登山なのかな
さて、素手でも登れそうだけど、せっかくだから。
「フォーム! クロー!」
俺の両手の甲に四本の鋭利でさきの曲がった長い爪が装着された。これなら手を使うのには邪魔にならないし、岩に引っかけることもできるだろう。
その爪も使って、俺はどんどん山を登り始めた。思ったよりも簡単だな、どうもこの生暖かい感じは気持ち悪いけど。
ある程度登ってから下を見てみると、周囲がよく見渡せた。別に高いところは平気だから怖くはない。これでもまだ半分も登れてないんだよな。
俺は気合を入れなおして登るのを再開した。でもすぐにでかい影が落ちてきた。
振り返ってみると、ジローより二まわりほど小さなドラゴンが浮かんでいた。
そのドラゴンの口が俺に向かって開かれた。まずいんじゃないか?
俺はとっさに手を放すと、そこを炎が焼いた。数メートル落ちてから、俺は片方の爪を引っかけて落ちるのを止めた。
「フォーム! チェーン!」
俺は引っかけたほうとは逆の爪をチェーンに変えて、ドラゴンに向かって腕だけで叩きつけた。
チェーンはうまくドラゴンの頭に直撃した。うまく効いたようでドラゴンは叫び声をあげて逃げていった。
それから周囲をよく確認した。もう怪しいものは見当たらないな。
「フォーム! クロー!」
俺はチェーンを爪に戻して登るのを再開した。これ以上邪魔が入らなければそんなに時間はかからないはずだ。
運良く邪魔は入らず、頂上まであと少しの場所に到達した。ここまでくると斜面はなだらかになっていて、かなり楽になっていた。
「フォーム! アーマー!」
頂上はまだ見えないけど、何があるかわからないからな。
俺は姿勢を低くして慎重に進んだ。頂上がわずかに見えてきたが、なんというか、禍々しい黒い霧が漂い始めた。
これは頂上から出てきてるのか? 俺は霧が充満する前に頂上に到着するために足を速めた。
そして、なんとか頂上に到達した。しかし霧が濃くて何も見えない。
「フォーム! 鉄扇!」
俺は鉄扇で風を起こした。霧が晴れると、頂上は大体十五メートルくらいはありそうな、円形の平坦な場所だった。
だがその中心には直径五メートルくらいの穴、みたいなものがあった。あの霧はあそこから出てきてたらしいな。
俺はその縁に立ってみた。これは魔獣を生み出してた歪みとは違って、まさに穴だな。ひょっとして口みたいなもんか?
ここから入っていけば、内部から破壊できるかもしれないな。でも、今すぐ突入するのは、ちょっとやめておいたほうがいいかもな。でもとりあえず。
「フォーム! チェーン!」
チェーンをたらしてみることにした。
残念なことに、なにもひっかかったりはしなかったし、底につくこともなかった。
「フォーム! クロー!」
チェーンを戻すことも面倒だったので、爪にフォームチェンジさせた。とりあえずいったん下りることにするか。
俺は爪で適度に減速しながら、斜面を滑り降りていった。登りとは違って、下りるのはすぐに済んだ。
「おかえり。なにか面白いものは見つかったかい?」
ザグが走りよってきた。
「頂上にはなんというか、穴が開いてたな」
「穴ですか」
いつの間にかオーラさんも俺の近くに来ていた。
「ええ、深さはわからなかったんですけど、あそこからなら内部に入れそうですよ」
「しかし、危険ですね。まあ幸いにもあれの進路は町からそれていっているようなので、時間はあります」
そうなのか。じゃあ、じっくり攻めることができそうだな。
「僕も頂上に行ってみたほうがよさそうだね」
「そうですね。もう一度登れますか?」
これからもう一度か? まあ、それくらいの時間はあるかな。
「大丈夫だと思いますよ」
「いえ、すぐではありませんよ。できれば何かキャンプのようなものを作りたいところですから、資材を調達する必要がありますね」
「じゃあ、いったん町に戻るんですか?」
そう聞くと、オーラさんは腕を組んで俺とザグの顔を見た。
「あなた達二人に行ってもらいます。山に作るため以外にも、この山の付近にキャンプを作る必要がありそうですから、それをまとめてお願いしますよ」
俺は荷物持ち確定だな。
「そういうことなら、すぐに行こうか」
なんとなくザグは嬉しそうだな。まあ、こんなところで警戒したり戦ったりするよりはましなことかもしれない。
「ではできるだけ急ぎで、頼みましたよ」
そういうわけで、俺とザグは町に向かって出発した。あんまりのんびりしないで早めに戻ってこないとな。
「それにしても、あんなのの中に入れるかもしれないなんて、けっこう楽しみだね」
そっちかよ。まあガチガチに張り詰めてるよりはましだけど。




