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第24話【もう一回爆発しろ!】

 集団と少し離れた場所に二人はいた。


「待ってるだけは暇かと思ってたけど、あれを見てるだけで面白いね」


 二人は比較的安全な場所でインペラトルの動きを見ている。


「お前、ちゃんと見てるのか?」

「見てるよ。 横目でね」

「はあ……」


 彼女が真面目にやらないせいでインペラトルの監視はほとんど彼がしている。 本来は逆のはずだ。 彼が護衛し、周囲を観察、彼女が目標が網にかかるまで監視する、そういうものだ。


「痛そうだね〜 あれ、スライムって痛み感じるんだっけ?」

「俺に聞くな。 学者に聞け」

「冷たいなあ、ここには君と私しかいないんだよ?」

「知らないものを聞かれても答えられるかってんだ」


 彼は少し不機嫌な様だ。 無理もない、仕事とはいえ楽しむことも大事ではある。 だが彼女はそもそもあまり仕事をしていない。


「私が悪かったから機嫌直して〜 ちゃんと集中するから〜!」

「それでいい。 俺が周りを見れなくて困るのはお前なんだからな。 さっきの単独行動と言いお前は自由すぎる、守れるものも守れないだろ」

「おっしゃる通りです……」


 彼女は何も言い返せなかった。 そもそも彼女が護衛として雇っている以上、完全に彼女に非がある。


「お前が死んじゃ困るからな」

「心配はしてくれるんだね」

「報酬は貰わないとな」

「そこなの!? もう長いよ付き合い!?」

「冗談だ」


 彼は笑いながら言った。 彼女の反応は面白い、彼はそう感じた。 彼らはただの護衛と雇い主の関係でいられるほど短い付き合いではない。 相棒であり、大切な友人だ。


「もう…… 周りに何かいる?」

「いや、何も。 さっきの爆発で飛び散ったスライムがちょっとあるぐらいだ」

「ちゃんと見ててよ? 足とか噛まれたくないし」


 彼女はそう頼むが、彼は冗談交じりに「ネズミぐらいなら見逃しているかもな」と言い彼女をからかう。


「笑えない冗談はやめて。 どうせネズミなんかいないんだから」

「ま、噛まれないようにでも祈っておけ」

「……やっぱりさっきのこと根に持ってる?」

「少しはあるかもな」

「……ごめんなさい」


 彼女は少し気分が落ちたように見える。 さすがに反省したようだ。


「仕事してくれればそれでいいけどな。 ほらションボリしてないでちゃんとあいつを見ろ。 気分が悪かったら仕事も上手くいかないぞ?」

「……じゃあこれが終わったら奢ってよ」

「う〜む…… わかった」

「よっしゃ!」


 彼女は声色が明るくなる。 人は褒美があるとやる気が出るものだ。 彼女はそれが他人と比べ公開が大きい。


「ご褒美があるとなればすぐ機嫌が良くなるな、本当に」

「いいでしょ別に、そんなにお金持ってないんだし」

「どこにそんなつぎ込んだらこの仕事で金がなくなるんだよ……」


 出費が多いとはいえそれを補って余りある報酬の仕事をメインとする彼女が"そんなに"持っていないというのはおかしな話だ。


「魔法石買い込んだりとか、もっと扱いやすい爆弾を作るための材料と作りかたの勉強とか、あとは君の雇用費?」

「ほぼお前の趣味に使われてるじゃねえか」


 彼女が爆発を使うのはほぼ彼女自身の好み。 魔法石と爆弾、どちらも仕事道具ではあるが爆発である必要はなく、爆弾はコストが高く、適切に扱わなければ危険でわざわざ使うようなものでもない。 仮に完璧な状態であっても威力が高すぎることも多く、彼女が使いたいから使っている以上の理由はない。


「私が好きでやってるんだから雇われの分際で文句言わない! 使った分だけ生存率が上がるんだから!」

「本当かよ」

「本当! それに石があれば万が一のことがあっても他の魔法使えばどうにかできるんだし」

「それは……そうかもしれんが」


 会話に夢中になっているために彼が注意したことを彼女は全くできていない。


「というかあれから目を離すなよ。 夢中になりすぎだ」

「あ、そういえばそうだった」

「奢ってやらんぞ」

「はい集中します」


 遠くにいるスライムを見る。 ゆっくりとだが攻撃を受け止めながら進んでいるようだ。


「思ったより速いね。 あんなに攻撃されてるのに」


 彼女が思っていたよりも巨大スライムが動く速度は早かった。 そもそもスライムとしてはかなり速い方なのだろう。 通常のスライムなら2人が話していても大して進んでいないはずだ。


「これは君の言う通りちゃんと見ておかないとチャンス逃しそう」

「やっとちゃんとやる気になったか」

「これでミスでもしたら怒られるじゃ済まないだろうからね」


 都市の命運がかかっていると言っても過言ではない依頼だ。 失敗はできない。


「そろそろ準備しておきますか」


 彼女はポケットから1つ石を取り出す。


「ちゃんと反応するか微妙だけど」

「なんでそんな不安定なんだよ」

「両側の魔力の差が大きいと同期させても上手くいかないこともあるの。 色々試してある程度は何とかなったけど、今回は魔法が沢山使われてるからかき乱されて不安定になってるかも」


 魔法を使うための魔力はほとんどが個人の持つ、あるいは僅かに離れた魔法石のを用いて行うために他人の使う魔法の情報に影響されることはないが、周囲に若干だが拡散する。 一人、二人が魔法を使っていてもそれは大したものではないが、今のように大勢が使えばただでさえ反応しずらいものがさらに反応が鈍くなるだろう。 これは信号を送る側の方が魔力が大きければ解決されるが、それほどの魔力はかなりの大きさになってしまうだろう。


「一番効果があるのは踏んでからだと思うけど、それもスライムの血が邪魔するかもね。 まあ、それでもやらないといけないけど」

「運次第かよ」

「無理やり爆発させることもできないことはないけどね。 危険だからやりたくないけどさ」


 彼にそう伝えている間に目印になっているゴーレムの亡骸近くまでスライムは接近していた。


「もう少し……」


 爆破するにはまだ早い。 まだ距離が足らない。


「──今!」


 彼女は石で腰に付けている鉄を叩いた。

 魔力が向こうに伝わるまで数秒ある。 それまで彼女は正常に機能するように祈った。 そして──スライムの身体の一部が弾けた。


「やった!」


 彼女が喜びの言葉を発すると爆発音が鳴り響いた。


「ああ〜緊張した〜!」

「だがまだ仕事は終わってないぞ」

「わかってる。 でも少し休憩。 そのくらいの時間はあるからね」

二回目の登場、でも名前はないお2人。 次出てくる時があったら多分名前が付く。

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