4_11_夢想の都 探偵ソマリ
こんにちは。今回は状況説明回となります。
シャロンとリンを捜索し、無事に発見してからは大人用の宿とやらへ潜伏した俺達。
なぜか男子が床に座らされ、ラグだけは窓へ蓋するように貼付けられていた鉄板を取り除き、外を眺めている。
そんな光景であったが、俺はシャロンへの尋問を開始した。
「シャロンさ、何で追われてんだよ」
「……」
沈黙か。
「リンが追われてるのか?」
「……もう関わらないで」
「ふざけんな! いきなり関わるなって言われてさ、受け入れるわけねえだろ!!」
フラムグラス家の騎士に追われてるだけでもヤバそうな状況だというのに、屋根から見たが他の名門騎士も追ってきていた。しかもドリポートはフラムグラス家の懐なんだから、徹底的に捜索されたら分が悪いだろ。
「なあ、ちゃんと説明してくれよ」
「……」
くっそ……ずっと黙秘する気かよ。
そうやって焦りまでも感じていると、ソマリがシャロンへ語りかけた。
「信じてなかった……そう言ったんですよね?」
「……」
「今からは信じられないんですか?」
「……」
「あの伝言は僕達に全てを悟って傍観していろ、という意味なんでしょうか?」
「……そうよ」
やっとシャロンが答えを返した。だが、とてもじゃないが納得出来ない答えだ。
「全て終わるまで、って何だよ」
「……」
また沈黙か。もしかしてさ、俺には何も答えてくれないのか?
ん~……まだマリとかが聞き出す方が良いのかもしれないな。
シャロンはマリに甘いし、代わりに聞いてもらえば教えてくれるんだろうか。
などと考えていたら、ソマリが一つ一つ説明を始めてくれた。
「最初に違和感を覚えたのはルドルフに関してでした」
「ルドルフ?」
「ええ、シャロンさんが察知できなかったという点と、他にもです」
あ~……そういえば色んな人が警戒してたよな。
「ケートス先輩もルドルフの来訪を知ってから単独行動ばかりしていました。といっても、エグラフさんと会っていたんでしょうけどね」
「情報をどうたら、だよな」
「そうです。他にアルフォード・ローズという貴族も、ルドルフを警戒するよう促してきました」
「あ……言ってたな」
前夜祭の日だな。俺がルドルフからマリを奪還すべく近付いたら諌めようともしてきた。
まあ、目的が違うから有耶無耶になったけどさ、アルフォードはルドルフに近付きたかったんだっけ。
「そうやって様々な人物から警戒されているルドルフが、何を目的にしているのか……そこが鍵だと思います」
「まあ……そだな。鍵っつか気にはなる」
「マリさんがルドルフから色々と聞かれたようですが、その中でメイアという名前が出ましたよね?」
視線を向けられたマリが頷き返してきた。
そのメイアって人を捜してるんだっけ。
「メイアについて分かったのか?」
「昨晩に知りうる限り出しましたが、該当しません」
「そっか……」
「可能性としては冒険者ですが、それも違うと思いますし」
ん? 冒険者?
「居たか?」
「ハイクが覚えてましたよ。演習でルイス達を護衛していた冒険者の中に、メイアという女性が居たはずです」
「……あっ! 居た!!」
メイアさんじゃん! なんで忘れてたんだし!
そういえば……四六時中ドルアーザさんに絡んでたのが印象的だったな。
そこでオバさんとか仲間から呼ばれ続けてたし、そっちで覚えちまったんだろうか。
「そのメイアさんがルドルフの捜してる人なのか!?」
「いえ、違います」
「違うのかよ!!」
「確実ではないですが、冒険者であればギルド経由で居場所を特定するのは難しくないでしょう」
あ~そかそか。
個人情報の類だから簡単に教えてはもらえないだろうけど、名門貴族ならゴリ押せるかもしれんな。
「そのため、僕達は仮説を立てました」
「ほう」
なんか探偵みたいだな。あんまり人気の職じゃないらしいけど、ソマリなら似合いそうである。
「メイアという人物は本当に生きているのか、実在しているのかを疑いました」
「ん?」
「過去の人物にも同じ名前はあるんです。既に世を去っていますから除外してましたけどね」
「まあ生きてる人を捜すわな」
捜してる内に亡くなってた、という場合もあるだろうけど。
「で、過去の人物なら該当しそうな人は居るのか?」
「いえ、居ませんでした」
「おい!」
ダメじゃんよ!
