仮面
「うん、君が久瀬君か。諏訪瀬もよく君を引っ張ってこれたよなぁ、東都大ともなれば将来も安泰だっただろうに」
他人と壁を作らないような、そんな笑顔だった。しかしその笑顔はきっと人工的なそれだった。
「東都大だって他の大学とそう変わりませんよ。それに私は引っ張られて来た訳じゃない、研究内容に惹かれて自ら来たんだ」
それを聞いて几凪はぴく、と眉を動かして私の反応を吟味しているように見えた。そしてその柔らかい表情のまま、
「良いね、君みたいな人こそがここに集まるべきだし、実際集めている。今回の計画は極秘であり壮大だからね」
几凪はゆったりと私の横を通り過ぎ、晦日の肩にぽん、と手をやる。
「晦日君、自分の学歴に劣等感があるかい?」
「いえ、劣等感とまではないですけど……でも実際こうやって色んな人を目の当たりにすると、どうしても自分が恥ずかしくなるというか……」
「どの大学の出身だろうがそんなもの気にしなくて良いんだよ。大事なのは現に持っている知識であって、肩書きではないからね。僕が君を呼んだのは数合わせなんかじゃなくて君が必要だったからだよ、晦日君」
「は、はい!」
「かしこまらなくていいよ、君は君らしくあればいい」
几凪はそう言って私をちらりと見、私と視線がぶつかった。
「"期待しているよ"」
そしてすぐに視線を逸らし、部屋から立ち去っていった。




