仮面の二つ名
おひさしぶりです(*^^*)
第26話更新!
規則的な機械音で無理矢理現実の世界に引き戻された俺は、重い体を起こしながら携帯を取った。
「はい…。もしもし」
「やぁ雷斗君!グッドイブニング!!」
耳をつんざくほどの大きな声が、携帯から発せられた。携帯のディスプレイを確認すると、やはり坂上からだった。
「何か用か?」
「ありゃ?テンション低いね~」
お前が高すぎるだけだという言葉はこの際言わないでおく。
「何もないなら切るぞ」
「あぁ!待った待った!せっかちさんだね雷斗君は。今雷斗君の家の前なんだけどちょっと良いかな?」
「は?」
そういって窓から外を確認する。俺の部屋からは丁度玄関を見られるようになっているのだ。見てみるとほんとに坂上がいた。
「……分かった。待ってろ」
「ほいほーい!」
俺は携帯の通話を切ると、未だにおぼつかない足取りで玄関へと向かう。リビングを通る際時計を確認すると、ちょうど昼過ぎだった。四、五時間は寝たはずだが無理に起こされた事でまだ眠気が取れていない。
「んで、何のようだ?」
玄関を開け、寝ぼけ眼で坂上を迎える。
「ひょっとして寝てたの?」
「ああ…」
「ごめんね。ってことでお邪魔するよー!」
「何にも悪びれてねえな…」
俺の言葉を無視して坂上は俺の家にズカズカと入ってきた。
南島と言い、こいつと言い俺のプライベートをもう少し配慮して欲しいもんだ。
「ほほぉー!これが雷斗君のお家か!」
キョロキョロと辺りを見渡し、謎の感動を示す坂上。リビングの観葉植物を繁々と見たり、ソファの感触を楽しんだりと。子供かこいつは…。
「やめろ。お前んちの方が広いだろうに」
ここまで露骨に反応されるとどうすればいいか困る。と言うより少し恥ずかしい。
「いやぁ。私の家にはこんな安心感はないよ」
どうやら生活感という面では、坂上の家よりも俺の家は快適らしい。ここまで言われて坂上に対して嫌味を感じないのは、坂上の性格のなせる技なのかも知れない。
「んで、何でいきなり俺ん家に来たんだ?」
ここへ来て、俺は坂上に率直な疑問を投げ掛ける。
坂上はそうだったと言う顔をしながら、それでも悪びれる様子などもなく笑顔で言ってくる。
「まぁまぁ。ここじゃなんだし、部屋でお茶でもしながらゆっくり話そうじゃないのよ!」
「それ、普通なら俺の台詞だよな?」
「んで、雷斗君のお部屋はどちら?」
今日は会話が噛み合わない気がする。
俺は諦めのため息を一つ吐いて、坂上に俺の部屋の場所を教えた。
坂上は階段を駆け上がり、「出来れば紅茶が良いな」とねだる。そしてそのまま俺の部屋に、何の躊躇もなく突入していった。
「金持ちってみんな変わってんのかな…」
俺は素朴な疑問を呟きながら、コップに紅茶を注ぐ。
坂上の好みが分からないので、一先ずストレートで用意し、砂糖とシロップを適当におぼんに乗せて階段を上がる。
タバスコでも入れてやれば良かったかなと、黒い考えが頭を過ったがそこまで鬼ではない。
俺はもう一度ため息を吐き、部屋のドアを開けた。
「あ、やっほー!早かったねぇ」
自分の部屋に入った俺を出迎えたのは、女性らしい丸みを帯びたお尻だった。その可愛らしいお尻はベッドの下からのぞいており、もぞもぞと動いている。
ちなみに、そのお尻の持ち主である坂上の本日の私服はスカートだ。つまり、坂上が動く度に白い布地が見え隠れしていた。
「お前は何やってんのかな?」
なるべく平静を装って訊ねる。が、少しだけ声が上ずってしまった。
「あたしは知ってるよ!思春期の男子の部屋には鬱屈した、たぎる思いの結晶が隠されているものなんでしょ?」
どうやら坂上は、少し過激な本などが俺の部屋から出てくるのを期待してるらしい。
「…一先ず時折見えるお前のパンツをどうにかしたいから、普通にしてくれないか?」
俺は白い布地の魔力に触発されない内に、坂上に直球で伝える。
坂上は今までほんとに気付いてなかったのか、急に慌てて正座をして、顔を赤くしながらこちらを睨み付けてくる。
「雷斗君…。君はデリカシーがないよ」
頬を膨らませた坂上が言う。
「あ、あぁ。すまん」
咄嗟に謝ってしまってから気付いたが、これ俺は悪くないよな?
