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地平線を埋め尽くす青い海。遙か昔、生命の生まれたこの海の底に、"それ"はいた。
海底で休眠状態だった"それ"は強固な芽胞という殻を作り、その水圧と環境とに耐える力を持っていた。
"それ"は人間が誕生する前から地球に存在していたが環境の激変と共に数を減らし、数少ない生き残りもこうして海の底で悠久の時を過ごしていた。
しかしとある人間が"それ"をそこから引き揚げてしまった。眠りから起こしてしまった。
"それ"は名前を付けられた。勝手に夢を詰め込まれ、無から有を創り出せると、愛という名を付けられた。
海底から引き揚げられた"それ"は、厳格に管理された環境下で再び活動を始めた。どんな期待も、どんな希望も、どんな企みも、"それ"には関係ない。ただ本能のままに動くだけだった。
その事がこれから大きな出来事を引き起こす事を知っているのも、きっと"それ"だけなのだろう。
いや――"それ"以外にも1人だけ、その事を知る者がいた。その名は……。




