初対面
「私は所用で少しここを後にする。所内放送で集合をかけるまでは特に指示はしないから他の者と交流でもしてたらどうだ。もちろん荷物整理は済ませておけ」
しんとした部屋の中に、2人。
「あ……ごめんなさい、私の名前知らないんですっけ。私、晦日 亜依って言います」
何を話そうか迷っているうちに、会話が始まった。
「久瀬さんって、どこの大学から来られたんですか?」
「ああ、東都大学の院生です」
「えっ本当ですか!? やっぱりそんな凄い人がここに集まってるんですね。自分が恥ずかしくなってきちゃった……」
「晦日さんはどこの大学に?」
「いえいえ、私は無名の私立大学生です。なんで選ばれたのかが不思議なくらいで……。あ、私3年生ですから久瀬さんの方が先輩ですし、"さん"付けしなくて大丈夫ですよ」
「ん、なんて呼べば良いかな?」
「普段はよく亜依って呼ばれてますねー」
「じゃあ亜依、これからよろしく」
口の中がぱさぱさに乾いていき、ろれつが怪しくなって来ているのを感じながら、私は漠然とした不安を紛らわそうと話を続ける。
「よろしくお願いしますね、久瀬さん」
「ああ、早くお互い慣れていかないとな」
「そうですね、これからたった7人で研究を頑張らないといけない訳ですから……早く打ち解けるに限ります!」
「……7人?」
「ん、久瀬さん知らないんですか? 今回集まった研究メンバー、それは優秀な若き科学者、諏訪瀬 聖と几凪 尖を中心に、その2人が選考した5人のメンバーを合わせた7人で構成され……っていう話。諏訪瀬さんから聞いてないんですか?」
「…………」
何も聞いてないなぁ。
「ええ……だとしたらこの件はどう考えても胡散臭い話にしか聞こえなかったと思うんですけど……よく了承しましたね」
「自分でもそう思ってるさ」
亜依は生来の優しい性格からか、友好的な表情のままだったが、その奥で少し呆れ返っているようにも見えた。まぁ、当然の事だ。
「諏訪瀬から聞いた今回の研究の話があまりに魅力的で、不審に思いながらも気になって仕方なくなってな」
「そうそう、今回のこの話、本当に革命的というか、あり得ないというか……それをこの目で見たいっていう気持ち、分かりますよ。私も誘われた時はなんで私がって感じだったんですけど、好奇心には勝てませんでしたね」
照れ隠しのような笑顔。
「きっとそういうメンバーが集められてるんだろう」
「そんな単純な選考基準ではないさ」
すぐ背後、青年の声がした。
「あ、几凪さん」
亜依の言葉を聞きながら振り返ると、そこにはもの優しげな笑顔をした白衣の男がいた。
「今回集められた7人はそれぞれに特別な役割を背負ってる……なーんて言ったら堅いかな。とにかく、僕も含めてここに来たメンバーは偶然で出来たものじゃないって事さ」
そう楽しそうに説明する几凪の笑顔は、私には仮面に見えた。




