寝かせてあげて。魔力切れは時間経過で治るから」

「はい」


ソマリが女の子をベッドへ横たえて、カーテンを閉める。


なぜソマリなのかというと、消去法の結果だ。



俺は論外、ラグは爆笑中、ハイクはイケメンて事で、ソマリしか適任がいなかった。



いやまあハイクはさ、様になるよ?


イケメンだし、そんなのに抱き上げられて医務室行けるなら乙女冥利に尽きるだろう。



ただ、途中で目を覚まして惚れられたりすると面倒だ。


ハイクは恋愛とか興味無さそうだし、相手されない子もヤキモキするからな。



ともあれ、医務室には運び終えた。


あとは退出するだけだと踵を返そうとしたら、硬質な音が聞こえる。



振り返って見てみると、医務室のお姉さんが金槌で石を割っていた。



「なにあれ?」

「純魔石ですよ。あれを砕くと大量の魔力が拡散するんです」

「そうすれば魔力回復が早まるんだよ」

「へえー」


そういえば人は大気中に漂っている魔力を吸収して、自身の魔力にするんだっけ。


濃度が増せば吸収量も上がるって事なのかな。



「んでもさ、魔石ってお高いんじゃないの?」


地元の町では魔石などはギルドぐらいしか扱ってなかったし、買取のほうが圧倒的に多かった。


町人が買う事なんて滅多にないって聞いた事ある。



「ところが期間限定で! このお値段!」

「や、安い!!」

「さらに! もう1セット付いてくる!!」

「なんですと!?」

「さらにさらに! 今なら羽毛ぶと」

「バカ言ってないで行きますよ」

「「「うーい」」」



ひとしきり騒いで女の子の安眠を妨害したし、俺達は部屋を出るとするか。



「あ、ちょっと待ってくれない?」



おっと、医務室のお姉さんに止められた。



「なんすか?」

「さっきので魔石が切れちゃったから、取りに行きたいのよ」



どこかに備蓄してるんだろうな。


よし、一肌脱ごうじゃないか!


「じゃあ取ってきます」

「いいわよ。ここで待っててくれたら」

「取りに行きます」

「拘るわね」


そりゃそうだ。


「だって……あの子コワいもん」

「もん、じゃねえよ。気持ち悪っ」

「意気地無しですね」


うっせえよ!


「じゃあ体験してみろ!! いきなり魔法撃ってくんだぞ!?」


冗談じゃねえや!



「職員じゃないと手続きが要るのよ」

「え? そうなんですか?」

「ええ。勝手に持っていかれたら困るでしょ?」


そりゃそうか……くそぉ。



「……待ってます」

「ありがとう。それじゃ、行ってくるわね」

「待ってるから! 俺っ……待ってるからぁ!!」

「必死だな」



苦笑しながら出て行くお姉さんを見送った後、ただ待つのも退屈だから雑談でもしようと思う。



「というわけで話題とかある?」

「そういう切り出し方されると浮かんでこねえな」

「ありますよ」

「なになに?」

「大部屋の話ですよ」



そういえば、なにか相談するために移動してたんだったな。


「あの騒ぎだと生徒会長達も今頃は寮へ戻っているでしょうし、食堂に行くのはやめましょう」

「そうだな。じゃあ訓練場か?」

「いえ、落ち着いて話が出来れば何処でも構いません。ここでもね」

「あの子は?」


「まだ寝てるでしょうし、大丈夫ですよ」

「既に起きて聞き耳立ててるかもしれないぜ?」

「よくありそうな展開だね」

「ルイス、ちょっと見てこい」

「その言い方は嫌な予感がする!」

「それもよくある展開だね」



結局、俺が見に行く事になった。


仕方ない……そもそも俺が茂みに飛び込んだのが原因だし。



「……」

 

抜き足、差し足、忍び足……からの飛び込み前転で一気に詰め寄り御開帳!



「……うっわ」


寝てたけど、これは酷い。


なんで足に枕挟んでるんだ?


シーツもぐっしゃぐしゃ……この短時間で荒ぶり過ぎだろ。



「んぅ……」

「あ、やべ」



つい声を出してしまった。


急いでカーテンを閉めて、ラグ達のところへ戻ってくる。



「どうだった?」

「寝てた。けど起こしそうになった」

「は?」

「寝相が酷かったんだって」


「ルイス、そういうのを無闇に広めるのはデリカシーがないですよ」

「これはルイスが悪いね」

「異議なし」

「異議あり!」

「しっ!」


「あ、目が覚めたみたいだよ」

「そうみたいですね」



目を向けると、カーテンの内側で体を起こしているのが分かる。


やばい! 逃げよう! そうしよう!


