キャンプを作ろう
町に戻った俺とザグはそのままギルドに向かった。
「あれ、なんで戻ってきたんだよ」
アルラインがいた。
「長い戦いになりそうだからね、その準備だよ」
ザグはそう言ったが、当然アルラインは何のことかわからずに、俺のほうを見た。
「あの山の進路が町からそれたから、じっくりやることになったんだよ。だからキャンプの資材を調達するために戻ってきたんだ。お前も手伝えよ」
「面倒くさいな。まあいい、ひまだし手伝ってやるよ」
それからはまずギルドの備品をかき集めて梱包をした。さすがにけっこうな量の荷物になる。
手で持っていくのは無理そうなので、これはタローにくくりつけて運ぶことにする。
その途中で、ギルドに薬の配達に来たエニスと鉢合わせをした。
「あれヨーイチさん、なんで戻ってきてるんです?」
「いや、長くなりそうだから、そのための準備だよ」
「それじゃあ、ちょっと待っててください」
エニスはそう言って走って行ってしまった。その後も、俺達は黙々と作業を進めた。
そうして、そろそろ終わりそうな頃に、エニスが大きな包みを持ってきた。
「エニス、それは?」
「食べ物です。簡単に食べられて日持ちするものを作っておきましたから」
「ありがとう、助かるよ」
俺は包みを受け取った。しかし、エニス一家にはずいぶん助けられてるよな。ありがたいとしか言いようがない。
それから荷物をまとめた俺達はタローを引っ張って町を出た。日が落ちるまであまり時間はないので、俺達は先を急いだ。
オーラさん達のところに到着してみると、全員暇そうな感じだった。
「何もなかったんですか?」
「散発的な襲撃だけですね。この調子ならキャンプを作るのも難しくはないでしょう」
それからタローに積んでいた荷物を降ろして、キャンプの準備を始めた。
エニスからもらった食料を食べながらの作業は順調に進んだ。ちなみに見張りは大体俺がやってた。まあ、町でちょっと休んできたからな。
大した魔獣もこなかったので、けっこう本格的なキャンプが短時間で完成した。
その後は見張りのローテーションなんかを決めて、交代で休むことにした。
そんな感じでその日の夜、俺はテントの中でオーラさんと膝をつき合わせていた。
「さて、ヨウイチさんには明日、もう一度あれに登ってもらいます」
やっぱりそうきたか。
「ザグも一緒に連れて行ってもらいたいのですが、大丈夫ですか?」
「チェーンで引っ張り上げれば 大丈夫だと思いますよ」
「ではそうしてください。ああ、それからあなた達二人は今日は見張りに立つ必要はありませんよ。明日に集中してください」
「わかりました」
俺はザグに一声かけてから、さっさと寝ることにした。
しかし、気がついたら俺は最初にじいさんと会った場所に立っていた。これは夢か?
「そう、夢だ」
目の前にいきなりじいさんが現われた。
「一体何なんだよ」
「もちろん、あの強大な魔獣の話だ」
「攻略法でも教えてくれるのかよ」
「それに近いかもしれん。話は単純で、君自身なら次元の歪みに干渉できる。普通の人間には無理なことだがな」
「それも適応度っていう話なのか?」
「そうだ。本来いるべき次元以外への適応度が異常に高い君にしかできないことだ」
なるほどね。
「でも、あの鉄槌で殴っても歪みはびくともしなかったぞ」
「それは当然だ。あれは次元の歪みに干渉できるものではない」
「じゃあ、あれ無しでなんとかしないといけないのか?」
「そうだ。それから魔獣の内部は歪みそのものだから、君以外の人間は入ることすらできない。注意しろ」
そういうことはもっと前に言っておいてもらいたいよな。
「そういうことだから、がんばってもらいたい」
じいさんがそう言うと、俺の視界は霞んでいった。いや、まだ聞きたいことはあったんだけどな。
そして俺は目を覚ました。
テントの外に出てみると、すでにザグは起きてお茶らしいものを飲んでいた。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
俺が挨拶を返すと、ザグは俺の顔を少し見てから口を開いた。
「妙な夢でも見たのかい?」
「ああ、まあ。俺をこの世界に連れてきたじいさんから夢の中で連絡があったんだよ」
「それは興味深いね。なにか有益な情報でもあったのかな?」
「まあな。あの内部は次元が歪んでるとかで、そこに入れるのは俺だけだっていう話だ」
「厄介な話だね」
「そうだな。もっと早く教えてもらいたかったよ」
あのじいさんは説明が足らなすぎるんだよな。
「でもいいじゃないか。あとはヨウイチ君の頑張り次第だよ」
ザグは笑っているが、俺は笑い事じゃない。
「とにかく、今日の準備を始めるか」
「そうだね、オーラさんもそのうち戻ってくるだろうから」
ここからは俺一人でなんとかしないといけないと思うと、なんか気が重いな。