「仕方ないですよ。過去の人物であれば、歴史に名を刻まれているんですから」
「あ、そか」
調べたら分かるもんな。わざわざルドルフが他人に聞くほどの事でもないだろう。
「結局さ、分からないのか?」
「そこで他の情報を使うんですよ」
なんか俺に対する推理法の授業みたいな雰囲気になってきたな。他の面子は黙って聞いてるだけだし。
「先ほどの伝言でシャロンさんは”信じてなかった”と言っていましたよね?」
「おう。なんか悲しいよな」
「信じてなかった相手にリンさんの居場所を教えると思いますか?」
居場所?
「……爽風亭か」
「ええ、その宿に移したと聞いていましたが、嘘だったんでしょうね」
「マジかよ」
シャロンへ目を向けると、顔を伏せて沈黙を続けていた。
リンは静かに見つめ返してくるけど、何も言わない。
「きっと所定の宿に潜み続けていたはずです。チャールスさんの部屋にでも篭っていたんでしょう」
「そういえば……チャールスを見る機会も少なかったよな」
前夜祭でもシャロンに同行していなかったし、リンの身辺警護でもしていたんだろうか。
「で、ここからが本題です」
「けっこう混乱してきたんだが……」
「俺も」
「う~……」
しかし俺とモーティとマリの混乱は無視して、ソマリは本題に突入してしまった。
「信じてもいない相手に居場所を教えないのは当然ですが、なぜ詳細な嘘まで教えたのか、です」
「はん?」
「宿を移した、それだけ言えば済むはずです。宿の名前まで教える理由があったんですよ」
「それは…………分かった」
さすがの俺も分かってしまった。
するとモーティが驚いたような顔で俺を見てきた。
「ルイスは分かるのか?」
「おうよ、俺を誰だと思ってんだし」
ぽんこつルイス、とか答えられそうだったので、その前に発表してやろう。
「シャロンが俺達に詳しい嘘を教えた理由は……」
「り、理由は……?」
聞いて驚け!
「密告を疑ったからだ!」
「「「「……」」」」
あ、あれ?
なんで皆が黙り込んだ?
「ルイスにしては珍しく正解です」
「正解かよ!」
なんだよ! てっきり不正解の流れかと思ったじゃんか!
「おそらくルドルフ来訪の情報が拡散したのは前夜祭の前日……時期的にもシャロンさんが慌てて対処したように思えます」
ソマリが説明を加えてくるが、俺としては自分の推測を否定したい気分だった。
「つまりさ……俺達が密告するって……」
「思った。もしくは可能性として危惧してた、でしょうね」
だから、信じてなかった……か。
……ん? いや待てよ?
「てことはさ、ルドルフの捜してるメイアって人物は……」
「リンさんの事でしょうね。偽名だったんでしょう」
「じゃあ、リンの本名はメイアなのか?」
そう聞くと、ソマリはイリーナへと目を向けた。
「イリーナさん、すいませんがモーティと一緒に耳を塞いでください」
「……仕方ないわね」
魔法でイリーナがモーティと一緒に闇に包まれ、音を遮断した。
しかしシャロンが突然立ち上がって闇の中に入っていくと、すぐに闇が解除される。
そうして……皆の注目が集まる中で、シャロンは小さな声で呟いた。
「この2人にも教えるわ」
・・
・・・
「暗青の血って……本当なの?」
リンの素性を知ったイリーナは信じられない、って顔をしている。ドン引きってわけじゃないけど、それでも驚愕の表情だ。
一方のモーティは、かつての俺と同じく事の重大さを理解しきれていないようだった。そりゃ一般人には縁の無い話だろうからな。
「本当よ。メイアは7歳で病死した事になっているの」
そこからは俺も初めて聞く話だった。
メイア……家名はローレライ。
シャロンより1年早く生まれたがために暗青の血とされてしまった。
メイアの母親は亡くなったらしく、シャロンとメイアは腹違いの姉妹であるらしい。
そして、死を偽装するほどの理由があったわけだが、それは明かされなかった。詳しく説明する時間も無いそうだ。
で、死を偽装した後は僻地に送られた。
没落貴族という仮の身分、そしてリンという新しい名前を与えられて。
「私も諦めようと思っていたわ。けれど……ルドルフが動きだした」
およそ3年前に、ルドルフが誰かを捜しまわっているという情報を入手したそうだ。
シャロンが父親から教えられたんだが、即座にリンを回収すべくチャールスを派遣したらしい。
「誰かって事はさ、まだリンを捜してるかも分からなかったんだろ?」
「そんな悠長に探っている時間なんて無かったわ。ルドルフの動きは早いの」
3年前、その当時からルドルフの偉才は知れ渡っていた。
グランバス魔法学校の新入生で生徒会長として指名を得ながら、様々な伝説を作り上げていたから。
そんな偉業の数々は多くがルドルフ自身の力のみで成し遂げたものだが、中には圧倒的な早さで収集した情報が無ければ不可能なものも含まれていたらしい。
つまり手勢を持っており、それらの動きが早い事を意味する。
「捜しまわっていた場所は、ローレライ家が誰かを隠すために用いる僻地候補だったのよ」
「その中にリンも?」
「ええ、隠れ住んでいたわ」
だから見つけられる前に連れ出したのか。
「でもさ、リンを捜してたとして何が目的なんだ?」
「分からない。けれど、殺される可能性はあった」
「はあ!?」
なんで……だってさ、いくら暗青の血だとしても叔父と姪の関係じゃんか!