「逃げちゃダメですよ」

「なんで?」


ソマリに小声で引き止められる。


ここに居たって誰も得しないって!



「このまま誤解させておくつもりですか?」

「いや、だってさ……」


もう一度目を向けると、ハイクが何事かを女の子と話している。


「どっか隠れてろよ」

「先に僕達が話して誤解を解くので、そしたら出てきてください」

「ほら、ベッドの下なら見えねえだろ」


いや、部屋の外で待ってたらよくね?



「ほら……あれだ、あんまし部屋出ると魔力濃度が下がるから」

「ちょっとぐらい大丈夫だろ?」

「いいから早く。カーテン開けられるぞ」


くそ、なんなんだよ……


仕方ないからベッドの下に匍匐前進で潜り込む。



会話が聞こえてくるが、俺に気付いた様子は無い。



「じゃあ、入っていい?」

「……はい」


なに恥じらい含んだ声出してんの?態度が全然違くない?


これがイケメンの力か……



「君にサプライズを用意したんだ」

「え?」

「ベッドの下、見てくれるかな?」

「……下?」


いつの間にサプライズなんて……ベッド!?


え? 俺がサプライズ!?




ラ(じっとしてろ)


「!」



慌ててベッドの下から抜け出ようとすると、素早く回り込んできたラグが手でサインを送ってくる。



ル(断る!)

ラ(もう手遅れだから)



ラグが離れ、同時にガタゴトと音が聞こえてきた。



おいこれ絶体絶命じゃねえか!


なんとか這い出て……




「……!」


動き出した刹那、目の前に誰かの足が降り立つ。


そのまま手をついて体を屈めて……期待に頬を染める少女と目が合った。




「変態だ!!」

「誤解だ!!」



なんなんだよ!!



・・

・・・




「まあ、まずは自己紹介しようか」


女の子の詠唱を阻止したハイクが仕切り、ひとまず自己紹介から入る事となった。


「じゃ、俺から。名前はハイク、君と同じ新入生だよ」

「僕はソマリです。同じく新入生です」

「俺はラグ。で、こいつが……」

「乙女の敵! ルイス見参っ!!」

「やっぱり変態だわ!!」



もう変態でいい!


抵抗すると余計に拗れるって理解したからな。



「君は?」

「えっと……私はマリ。新入生よ」


やっと名前が分かった。長かったなぁ。


「ルイスの名誉のために言っておくけど、何も無かったからね? ここまで運んだのもソマリだから」

「え、あ……はい」

「でさ、状況分かる?」

「ん~と……魔力が枯渇した、の?」

「そ。スプレッドの制御ミスが原因だね」

「初めて使ったから……」



そりゃミスるっつの。



「ひとまず休んでれば大丈夫だから」

「うん。あの……」

「ん?」

「あなた達って、まだ学校に在籍してるの?」

「まあね」


そこも誤解してたよな。



「……なら、生徒会長ともお知り合い?」

「一緒に小芝居するぐらいは仲良いぜ」

「小芝居? ……えと、どこに行けば話せるか分かる?」

「あ~、生徒会寮で待ってれば会えると思うけどな」

「そっか、ありがとう。少し休んだら行ってみる」


そう言って俯いてしまう。


たしか悩みがあったんだっけ。



「悩みがあるなら相談に乗るけど?」

「え?」

「知り合いの冒険者が言ってたんだ。出会いは大切にしろって」


このままだと悪縁で終わってしまいそうだしな。


少しは修復しておくべきだろう。



……さっきまで頭から抜けてたけど。



「……大部屋に移りたいの」

「マリさんもですか」

「え? あなた達も?」

「あ、違います。そういう人が多いみたいなので」

「そうなの……皆が大部屋に移りたいって言い始めて、もう空いてないのよ」


マリも大部屋希望者か。


どうなってんだ?



