第27話【柔軟な体】
大きなスライムが向かってきている。 なんか速い気もするな。
「うーん、キングか? ありゃ」
「どう見てもそうでしょうが」
「いや、さっきまでバカみたいにでけぇの見てたから感覚がおかしくなっちまってんだ」
あれの何十倍あるんだかわからんが、インペラトルに20体ぐらいのゴーレム見た後なら感覚がおかしくもなる。
「それで、アイツをどう迎撃する? 右はほぼ全面トラップだが」
「どうするも何も、正面からぶつかるしかないと思う。 魔法も大して効かないんだろ?」
「まあ、そうですね。 あれにまともにダメージを与えられる魔法があれば知りたいところです」
「それなら正々堂々真正面からのド突きあいと行こうじゃねえか」
雑魚しか相手してないからどれだけ強いのか正直言ってわからない状態でぶつかるのは好ましいとは言えないが、俺はそれしかできないから仕方あるまい。
「レオナちゃんは私と一緒に後ろにいようか。 みんなと一緒だと邪魔になっちゃいそうだからね」
「は、はい!」
あの2人そんなに歳離れてないよな?
『1つか2つでしょうね』
レナは聖職者でもあるから子供らしさがあんまりないんだが、背がそんなに変わらない姉妹感あるな。
「……なんか変なこと考えてます?」
「いや別に。 ただお姉さんっぽいなって思っただけだよ」
「本当にそれだけですか?」
「本当だよ。 そんなことよりちゃんと後ろにいるんだぞ。 その子に怪我させるわけにはいかない」
「わかってます。 ちゃんと守りますから」
回復魔法とやらがどれだけ通用するのか未知だし、レオナちゃんが危険な目に遭うのは避けたい。 成人もしてないような子に危ないところにはいて欲しくない。 が、守るにはできるだけ近くでないといけない。 んー難しいな。
『一番いいのは騎士団に預けることだと思いますが…… ちょっと遠すぎますね』
一人で行かせるのもなんだか良くない気がするから一緒に行動させよう。 レオナは適当な投石でも大ダメージになりそうだ。
「ん? なんだ? ありゃ。 転がってるぞ!」
距離が近くなったからわかることだが、なんかすごい移動の仕方だな。 ゲルトが笑うのも理解できる。 デカいスライムがコロコロ転がってくるなんて予想できん。
「確かに面白いが、あれは転がった方が早く動けるのを理解してるからやってるんだろう。 それだけ知能が高いってことだ。 厄介だぞ、こいつは」
デカくて攻撃が通りにくくて更に知能まで高いときた。 相手したくない敵ランキング上位だな。
「囲い込みましょう。 同時に複数の方向を相手するのは苦労するはずです」
「ゲルト、前も言ったけどキング相手ならあんたのそのアホみたいにデカいハンマーが頼りだよ。 私らはあいつに致命傷与えられないから」
「頼られてもオレのやることは変わんねえけどな!」
結構近いんだがそこまで大きいとは感じない。 俺の身長とそこまで変わらないぐらいのサイズだが、他のスライムのキングってのはもっと大きいから若干違和感がある。
キングを囲った、ここから徐々に近付いて攻撃を仕掛ける感じか。 攻撃しながら観察させてもらおう。 何か見つかればいいが。
「どォらァ!」
……凄い声だな。 体も声もデカい。
「フン!」
軽く切りつけたが、全く効いてない。 刃は通るが臓器に届くほどの傷は到底できないな、これは。 なら突きといこう。
『無理そうですけどね』
案の定突きでも無理みたいだ。 わかっていたが分厚すぎて勢いが止まって根元までは刺さらない。 根元ぐらいでようやく心臓に届く可能性がある程度だが。 届かないなら仕方ない、突き刺したままキングの身体を見よう。
……だめだ、分厚すぎて透過率が足らない。 心臓の位置の特定は難しそうだ。 図体の大きさに比例して心臓の大きさと力強さも増しているはずなんだが、歪みが見えない。
「っとと!」
突き飛ばされた、すごいパワーだ。 振り払っただけなんだろうが、この力で殴られたら骨が折れるな。
「どう? エイジ、キングは」
「ああ、最低だよ。 聞いてた通りの厄介さだな」
「ホント、倒すのに苦労する魔物だよ。 ゲルト、アレクシス! ちょっと離れて!」
近接職が取り付いてたから魔法が使えなかったみたいだ。 援護するのも大変だな。
「フラーメ!」
こりゃ離れてないとダメなわけだ。 近付いたらまとめてこんがり焼かれてる。
「とりあえず燃やしたけど弱体化しかできないから結局直接叩かないといけないから頼むよ!」
「わかってる!」
全然効いてなさそうだ。 ……試しにやってみるか。
エイジは時間を止めキングに接近した。 表面は若干だが変色している。 ベラの魔法によるものだろう。
右手で剣を持ち上げて切先を向ける。 左手は何もしない、左手が空いていなければ自分の時間を操作できない。 そして時を動かし自身の時間を加速させ、剣を突き刺した。 突き刺した剣で横に切り裂いた。 剣はそのままスライムの身体から離れ時間は元に戻る。
「わーお……すごい動きだね」
「やってはみたがこれでも不十分な気がする。 腕の長さが足りない」
「そんな文句言うやつ初めて見たぞ」
なかなかに深い傷だが、多分心臓に傷はついてない。 何度も連続で使えるわけじゃないからクールタイムの間に再形成されるんだろう。 厄介だな……
「あ、あの! すいません!」
「どうした? レオナちゃん」
「向こうに、何かが!」
レオナちゃんが指をさした方向を見る。 確かに何かいる。
「人? でもあの色は……」
「どう見てもスライムですね」
「得体の知れない人型スライム登場ってか。 いつの間にやらインペラトルも復活してやがるし」
なんだか嫌な予感がする。
「何がいるんだ?」
「戦いながらよそ見するな。 キングの相手に集中しろ。 俺も相手するからよ」
「わかった」
あれも護衛か? 人型のスライムとはな、他のとは比べ物にならない知能がありそうだ。
「ベラ、クラウス。 俺はあれの相手をしに行く、レオナちゃんを頼む」
「いいですがレオナちゃんは少し危険になってしまいますよ」
「クラウス、あんたサポートだからレオナちゃんと一緒に少しだけ離れてりゃいいでしょ。 あのキングは遠距離攻撃できないだろうし」
「それでいいなら、わかりました」
連れて行くよりはここにいた方がまだ守りやすいだろう。 俺は見てやれないが、大丈夫だろう。
「レナ! レオナちゃんと来てくれ!」
「はい!」
レナに説明した。
「わかりました。 レオナちゃん、気を付けてね」
「はい、わかってます」
「レナちゃんも気を付けなよ? あれはシャレにならなさそうだから」
「大丈夫です。 これでも付き人としてちゃんと鍛えてますから」
じゃあ、行くか。