「さすがに殺すまでは」
「既に一度は死んでいる扱いだもの。もう一度死んでも同じ」
「っ……まさか」
「そんな考えを持ちかねない男よ」
何が目的で誰を捜しているか知らなくても、楽観など出来なかった。
そもそもルドルフだって明青の血なんだから、もしリンを捜しているならば明暗の不文律を破る行為となるんだ。
となれば捜す理由は限定されていく……それこそ偽装ではなく真実として、世の中から消そうと目論んでいるのかもしれない。
だからリンを回収し、連れまわし始めた。これが3年前からであるらしい。
「さすがに私が暗青の血を連れまわすと予想できなかったようね。今までは無事に過ごせていたわ」
なのにルドルフはドリポートへ訪れてきている。
それも、同じローレライ家であるシャロンすら察知できない程の情報封鎖を施して。
というより、シャロンにこそ察知されたくなかったかもしれない。
グランバスへリンを置いてこられるだろうから、と。
「でもさ、隠し通せてたんだろ?」
いつか言ってたじゃんか。
寮で俺達にリンの素性を教えた時にさ、今までは隠し通せてきたって。
「私が連れ回していたと気付いている。そう思わせるようなブラフを吹き込まれたわ」
前夜祭へ俺達を招待しようと言い出したのはルドルフだが、その際にシャロンへ告げてきたらしい。
もう一人の姪にも招待状を渡しておいてほしい、と。
結果としてブラフだったらしいが、今は確信を持たれているそうだ。
「その時はリンとメイアが同一人物であると知っているかまでは分からなかったの」
「かといって馬鹿正直に連れてくるわけにはいきませんよね」
「ええ」
だったらさ……
「なんで俺達を頼らなかったんだ! そんな状況なら前夜祭に出ねえよ!」
リンが殺されるかもしれないって話になってんならさ、幾らでも協力するに決まってんだろ。
それこそ俺達にまで探りを入れてくるかもしれないんだし、全く接触しないように配慮するとか方法はあったはずだ。
前夜祭への参加を断れば健闘する気が無いって解釈されるかもしれんけど、そんな事に気を使う場合でもなかったじゃんか。
「俺達にリンを預けられないとしてもさ、その上でルドルフにも会わせないって選択肢があっただろ!」
だが、俺の叫びに対してソマリが静かな声で告げてくる。
「信じてなかったと言われたじゃないですか」
「ルドルフに密告するわけねえだろ!!」
「ルドルフだけじゃありませんよ」
「……は?」
だけじゃないって、どういう事?
「信じてなかったというのはドリポートへ到着してからではありません」
「いや……え?」
「もっと前から、というより出会った時からでしょうね」
「なんだよそれ……」
「僕達を他家から送られてきた手勢か何かとでも思ったんでしょう。様々な情報を探る目的だと」
いやいや、俺達は一般人……そうか、情報収集だもんな。
ソレと分かるようにせず、一般人を装ってシャロン達に近付いたと疑われてたのか。
「でもさ、信じて伝えてくれたんだろ? リンの素性とか」
「意味が違いますよ。手勢だと信じて伝えたんです」
「意味分からんっつの! それなら教えちゃダメじゃんかよ!」
その日の内に密告されんだろがい! 明暗の不文律を破ってるってさあ!!
「だから僕達も気付けなかったんですよ」
「?」
「どうして伝えたのか……それこそ相手を信じないと伝えられない情報です」
そりゃそうだ。吹聴するような奴には教えんだろ。
「つまりですね、リンさんの独断かつ自滅行為が真相だと思います」
「独断……」
たしかリンが勝手にバラしたと言ってたな。
信じて伝えたほうが良いって……他家の手勢だと信じて伝えた?
