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第28話【スライムの身体で人型】

 不気味だ。 ゴーレムも大概だったが、あれはそういう存在としているらしいがア(・)レ(・)は完全に未知の存在だ。


「アイツの情報は何かあるか?」


 レナに聞いてみるが、多分返事は──


「いえ……」


 やっぱりか。


「昨日少し当時の文献を読みましたが、完全に人型のスライムの存在は一切ありませんでした」

「情報一切なし、か…… 何をしてくるか予想ができない。 後ろにいても油断したらダメだ」

「はい」


 何も情報がないなら距離を取りつつ様子見といきたいが……


『時間がもったいないですよ』


 だよな。 近付いて出方を伺おう。

 うわ、近付いてるの気付かれた。 こっちに来るぞ!


「エイジ様!」


 危ねえ! スティレットがなかったらそのまま殴られていた。 時間を止めて距離を取ったが、あれはすごい速さだった…… 歩行だから他のスライムとは比にならない。


「レナ! なんでもいいから攻撃して足止めするんだ!」


 レナはエイジの指示通りに重い正確な一撃ではなく、軽く大雑把な数のある攻撃を行う。


「石よ行け(シュタイン)!」


 非常に単純な魔法だ。 ただ辺りにある石を集めて飛ばしているだけに過ぎない。 だからこそ素早く放つことができた。 詠唱を省略できるほど簡単な魔法、敵を仕留めるにはあまりにも非力だが、足を止めるには十分なものだ。 大した威力ではないが、当たれば傷はつく。 それが何十という数飛んでいるのが重要なのだ。

 人型は攻撃範囲から逃れるために距離を取った。 当たればダメージを与えられるとはいえ、詠唱を省略したことで石を飛ばす力はあまり大きくなく射程は短くなっていた。 人型がいる場所まで届かないことはない。 だがこの距離では放物線を描きゆっくりと降り注ぐように石は飛ぶ。 避けることは簡単であり、それを考慮した軌道も意味はないだろう。


「素早いっ……!」


 レナが人型の相手をしている間にいつの間にかエイジはレナの隣に移動していた。


「何か当てられるか? あの体ならどこに当ててもダメージを与えられるはずだ」

「あの速さで動かれると範囲攻撃しかありませんが、そうすると得られる情報がほとんどなくなっちゃいます。 一体だけと考えない方がいいと思いますから……」

「俺が戦うしかないか」

「そうなりますね…… 無理だけはしないでください」


 エイジは何も言うことなく人型に近付いていった。


(無理するな、か。 そんな余裕があればいいんだが)


 彼は他のスライムと違い確実に全力を持って戦おうとしているあの人型を相手にして無理しないというのは保証できなかった。 可能であればそうしたい、だが油断はできない。 骨の一本や二本は覚悟した方がいい、彼はそう感じた。


『他のスライムと同じなら死ぬまで攻撃を続けることはないでしょう。 しかし……あのパンチを見ると確信が持てませんね』


 エイジを殴ったスライムの拳はスティレットによって阻害され力が分散した上に当たった直後に時間を停止させ移動したため受けた衝撃も一瞬だったが、威力は人間が放つものより大きいと言わざるを得ない。 それもそのはず、スライムの肉体は防御力に秀でるだけでなくパワーも凄まじい。 正しく扱われれば脅威となる。


(ま、やるしかないか)


 エイジはスライムの背後を取った。 時間を止めれるということは敵の背後を取るのは容易、しかし取れたとして──


(かわされたか!)


 威力のある攻撃を繰り出すには攻撃に必要な動作を、全て進んでいる時の中で行わなければならない。 気付かれればかわすのも可能だ。


(気付くのが早いな。 やはり油断はできない)


 エイジはもう一度背後を取る。 だが一度目で既にかわされた手だ。 2回目が効くはずもない。 工夫が必要だろう。


(どうしたものか)


 加速はできれば使いたくなかった。 加速を使えば疲労する。 隙を見せればそれが致命的になりかねない。 そう思えるほど敵は素早くパワーがあった。

 エイジは考えた。 だがあまり時間をかけてはいられない。 停止と解除を繰り返し足を止めないように時間を稼ぎながら工夫を考える。 1つのことに集中できず有効打になりえそうな考えは簡単には出てこなかった。


(何かないのか!?)


 頭の中にいる女神に問う。 彼女は彼ではない、つまり1つのことに専念できる。


『……フェイントです! フェイントを!』


 すぐさま彼女に言われたように敵に攻撃を放つ瞬間に時間を止め横へと移動した。 停止を解除して振り下ろそうとしていた剣をかわす動きをする敵の胴体を薙ぎ払うように剣を振った。 スライムは直前に気が付いたが回避しきれずに胴体の一部を斬られた。


(後ろに回るべきだったか!)


 スライムはダメージを受け体勢を崩した。 そしてその直後に形も崩れた。


「なんだ!?」


 スライムは変幻自在。 状況に応じて形を変化させることが可能だ。 形を崩したスライムは距離を取り再び人型に戻った。 傷はなくなっている。 斬られた部分を再構成したのだろう。


「倒すのは他と同じで簡単じゃないってわけか…… 短期決戦は、望めないな」


 スライムはエイジにもう一度接近する。 スライムの心臓の鼓動が止まるまで、おそらくは何度でも。

詠唱短縮型とか非詠唱魔法って書きやすいけど世界観的には正しくないのが悩みどころ。主に詠唱の内容。ちなみに何の魔法使うかも悩んでいるので肉弾戦の方がスムーズに書けます。

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