「なあ、なんで大部屋にしたいんだ?」

「えっと……」


言いにくそうにしている。


「大丈夫ですよ。ハイクは貴族の家系ですが、何も気にしませんし」

「残りは全員一般だな」


その言葉を受けて踏ん切りがついたようで、マリが悩みの種を明かしてくれた。




「……貴族が怖いの」




・・

・・・



それから20分ほど相談に乗りながら、今回の事情を理解した。


事の発端は4ヶ月前からだ。

というのも、今年から2次募集の試験が変わって大勢の貴族が不合格となった。


それに対して各所から非難が相次いだものの、一応は3次4次の募集を繰り返して規定人数まで達したわけだ。


だが、その割合は昨年までとは大きく異なるし、続きがあった。



「今年は一般生徒が多すぎたようですね」

「それで目を付けられたくない一般生徒が大部屋に殺到した、ってわけか」

「でも大部屋の数が足りずに困っている生徒が多い」

「だから生徒会に相談しようと考えて、あんなに混雑してたんだよ」


現在、新入生寮は貴族の独壇場にあるらしい。


昨年までもそうだったが、一般の生徒は少なかったし全員が大部屋に移れていた。



空気が悪くなるとすれば、名門貴族同士の勢力争いぐらいだ。


でも、それも最初から棟を住み分けているため、寮内で問題は起こらない。


なのに今回は一般の数が多くて大部屋に入りきらないらしい。



「新入生寮ってさ、幾つあんの?」

「2棟です。でも、それぞれに名門貴族が居座っています」

「そいつらを動かすのは難しいか? 一箇所に集めるとか」

「下手すると親が動きそうですからね」


過保護じゃねえかよ。


親が乗り込んできたら恥ずかしくない?



「他にもマズい情報があるよ」

「聞きたくねえ……」

「いつかは分かる事です。ハイク、話してください」

「……弱小貴族が居場所を失くしてる」


聞いてみると、どこの名門勢力にも属せていない弱小貴族が困っているらしい。


彼らは領地が小さく、魔物の討伐なんかも万が一の事態があるとして、幼い頃から備えなけらばならない。



だからこそ試験に合格する事が叶ったのだが、今は居場所を失くしている。


原因は、これまた2次募集だ。




昨年までなら2次募集の試験で篩い落とされていたのに合格してしまった。


チャンスだ! 有名な魔法学校に入学して、ここから飛躍していこう!



……そんな希望も、1次通過の名門達によって打ち砕かれた。


頂点に立つ者達からすれば、弱小貴族も一般も変わらないのだろう。


昨年までなら高い水準を求められる試験を乗り越えてきたのだから、目を掛けられる可能性は大いにあった。



だが、今年の試験は魔物との邂逅が題目なわけで、そんなのは名門貴族にとって判断できない。


合格と同時に、名門へ擦り寄る基準を失ってしまったのだ。



「エリート集団は全体の4割、一般も4割、弱小というか下級貴族が2割、って比率かな」

「で、その中でもエリートに拾われるか拾われないかに別れる」

「授業が始まって、実際に頭角を現すまで保留だろうけどな」


「今は取り付く島も無いって状況だね」

「て事は、全体の6割が新入生寮から出たがってる?」

「我慢して新入生寮へ留まる人も居るけどね」


それでも5割は出たがってるだろうな。



ん~……


「なあ、マリ」

「ん?」

「そんなに酷いのか? 名門貴族って」



そこが疑問だ。

皆して離れたがるほど陰湿なんだろうか。


「優しい人も居るわよ? けど、取り巻きがね……」

「名門勢力として括ってしまえば、居心地は悪いでしょうね」

「あ、そっか」


名門貴族の従者とか取り巻きなんかも1次通過してるんだよな。


そこを忘れてた……



何人か意地の悪い奴が居れば、コソコソ嫌がらせされたりするかもしれない。



……あ、そうだ。



「マリ、生徒会寮に来ないか?」

「へ?」

「部屋は結構空いてるみたいだし、俺らの部屋も生徒会寮にあるんだよ」

「そうなの!?」

「おう。かといって生徒会に所属してるわけでもねえし、何も損は無いはずだ」



我ながら名案じゃね?


「ルイス、ちょっと……」

「ん?」


ソマリに連れられて部屋を出ると、注意された。


「そんな無責任に誘っちゃ駄目ですよ」

「え?でもさ」

「そもそも、生徒会寮は僕達だって立ち退かなければいけませんよ?」

「はあ!? なんで!?」

「しっ、声が大きいですよ」

「おっと……」


立ち退きすんの?