自滅行為……
「公にするつもりだったのか!?」
「リンさんだけが、です。きっと怒られたでしょうね」
「……ええ、もう大激怒だったわ」
シャロンが今も許せないといった様子でリンを睨む。
少しだけ目線を下げたリンは何も言わず、沈黙を保っていた。
「なんで……そんな事したんだ?」
「切り離させるためでしょうね。全てリンさんの責任として扱い、正常な状態に戻すためです」
「は?」
詳しく聞くと……俺達とか別の誰かがリンの素性を知り、それを他家に密告したとする。
そしたらローレライ家は攻撃材料を他家に与えてしまう事を意味するんだ。
明暗の不文律を破っている……それも旗頭が。
こんな事が公になれば、ローレライ家は対処する。
そんなの知らなかった。リンが勝手に近寄ってきただけだ……と。
「さすがに無茶じゃね?」
「可能です。肝心の情報が伏せられていれば」
都歩きの日……リンが独断でソマリに教えたのは、リンが暗青の血であるという情報だ。そしてシャロンが知った上で連れ回しているとまで。
しかし、仮の身分と名前を与えたのはローレライ家だが、それに関しては限られた人物しか知らないし隠蔽されている。ここさえ伏せられていればリンが自身の手で用意した、って押し付けられるんだ。
もちろん、シャロンはリンの素性を知った上で連れ回しているという情報があるのだから追求はされるだろう。
けど、そんなのはリンが嘘を吐いていると言い張って譲らなければ、証拠不十分で攻撃しきれなくなるんだ。
なにせリンが勝手にした事とするのだから。シャロンが知らなかったと言ってしまえば完成する。
つまり、リンが本当に暗青の血かも分からないが、リン自身が事実であると言い張っていて、しかもシャロンが明暗の不文律を破っていると理解してなお近くに置いていると虚言を吐いている。こんな得体の知れない女だったから引き離しました、もう問題ありません……と。
まあ、ソマリは素性を教えてきた理由を別の意味で捉えてしまったんだけどな。
まさか自滅のために教えてくるなんて予想できなかったそうだ。
純粋に俺達を信じて教え、そして必要以上にリンへ注目が集まらないよう配慮してほしい、という要望だと捉えてしまった。
だからハイクにも伝えて、普段から一緒に行動するだろう地元組と、最近になって頻繁に連れているマリまで巻き込んだ。
そうして俺達は秘密を守る気だったんだが、シャロンとチャールスは焦った。
リンが勝手に暴露してしまい、このままでは密告されるかもしれない……と。なぜなら俺達を他家から送られてきた手勢かもしれないと疑っていたからだ。
けど全ては後の祭り……既に情報がソマリに伝わった。
だからシャロンは決断したんだ。
自分の意思で連れ回していると俺達に自身の口から改めて告げて、リンだけに責任を負わせないよう対処した。
勝手に自分だけで破滅しようと目論んだリンへの怒りもあったんだろう。
シャロンもリンも一緒に破滅する道しか取らない覚悟を持った。
きっと、俺達が密告していたらシャロンは言い張っただろう。
自分の意思で連れ回し、明暗の不文律を破ったと。
「ただ、これは公になった際の話よ。そうならないように可能な限りの対処をしたわ」
「どんな?」
「元々あなた達を私の手勢に見張らせていたけれど、その日からは更に警戒を強めさせたの」
「密告の気配を出したら、殺すぐらいですか?」
「……」
うっわ……そこでの沈黙は即ち肯定じゃんよ。
マジで? お命頂戴されるかもしれんかったの?
