第23話【阻止】
「岩が2人に!」
直撃じゃないか! 2人は無事なのか!?
「あの程度では2人は死にはしないだろう。 だが……反撃が想定していたよりもずっと早いな」
もっと早く気付いていれば阻止できたはずだ。 公爵の言葉を信じるなら生きてはいるんだろうがあれじゃ例え無事でも二発目は撃てないぞ。
『攻撃する前からインペラトルはあそこに狙いをつけていたのでしょう…… 爆発の煙でかえって反撃に気付けなかった、もしかすると……』
向こうも防御してる可能性があるわけだ。 ここからじゃまだ煙で見えないがどれだけダメージを与えられているかわからないな、厳しい戦いになりそうだ。
「彼女が攻撃できない以上、我々は次の手まで奴に可能な限りのダメージを与えなければならない。 エイジ、奴の後ろに回り込んでこれを奴に投げつけてくれ」
例の魔法石3つ、これでどうするんだ?
「これは魔法石という名の爆弾だ。 特定の合図を送れば爆発するようになっている」
「さっき何か爆発していたがこれなのか?」
「似たようなものだろうな。 あの爆発自体には私は関わっていないが」
冒険者の誰かがゴーレム爆破したのか…… 爆発を好んでするような人間なのか?
『そんな爆弾魔じゃないんですから』
もし爆破が好きでやってるなら事実だろ。 敵だったら厄介だったな。
「それじゃ行ってくる」
「巻き込まれないようにだけ気をつけてくれ」
のんびり歩いていく、はないな。 インペラトルが来たからと言って増援がないとは言えない。 走ってさっさとぶん投げよう。
スライムの一部が飛び散ってるな。 あれだけ大きな爆発が起きればこうなるか。 とはいえ効いてる様子はないな。
『こちら側の面積だけ増やして大部分は後ろに引くか潰れるように伏せていたんでしょう。 爆発で吹き飛ぶのは避けられませんが衝撃をある程度吸収して被害を抑えられます』
伏せるという表現が正しいのかわからんが、それならあれだけデカくても実際はもっとデカい可能性があるのかよ。
しかしあちこちに飛び散ったスライムはまだ弾力がありそうだ。 避けて走らないと足を取られそうだ。 そういう意図はないんだろうが嫌な状態だな……
『生きてればものすごく頑丈な石があちこちにあることになりますね』
そっちの方がマシかもしれないな。
煙でよく見えなかったが近くに来るとボコボコにされてるな。 火の玉やら土やら、一部は打ち消しあってそうなのが気になるがどれもインペラトルにとっては蚊に刺された程度なんだろう。 まあ、これだけ刺されたら痒くてたまらんが。
さてそろそろ投げるか。 しかしデカいな。 壁よりは低いみたいだが、ここまでのサイズだと一体何トンあるんだか。 どこにこれを投げるべきか。 中心がいいか、それとも足止めのために低い位置にするか。 ……すぐ起爆する訳でもないからどこに投げても大して変わらないか。
「うオラァ!」
3つ投げたとはいえ時間を進めたのは長くなかったが結構な音が聞こえたな。 どれだけ撃たれてるんだ。 まあいい、戻ろう。
「戻ったぞ」
「よくやってくれた」
公爵がもう1つ石を取り出した。 いくつ持ってるんだ。 それを2回鎧に叩きつけた。
「今のは?」
「合図だ。 距離が遠くなれば詠唱を用いずに起爆するには他の魔法石が必要になる。 かなり単純な仕組みだが今ので奴に投げつけられた石が爆発した。 他の音にかき消されここから確認する方法はないが」
爆発以上に他の音の方が大きい。 というよりは他の爆発のせいだ。 火の玉なんかが爆発してるんだろう。
「ちゃんとダメージは入っているんでしょうか?」
「エイジに渡したものは持っている魔力が少なく爆発自体は大したダメージではないだろう」
石にも複数の種類があるか。
「エイジ、君にもわかるように説明しよう。 手短に言うが魔法石というのは魔力が周囲の物質と結合、あるいは蓄積したものが結晶化したものだ。 そのほとんどは鉱物、その中でも宝石類だ」
