悲劇でもある。
更新遅くてすみません。
アヴェリアがユリシスと出会ったのは、彼女が8歳の時であった。
彼女は後に思う。
この出会いは人生のターニングポイントであったと。
"物語"は、もう、既に始まっていたのだと。
************
前世の記憶、経験があるせいか、アヴェリアは周りからとても聡い子供として見られていた。
彼女は子供らしく振る舞っていたつもりだが、必ず何処からかボロが出る。それでもアヴェリアの両親は、変わらず彼女を溺愛していた。
していた、が。
「父様、母様。どんな御用でしょうか」
「……よく来てくれたな、アヴェリア。今日はお前に紹介したい人がいる」
父は微笑んでいるが、その眼差しは何処か陰り、突き刺さるようにアヴェリアを注がれる。
何か気に障ることでもしてしまったのだろうかと、彼女は戸惑い、母へと目を向けるが、母は脱力したように床へと視線を落としていた。
何があったのだろうか。
「紹介したい人、ですか?」
「あぁ、此方へおいでユリシス」
何処か甘さを含んだ声音で、父は後ろを向き話掛ける。初めて聞いた声のような気がした。
母にもこのように話し掛けたのを見た記憶さえない。本当に優しい声音だった。
「……ぁ」
「ユリシス? どうしたんだ、さぁおいで」
戸惑ったような声だった。
若干の怯えを纏ったその声は、子供特有の高い声で、声だけでの男女の区別は無理そうだ。
アヴェリアからは、父の背中が遮り子供の姿は見えない。子供がアヴェリアから隠れているのではなく、父が意図的に隠しているように見えた。
明らかにいつもの父ではない。まるで、
(私の事を舐めるように見てくる、小児性愛者みたいだ)
そこまで考えて、彼女は気分が悪くなった。自分の父に限って、そんな。
「ほぉら、挨拶しなさい。君の姉になる人だ」
「…ぁ、……あ」
父が無理矢理、子供の細い腕を掴んでアヴェリアの前につきだす。
子供は恐ろしい程に、美しかった。
「ほら、ユリシス」
「う……ぁ…」
年齢は、4、5歳くらいだろうか? 柔らかそうな黒髪に、青がかった紫の瞳、桜色の唇。
どれも綺麗なのに、瞳はギョロギョロと忙しなく動き、カチカチと歯と歯があたり鳴る音に、不健康なほどに青白いその肌が台無しにしていた。が、それでも美しい。
アヴェリアは子供を見て、何処か既視感を抱いたが、直ぐに浮かんで消えた。
「……初めまして」
「………ぅ!?」
「私はアヴェリアと言います。貴方は?」
もちろん、子供の名前は父が先程言っていたので、彼女は知っているが、どうしても子供の口から聞きたかった。
怯えている子供の目線に合わせるように、しゃがむ。行儀が悪いと言われるが、それでも子供を真っ直ぐに見たかった。
何故、と思うことは沢山ある。
急に、子供を連れてきて弟と紹介してくる父。
心此処に在らずと空虚に視線をさ迷わせる母。
何かに怯えてビクリと体を震わせている子供。
だが理由を聞いても、誰も教えてくれないだろう。
「貴方の名前を教えて欲しいの」
「……あ…」
アヴェリアは静かに微笑む。
大丈夫という意味を込めて。
「……ユ…シ」
「うん」
「…ユリ、シス……」
「うん、ユリシスと言うのね。宜しくお願いしますね」
「……ぅ」
この日を境に、この屋敷は何処か可笑しくなっていった。
加速していくそれは、止まることを知らない。
カチ、と時計の針の音が聴こえたが、直ぐ遠くなり残らなかった。
リアルが忙し過ぎるorz
あと花粉なんて嫌いだ。鼻つまってまともに寝れない。だからといって口で息しても、ホコリアレルギーで咳が止まらなくなる。
なにこの悪循環。