「……もしくは買収で取り込もうかとも考えていたわ」
「駒にするとか言ってましたからね」
あ~……向こうより高い年俸にしまっせ! みたいな感じなんだろうか。
こっちの方がマシだと思えるな。年俸云々じゃなくて命狙われるよりはマシ、って意味で。
「でも……あなた達は秘密を守っていた」
それが驚愕だったらしい。
疑ってはいたが、ほぼ確実に他家の手勢だと睨んでいたからだとさ。
「もしかしたら密告の時期を考えているのかもしれない。もしくは私達が察知できない手段で密告が済んでいるのかもしれない……不安な毎日だったわ」
沈んだ声でシャロンが語っている。
ん~……なんっか釈然としねえな。
「なあシャロン」
「……なにかしら」
「俺達のどこが手勢っぽいんだ? どう見ても普通じゃんかよ」
普通の町から来た普通の一般人だろ。
そりゃ俺は冒険者として超一流の心得を持つけども。
しかし、シャロンは説教でもするかのような声音で返してきた。
「あなた達のどこが普通なのよ」
「はい?」
「上級魔法を扱うハイクとソマリ。無礼極まりないルイス。私の手勢を牽制してきたラグ……どれも非常識だわ」
「ちょい待ち」
「?」
ラグの話が全く理解出来なかった。
「手勢を牽制って……何の事だ?」
「強化演習の時よ。街で見張らせていたら何度も殺気を飛ばしてきたそうよ」
ガラの悪い奴だな。
そう思って窓から外を眺めていたラグに視線を向けると、こっちを見もせずに呟いてきた。
「シャロンの手勢とは知らなかった」
「それ以前の話だっつの。なんで殺気飛ばしたんだし」
すると、この疑問にはソマリが答えてくれた。
「ルイスが行方不明になって苛立ってましたからね、ラグは」
「そうなん?」
「こっそり抜け出してマークベルに向かおうと考えていたらしいですよ」
なのに見張られて動けなかったもんだから、苛立ち紛れに殺気を飛ばしていたそうだ。
魔法学校の職員が用意した見張りかと勘違いしていたらしいけどな。
「そんな事があったんだなぁ」
……あれ?
「俺はただ無礼なだけ?」
「そうよ」
「酷くね!?」
なんかこう……只者じゃないぜ! って感じの場面とか見当たらなかった!?
いや別に手勢だと疑ってほしいわけじゃないんだけどさ。
「脱線しすぎましたね」
「そうね。話を戻すけれど、信じてなかったの」
「僕達に前夜祭で嘘を教えたのは燻り出すためですか?」
「ええ」
偽情報に食いついて爽風亭を探る者が居れば、俺達が密告者だと意味するそうだ。
「結果はどうでしたか?」
「……白よ」
「なのに関わるなと言うんですか? それとも信じられないと?」
「……」
シャロンが暗い表情で俯き、マリが心配そうにシャロンの手を握っている。
その姿を見ながら、俺は疑問を出した。
「けどさ、バレてないんだろ?」
俺達だって密告してないわけだし。
あれ? なのに、追われてたな。
「しかもさ、なんで騎士にまで追われてんだ?」
ルドルフが手を回したんだろうか。
いや……それ以前にさ、バレてんの!?
「リンがメイアだって事がバレたのか!?」
「……」
「所定の宿に潜伏してたのもバレたのか!?」
「……」
沈黙は肯定とみなすぞ!!
「おいヤバいじゃんか!! 騎士にまで追われて」
「リンを追ってたわけじゃねえよ」
ふとラグが俺の言葉を否定してきた。
窓へ鉄板を嵌め直してから床に座り、説明してくる。
「さっきまで外を見てたが、もう騎士は動き回ってない」
「?」
「通常警戒に戻ってんだよ」
「上手く撒いたんじゃね?」
「アホか」
なんだよ……もちっと分かりやすく説明してくれんとさ。
「リンを追ってんならよ、まだ騎士が動き回ってるはずだろ」
「いやでも追われてたじゃん」
「あのときは時間帯的に夜だ。警戒が厳重になってるからな」
「?」
「シャロンが馬車で移動して、警戒網に引っかかっただけの話だろ」
てことはさ、リンは追われてない?
「シャロンさんが馬車から一人で出てきて、宿に入ったんです」
「うん」
「そして、玄関から出てきたのはチャールスさんだけです」
「……うん」
「人数的に一致しますので、走り出した馬車を騎士が追ったんですよ」
ほうほう。
「てかさ、なんで警戒網に引っかかったんだ?」
「騎士隊長を殺した犯人かもしれない、と疑われたんですよ」
「あ~……だから名門六家の騎士全部が動いてんのか」
で、所定の宿を囲っていたのは犯人の潜伏先かもしれないと疑ったからだろうってさ。
ただ経由しただけなのかもしれないけど、疑わしいなら調査しなければならない。
だから俺達も窓から出てきて怪しまれたと。玄関から出たとしても事情聴取されるだろうけどさ。
「ん~……なんでシャロンはさ、あの時間に宿へ来たんだ?」
「泳がされたんじゃねえの?」
ラグがシャロンに視線を向けると、目を閉じている。
そして、悔しそうな声で告げた。
「騙されたのよ……ルドルフに」
次回・・・夢想の都 出会いの力