だから綺麗な見た目をしているわけか。
「物質と結合、あるいは蓄積する魔力の量は一定の域を出ない。 それが魔法石の価値を決めている。 君に渡したのは数ある魔法石の中でも価値の低い、つまり持っている魔力が少ないものだ」
「それで威力が低いわけか」
「そうだ。 使い捨てのものに高い金を払うことは避けたいというのもあるが、この使い方であれば威力が低くとも殺傷力は十分なのが理由だ。 それでも値は張るが」
爆発の威力が低くとも殺傷力は高いか。
「鉱物の形を取っているが、実際に魔力を持っているのは魔力自身が結晶化した部分だ。 他は見た目は綺麗でもただの石だ。 そういった魔法石の魔力を一度に解放、つまり爆発させれば残りの部分は四散する。 破片として」
過程は違うが効果は完全に手榴弾だな。
「なるほど、それで殺傷力は高いと。 だが奴はあまりにも大きい、効くのか?」
「効かないことはないだろう。 少なくともただの火の玉よりは内部にダメージを与える。 結合を破壊された個体同士を再結合するのはインペラトルと言えどあの巨体では簡単なことではないだろう。 破片の排出も同様、やつの行動を阻害することは十分可能だ」
確かにあの体の、言ってしまえば細胞単位で完全にコントロールするのは不可能なはずだ。 十分とは言えないが些細なことでもそれが大きな影響を及ぼすことはある。
『バタフライ効果ですね。 前ではなく後ろで破片が残っているので高い効果があるとは言えないと思いますが』
今思えば横辺りに停止したまま放置すればよかったのでは、過ぎたものは仕方ないが。
「公爵、まだあるか?」
「いや、ない」
「2つ私が持っています。 出し惜しみしている場合ではない、持ってきていて正解だった」
2つか、両側で1つずつしか起爆できないな。
「とても十分とは言えませんがないよりはマシでしょう。 しかし注意して欲しいのがこの2つは時限式、あなたが使えるものではないのでここで予め作動させなければなりません」
整形されてて投げやすい形になっている、キラキラしてるが時限式なのもあって手榴弾として加工されてるな。
「起爆は5秒後、あなたの能力を疑うわけではありませんが気をつけてください」
「5秒もあるんだ。 大丈夫だ」
「では」
石の上側を回して渡してきた。 石に刻まれた文字だかなんだかわからんがそれが繋がった、これで動作するわけか。
危ない、じっくり見てる場合じゃなかったな。 さて行こう。
『なかなか洗練されていますね。 向こうでも通用するのでは?』
確実に通用するだろうが、こんな文字だかなんだかを彫って作る以上は高くて使うことはないんじゃないか。
しかし遠いな、まともに戦ってないのに疲れてくる。
『傍から見れば一瞬でちょっと動いただけでしょうが、実際は何百メートルも走ってるんですよね』
正確な距離はわからんが体力のない今はキツいぜ。 軽装備にしていて良かった。 これで盾でも持ってたら厳しかったかもしれない。
そうこう言ってるうちに着いたな。 透明だから体の内側に破片があるのが見える、結構深くまで行ってるんじゃないか? デカすぎてわからないが。
設置、と言えるのかわからんが完了。 これでいいんだよな? 時間止まってるし浮いてるしよくわからんが戻ろう。 ……遠いわやっぱ。
『今できるのはこれで全てでしょうか』
そう願う、もう往復するのは勘弁して欲しい。
「ん、あれもう戻ってきたんですか?」
「時間止めたままやってきたからな」
「その手があったか。 だがもう在庫切れだ。 君はあとは待つだけだ」
「わかった」
接近するまで待機、か。 待ってる間は飛んでいく魔法を眺めていよう。
爆発する武器と言えば大砲は?ってなるけど対歩兵用の弾とか高すぎるので金欠なフレストブルクにはありません。ぶどう弾とかないんでデッカイ魔法石の塊爆発させるしかないから仕方ないね。




