内部に潜入だ
俺は必要になりそうなものを詰め込んだ袋をかついで、山の前に立っていた。昨日よりもだいぶ町からそれていってるな。こいつは何がやりたいんだろう?
「ヨウイチさん、薬は確認しましたか?」
ケインが話しかけてきた。
「ああ、大丈夫だよ」
「気をつけて」
ケインはそれだけ言ってその場から去っていった。
入れ違いにオーラさんがこっちに歩いてくるのが見えた。
「ザグから話は聞きました。しっかりやってくださいと言いたいところですが、あまり無理をしてはいけませんよ。危ないと思ったらすぐに戻ってきてください」
「わかりました、駄目だと思ったらすぐに引き返しますよ」
俺がそう言うとオーラさんは黙ってうなずいた。
それから俺はまたあの爪を出して山を登り始めた。今回はしばらく登ってから片方をチェーンに変えてザグを引っ張りあげてる。
しばらく登ってから下を見ると、まもるさんのパワードスーツとセローアが手を振っているのが見えた。
俺はとりあえずそれに手を振って、登ることに集中した。
今回は何の妨害も入らなかったけど、頂上に到着するのは、ザグを引き上げるぶんだけ余分に時間がかかった。
頂上に到着すると、今回は霧が出てたりはしなくて、実に見通しがよかった。
「これは壮観だね。それに穴も想像よりも大きい」
俺達は穴の縁に立った。
「何か見えるか?」
俺が聞くと、ザグはしばらく穴を凝視してから顔を上げた。
「そんなに深くなさそうだね」
「でも、チェーンを垂らしてみても底についたような気配はなかったぞ」
「それは歪みっていうやつのせいじゃないかな? ヨウイチ君自身しかそこには入れないんだろ」
言われてみるとそうだな。まあ降りていってみればわかることか。
俺とザグは穴の縁に鉄槌で杭を打ち込んで、そこにフォームチェンジしたチェーンを固定した。
「僕はここで待ってるよ」
俺はザグにそう言われながら、暗闇でも目が見えるようになる薬を一気に飲み込んだ。これは苦いな。
「じゃ、行ってくる」
俺はそれだけ言って、チェーンを伝って穴を下り始めた。
薬を飲んでるので視界がゼロになることはなかったが、下を見てもほんの数メートルくらいしか見ることはできなかった。
それでも周囲に気を配りながら下りていくと、空間が歪んでいて、チェーンがそこで消えているのが見えた。
ギリギリまで下りていって下をよく見てみると、どうやら底らしきものが見えた。まあ飛び降りても平気なくらいの高さだな。
俺はチェーンから手を放してその底に着地した。なんかやわらかいな。
周囲を見回してみると、放射状に通路的なものが八つ伸びていた。普通に歩いていけるくらいの大きさはあるけど、これはどの道を行けばいいんだろうな?
俺はなんとなく剣を抜いて地面に立てた。もちろん剣は倒れる。そして、俺は剣が倒れた方向に行くことにする。行き当たりばったりだけどな。
とりあえずは剣だけを右手に持って進んでいくと、なにかそれなりに広い空間に出た。
なんか嫌な感じが上からしたので、それを確認する前に俺は前方にジャンプした。
背後に何かが落ちてきたのがわかって、すぐに振り返ってみると、そこにはなんかぶよぶよしてそうな、まあ言ってみればスライムみたいなアレがいた。
俺がなにか考える前に、それはいきなり跳びかかってきた。
「くそ!」
反射的に左手でそいつを殴りつけた。思ったより硬かったそいつは吹っ飛んで壁に叩きつけられた。
でも、これだけじゃ倒せないみたいだな。
スライムみたいなのはまた動き出して、俺との距離をじりじり詰めてくる。俺は剣を頭上に振りかぶるようにして構えた。
そしてそれをスライムに向けて振り下ろした。なんかバターを切るような感覚で真っ二つにできた。
俺はしばらくの間、半分になって転がったスライムを剣を構えたまま見ていたが、動き出すような様子もなかったので、その空間をよく観察することにした。
広さはせいぜい十メートルくらいで、高さは四か五メートルくらいのドーム状の空間って感じだな。
でも残念なことに行き止まりらしい。それでも一応は壁に触ったりして確認はしてみることにする。
下と同じように壁もなんか弾力があって、生温かい。試しに軽く一発殴ってみたけど、弾き返されるだけで何も起こらなかった。
これは無理矢理穴を開けるなんてのは無理だな。
俺は仕方なく来た道に入って、最初の場所に戻った
さて、今度はどの道にしようか。残りの通路ははあと七本。まあ今入ったところの隣でいいな、総当りでやっていけば何かわかるだろ。
で、二番目の通路は途中で行き止まり。三番目は最初のと同じようなドーム状の空間だった。でもスライムとは遭遇しなかった。
さて、次は四番目だ。そろそろ当たりを引いてもよさそうなもんだよな。




