第26話【新しい仲間】
「ビビらせやがって! スライムは所詮スライムじゃねえか!」
冒険者の一人が動かないスライムの塊に剣を叩きつけ続ける。 周りも同様に攻撃を加えているが、大半は弾力によって弾かれていると言っていい。
「あの……やっぱり離れた方が……」
「何をビビってんだよ、ピクリとも動いてないじゃねえか! どこに心臓あるかわからねえがあとはトドメ刺すだけだろ!?」
「で、でも依頼には"決して油断するな"って……」
「そう思うならお前は離れてればいい! どうせお前はそうやってオドオドして参加しないんだろ!? ここにいても邪魔なだけだ!」
「うう……わかりました……」
彼女は離れて行った。
「本当に離れるなんて臆病な奴だ、動かないスライムなんてただの肉塊みたいなものだろうが」
──────────────
「ん? あの子戻ってきてない?」
本当だ、金髪の女の子が戻ってきてる。 引き返してきたということは何かあったのか?
『あんな小さな子も冒険者なのでしょうか?』
本人の意思かはわからんが、金髪だから冒険者としての仕事はできるんだろう。
「ねえ! なんで戻ってきたの?」
「え……あの、その……」
なんだ? なんだか言いずらそうだが。
「邪魔……って言われて……迷惑にならないように戻ってきたんです」
「はあ!? こんなに弱々しい子に邪魔なんて言うなんてありえない! 仲間でしょ!?」
「そんな、私があの人の仲間だなんて……」
なんか闇を感じるな。 とはいえあれに近付くのはできないからこの子をとりあえず保護することしかできないが。
「会ったら一発ぶん殴ってやるわ。 とりあえず仕事が終わるまであなたは私たちが守るから、大丈夫」
「だ、だめです! あの人を傷付けないで!」
「……優しいのね、あなた」
さっきまであんなに小さな声だったのに、それだけそいつが大事なのか。
「おいベラ、俺たちの意見聞かずに決めるのかよ」
「なんか文句ある?」
「いいや、別に。 ただ1人で話進めるのが気に入らなかっただけだ。 その子のことには文句なんかねえよ、二人もそうだろ?」
他の2人も頷いた。
「そうだ、あなた名前は?」
「レオナ・フライスベルト、です」
「私はベラ、ベラ・フリータリア。 そこにいるのは左からアレクシス、クラウス、ゲルト。 ここにいる二人は外側の人のエイジとその付き人よ」
「え!? は、初めましてエイジ様!」
「様は付けなくていい」
今のところ教会関係者にしか様付けられてないから一般人にされるのは慣れないな。
「レオナちゃん、冒険者なんだから魔法が使えるんだろ? どんな魔法が使えるんだ? 剣なんか振れないだろ?」
この体で剣振ってきたら驚きだ。
「大したことはできないです、感電させたり、動きを鈍くさせたり……」
「すっごい! サポートでそれだけできたら大体の仕事はできるわよ! 才能あるよレオナちゃん、攻撃魔法は何か使えるの?」
「いえ、打撃しか…… 支援魔法しか覚えさせてくれないので……」
「こんなに才能溢れてるのに、もったいないことするヤツだな。 オレなんか一つも使える魔法ないってのによ」
個人差がすごいな。 大半は使えるが使えない人間もそれなりにいるのか。
「魔法使うより身体使う方が楽だから覚えようとしないってだけでしょ」
使えるのかよ。
「前教えた時は弱かったですがちゃんと着火していましたね」
「弱かったんなら向いてないってことだろ? 人には得意不得意があるんだ、オレは身体を使う方が向いてる。 それにもうあれは覚えてねえから使えねえよ」
「ならまた教えたげようか?」
「勘弁してくれ、オレは頭使うのは苦手なんだよ」
魔法は頭使うから見た目も中身も筋肉でできてそうなゲルトは苦手なんだな。
『失礼ですよ』
そういう印象ってだけだよ。
「そういえば、エイジも魔法が使えないって聞いたな。 本当なのか?」
「魔法が使えないというよりは特定の以外使えない、が正しい」
「特化……珍しいですね」
「俺以外にもこんなのがいるのか?」
仕様が完全に同じというわけじゃないと思うが、いるにはいるんだな。
「特定の魔法の扱いにだけ特化して他の魔法をほとんど、あるいは全く使えない人が稀にいるんです。 その分強力なのですが、外側の人でこの体質を持っていたと言われているのはいなかったはずですが……」
「いわゆるゲルダフォーレンと呼ばれる体質ですね。 能力も記録にないですし、特別な人です」
『そういう風にしましたから』
俺は入れ物じゃないんだぞ。
「由来はなんだ?」
「伝説的な英雄で聖人の1人の名前です。 回復に特化していて、仲間を支援していたと言われています。 彼女の名前から同じように特定の魔法に特化した体質をゲルダフォーレン、ゲルダに続く者と呼ぶようになりました」
人の名前から取られるのはどこの世界でも同じだな。
「でもそのゲルダ、回復能力が高すぎて使われた方は半分ゾンビみたいな状態でも生きてた、みたいな話もあるよね」
「ゾンビみたいになっても生きていた、とはありますが…… 本当にそうだったかは怪しいです。 単純にそれを見た執筆者が驚いて誇張した可能性が高いですし、当時から生きているエルフもそういう証言はしていないみたいですから」
「当時っていつなんだ?」
「700年前よ」
エルフはこの世界でも長生きだな…… 700は創作物だと短めな方な気がするが。
「いくら長生きするエルフでもそこまで生きてるのはそうそう見つからないけどね」
長寿とはいえ何百年も生きていたら何回危険な場面があることか。 そりゃ死ぬ時は死ぬか。
「──叫び声が聞こえてきたな」
「よく見えないけど、多分捕まったから騒いでるんでしょうね。 どうする? エイジ」
全然捕まってるようには見えないな。 足だけだとああなるか。 そのうち転ばされて手もされるんだろう、そうなる前に──
「集団の横につく。 人が多くて見えないが護衛も来てるはずだ」
「じゃ行くよ、アレクシス早く立って! ちゃんと付いてきてね、レオナちゃん」
「は、はい!」
話してただけの回。 ちなみにレオナちゃんは意外とそんなに幼くないです