そんな俺の思いをよそに、坂上は続ける。
「さあ!あたしのパンツを見た代償として、雷斗君のお宝がどこにあるか教えたまえ!」
「パンツを見たのは不可抗力だ。お前があんな格好してるのが悪い」
俺も負けじと反論してみる。だが坂上も、そんな簡単には引き下がらない。
「良いのかい?雷斗君の評判に関わるよ。主に女子の」
「ごめんなさい」
俺は瞬殺された。
「分かったら、お宝の場所を教えるんだ!どこにあるんだい?ちなみに否定と沈黙は所持している事を肯定したものとする!」
「それ何言っても肯定じゃねえか!何である前提で話を進めてんだよ」
「じゃあ無いの?」
「………」
「……雷斗君はムッツリさんだ」
「うるせえ」
これ以上世間体を貶められない内に、俺はもう一度坂上に用件を訊ねた。
「とにかく!一体今日は何しに来たんだよ?」
「実は雷斗君に相談があるんだよね」
坂上の声色は先程の調子とは違い、真剣だった。表情も先程と違って冴えない顔だ。俺は思わず喉を鳴らしてしまう。
「どんなことなんだ?」
「最近サチが変なんだ…」
俺の問いに返ってきた答えは、よく知る人物の名前だった。
「サチさんがどうしたんだ?」
俺は詳しい話を聞くため坂上を促す。
「最近のサチは何かぼーっとしてるというか、この前もサチが入れた紅茶にタバスコが入ってたし、廊下でぶつかった石像に話し掛けてたり、昨日なんかもう酔いは覚めてるはずなのに、食事が終わって一段落した時、皆の前でいきなり服脱ぎだしたんだよ?お風呂の脱衣所でもないのに。ボディーガード達もいたのにさ」
俺は瞬間的にサチさんの色っぽい姿を想像してしまう。あの時の大人の妖艶さが、俺の想像力を掻き立てる。
「雷斗君?」
坂上の鋭い目線で我に帰る。
「いや?別にサチさんの色っぽい姿なんか想像してないぞ?」
「……まあいいや。しかもその時のボディーガード達もデレデレしちゃってさ。とりあえず後藤さんにはパンチをかましてやったけどね!」
不憫な後藤さんに心の中で合掌しつつ、俺は坂上の話を頭の中でまとめていた。
確かに、坂上から聞くサチさんの言動は普段のサチさんからは想像できない。しかし、つい一昨日の酔っ払ってしまうまではまともであったはず。つまり、一昨日の出来事の中にサチさんをおかしくさせる原因があったと思われる。
俺が考えていると、坂上はいきなり机を叩いて立ち上がり大声を出した。
「なので!これからサチのおかしくなった原因を探りにいこう!」
「は?」
俺は坂上の発言に素っ頓狂な声を出してしまう。
「サチにはああ言われたけどさ。やっぱりあの真下って人とサチに何があったか知りたくなっちゃったよ!だって早くいつものサチに戻ってほしいもん!」
坂上の目はいつも以上に本気だった。坂上がおちゃらけたテンションの仮面をつけるようになってから、サチさんは最初の理解者だったと聞く。お互い一番信頼しあっている姿は、本当の姉妹のようだ。坂上はそんなサチさんを今度は私が助けるんだと言わんばかりだった。
「さぁ!そうと決まったら善は急げだよ雷斗君!」
そう言って俺の手を掴み引きずり出す。
「なっ?おい、ちょっと!」
「雷斗君に拒否権はないのだ!ムッツリさんなのをバラされたくなくば協力してもらうよー!」
「俺はムッツリじゃねぇ!」
「じゃあ行くよ!オープンスケベ雷斗君!」
「スケベでもねぇぇ!」
妙な二つ名の誕生と共に、俺の休息は早くも終わったのだった。
お久しぶりです。作者自身も少し内容忘れてたくらいなので、皆さんもお忘れではないかとちょっと不安です(-_-;)(笑)
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