「生徒会に入らなくても大丈夫っていうのは、僕達が大部屋に移ると見越していたからですよ」

「あ~……そういえば、そうだったか?」

「ええ。今回のように大部屋が空いてなければ、しばらくは滞在できるかもしれませんけど」


それでも、ずっとじゃないか。


ん~……



「いっその事さ、生徒会に入ろう」

「はい?」

「どっちにしろ、落ち着くまで滞在するんだろ? だったら何か手伝った方が良いと思う」


今のままだと、クリストフ先輩は優しいから要求無く滞在させてくれるだろう。


で、落ち着いたら礼を言って退去……それだとフェアじゃない。



せめて滞在する間は、生徒会の仕事を手伝って恩を返したい。


肌に合うようなら生徒会に留まればいいしな。



「名門貴族も入ってきますよ?」

「……え」


嘘だろ……


「そんな……お貴族様が生徒会みたいな……忙しそうな組織に入ると思うか?」

「入りますよ。むしろ名門貴族が勢力争いをするとしたら、生徒会が主戦場です」

「マジかよ! 俺ら迷い込んでんじゃん!!」



流れ弾喰らって学校から追放……なんて結末はアホすぎる。



「一旦、医務室に戻りましょう」

「……そうすっか」


なんというか、どう動いても面倒事になりそうな予感がしてきた。


肩を落として部屋に入ると、マリが枕に頭を沈めている。



「どしたん?」

「ハイクに説教喰らって撃沈」

「ハイクが?」


説教なんて珍しいな。


「魔法を軽々しく人に使ったら危ないからね。下手すると二人とも死んでたんだよ?」

「そんな大それた話だったっけ?」

「ルイスも分かってなかったんだね……」


ハイクが苦笑し、ラグはなんとも言えない顔をしている。



「もしルイスに直撃してたら、後ろの壁に激突して大怪我してたよ。打ち所が悪かったら死ぬか、後遺症が残ってたかもしれない」


うわあ……


「それでマリさんは魔力が枯渇して意識を失ったけど、タイミングが早かったら……」

「……早かったら?」

「残った魔力が制御を離れて、反動が起こる。魔法は行使し続けてたんだからね」



魔法を使う上で第一に注意すべきは、制御失敗による反動だ。


強力であるほど反動が大きく、容易く絶命する可能性もある。


どんな反動が起こるのかは状況次第だが、気楽に構えられるほど甘くはない。



たとえば闇系統には対象を即死させる魔法なんかもあるが、条件が難しいらしいし禁止指定されている。


もし失敗すれば反動によって、ほぼ確実に魔法の行使者が即死するのだが、下手すると周囲の生物までもが死滅するからだ。



「中級魔法だって死亡するような反動は珍しいけど、全く無いわけじゃない」

「たとえば?」

「スプレッドだと、撃ち出す方向が切り替わる、とかね」


「変な方向に飛んでいくって事か?」

「そ。周りに迷惑だし、足元から撃ち出されると上空へ打ち上げられるね」

「でもって墜落死、ってな」

「それは勘弁だな……」


さっきはハイクが助けたからこそ、二人とも無事だったわけだな。


きっとマリが吹っ飛んでも、颯爽と受け止めたんだろう。



「ま、そういうわけで反省してもらったんだよ」

「あうぅ」

「マリ、ごめん。掛ける言葉がねえわ」



しっかり反省してくれ。

さっきも俺に魔法ぶっ放そうとしたわけだし。



あ、そういえば……



「俺って初級魔法の反動で死に掛けたけど」

「は?」


オリビアさんの店でな。

遠い過去のように思えるが、昨日の話だ。



「ウインドカッターなんだけどさ、首切れるとこだった」

「それは……運が悪すぎるというか」

「原因があると思いますよ。魔力を過剰に込めていたとか」

「あ~……それだ」


あの時は魔力全部ぶっ放そうとしたしな。


ほとんど制御不可能だったし、残しておくよりかは全部出したほうが安全だと判断したからだ。


その結果、収束した魔力は制御を離れて反動が起きたんだけど。



「普通は小さい切り傷で終わりますよね」

「だな。下手すると目に当たるから危険なのは違いないけどよ」

「そもそもルイスは風系統じゃないですよね?」

「おう。魔具で系統変換しようとしたんだ」

「へえ、そんなモノもあるんだな」

「まだ俺達には過ぎた代物だね」


そうなんだよ!

身をもって痛感したぜ!


「なんで誇らしげなんですか」

「お前も反省しろ」

「あい……」



てなわけで、俺とマリは揃って反省していた。


ほどなく医務室のお姉さんが戻ってきたので、ラグ達によって部屋から連れ出されるのであった。




可能であれば、もう1話上げときたいですねぇ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