第無環6.x「悦びの代償」
私はこの隙に蒼の月に触れられる位置まで来た。後はスゥのタッチが有ればいつも通りなら緋のMotor界クリア、と言う事になるが私に何か出来る事は…。石ころ蹴り、これが功を奏するかも知れない。私は石ころを私から離れて行った一台に向けお前の相手は俺だぞとばかり嫌味たらしく蹴った。反応し旋回しようとした所を見逃さずスゥは残った二台の内スゥから見て左の方をビームで足止めした。そして残された右の車が我武者羅に飛び込むがスゥは高々とジャンプしてこれを退ける。彼女は着地でしゃがみついでにサイボーグホログラムに触れた。海辺の砂の城が波にさらわれる様に、エゴも含んでいるだろうそのホログラムは崩れ去って行った。バイバイ、とばかりその触った手を振っているスゥ、そしてこちらに駆け寄って来て、
「弔いも済んだね。さあ行こうかシロー、次の自分の首を絞める為だけの世界へ」
と私を鼓舞するつもりか過激なセリフを飛ばす。返事を用意する間も無く彼女は月の球を触り、五台の入り乱れる世界とはそこでお別れとなった。
次の世界。一見何と言う事は無い、すぐ20mほど先に在る球がまた蒼い事はまあ気に掛かるのと既にフラニシュ氏と思しきホログラムが鎮座している、と言う事位でまだスゥと語らう時間は有りそうだった。私はその時間を有効利用させて貰って先の言葉の真意を聞き出すべくスゥに問い質す事にした。
「結構怖い事言うじゃないか、自分で自分の首を絞めるだなんて」
「ごめんね、急に怖い事言っちゃって。お尻を叩くみたいな強い言葉になったのには私なりに訳が有ってね。私が完成度に太鼓判を押したのはこの世界があったからなんだよね。来てみてやっぱり運命と言うか、前からの決まりごとの様にここだったしね」
「完成度、か。このフラニシュも打ち勝てなかった何かが待っていると言う事なのか」
緋のMotorは私がデスゲームとしていの一に思い浮かべていた処女作と言っていい物だったのでそれが完成度を上回られて居てもまだ理解は出来る。だがなんだろう、今までに考え付いた相手に危険を冒させる為の加虐幻想の一体どれがここまでスゥの心を揺さぶったのだろう。胸騒ぎが止められない。
「うん。シローが庭に出た時発想したアイディアの欠片がカチカチと嵌ってデスゲーム構築が成されたあの瞬間、私は正直嬉しかったんだ。あんまり真っすぐな感情とは言えないとは思うけどね、誰かが残酷にやられてしまうその様を連想しての昏い感情な訳だから。バチが当たったのかもねえ、そんな悦びを覚えてしまった自分が今は正直情けないよ」
場面違いを一緒くたにした図 顔若いな…




