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疑似餌
大きなエンジン音に私の思考が邪魔される事はない。
あまり綺麗に舗装されてはいない道を、1台のバスが走る。親戚でもいない限り来る人はあまりいないであろう、とある郊外の方へ向かって。
この路線ももうすぐ廃止になるのではないかというくらいに、過ぎていくバス停に人影はない。
「需要がないんだな……」
何事も多数派が生き残っていく世の中。それは私にとっては少しだけ生きづらい。
研究職というものは今の世間にはあまり求められていない。そのくせ世間は夢のロボットや不治の病の特効薬を妄想し、要求してくる。
私はそれを特段嫌っている訳ではない。仕方ない事なのだろう。一般人からすると私達は何だか自分達と違う世界で生きている凄い人、といったところなのだろう。科学者や研究者はそういう立場であり、時には理不尽な目に合うのも仕方ないのだろう。
だが、だからこそ、あの日見てしまったあの資料に私はまんまと"食い付いて"しまったのだと思う。そして今、餌に食い付いた魚のように釣り上げられている最中なのだ。
何故ならあの資料に記されていたのは、不死の病を本当に克服してしまうかもしれない、夢のような、お話だったのだから。
疑似餌にしては、騙す気がなさすぎるお話だったのだから。




