第21話【突然】
本隊が来るからか向こうはさっきまでの勢いがない。 ゴーレムの上に座れるぐらいだ。
『何くつろいでるんですか』
いやスライムは周りにいないし、ほとんど騎士がやってるもんだから俺が戦う必要もないかと。
『完全にサボってますね……』
一体仕留めるのに毎回加速してたら体力の消耗が激しくてバテるぞ。 プレートの隙間は小さいからスティレット以外を差し込むのはこじ開けないと難しそうだし、そのスティレットは斬撃ができないから致命傷を与える時間がかかりそうな構造してやがるから戦おうにも時間がかかってしょうがない。 あの隙間多分血管しか通ってないぞ。
『神経も通ってますよ』
あいつら個々を繋ぐ神経あるのか? それに相当するのはあるんだろうが、1つ潰したところで意味は無いだろうがな。 打撃武器も持っておくべきだったか? 後悔してもしょうがないんだが。
「……エリナル様と話しているんですか?」
「うおっ、いつの間にいたんだレナ」
「今来たところです」
話してて気付かなかった。 というか全く警戒してなかった。
「大したことは話してない。 それで、レナはどうした?」
「私は傍にいることが仕事ですから。 何かあっても守れるようにです」
完全に無防備になってたから拒否できんな。 気付いていれば自分でなんとでもできるんだが。
「……スライムの速度は人の歩く速度より遅いですよね」
「ゆっくり歩いていてもその半分ぐらいしかないだろうな」
「狼煙と同じくらいの距離だとすると……」
「……見える範囲にいるはずだな」
マズイな、捕捉できていない。 奴単体で遠距離攻撃も可能なはずだ、急いで探す必要がある。
ん? あれはキングか? 今更現れて──あの盛り上がってるやつもしかして奴か!?
エイジがそれに気付いた時には時すでに遅し、攻撃を止める時間もなくインペラトルは身体の上に乗せていたであろう木を投擲してきていた。
「公爵のところまで行くぞ! 二人で相手は無理だ!」
二人は走って公爵に向かう。 エイジはこの時投げられた木の時間を止めることもできたが、それをしてもまた次があるだろうと考え走ることを優先した。
木が地面と衝突して大きな音を立てたが、犠牲になった者がいないことを横目に確認した。
「石だけかと思えば木まで飛ばしてくるか」
エイジたちが近くに来た公爵は微動だにせずにいた。
「公爵、危ないですよ!」
「慌てるな。 大した狙いはつけてはいないだろう。 邪魔なものを捨てるついでにこちらに投げ行動を制限しているだけだろう。 当たることは向こうも考えてはいないだろう。 下手に動けば次の行動が遅れてしまう」
公爵は冷静に分析し、動かず放物線を描きながら降るゴミを見ている。
「閣下!」
二人の騎士が近付いてヘルメットを脱ぐ。
「無事なようですね。 アドラー伯も」
「騎士団の方は?」
「散開していたため現時点では不明ながら大部分が残っているのは確認済みです。 いずれこちらに来るでしょう」
フランツさんと赤髪の……知らない人だな。 幹部クラスなんだろうが会ったことはないな。
「初めまして外側の人、エラナリアル騎士団のリアと申します」
「ああ、どうも」
女騎士、ファンタジーだとだいたいろくな目に遭わないが……今戦ってるのがスライムだから創作物なら余計そういう展開になりそうだが大丈夫だろう。 つよいし。
『石とか飛んできて死んでもおかしくないのに何考えてるんですか……』
おおっとそうだった。 余裕があるのは悪いことではないがいかんな。
「君達は冒険者の援護をしてやれ。 混乱しているだろう、ただのスライムでも足を取られるかもしれない。 彼らも貴重な戦力だ、失えば勝率が下がってしまう」
「了解、私は右、リアは左だ。 行くぞ!」
来たと思ったら行った。 即断即決、判断を下すのが早くて冒険者たちにとってはありがたいことだろう。
しかしいつまで投げてくるんだ? どんだけ背負って来たんだ。 もはや背負ってるというか潜ってるレベルじゃないか?
「あっ、膨らんできました!」
投げながらとは、さすがインペラトルだ。 隙を晒さずに次の行動を行えるようにしている。 とはいえ次に何してくるかがわからない。 身体を大きく見せるのは多分威嚇だ。 だが他のスライムのそれとは違うはず…… ダメだ、予想できない。
「公爵閣下、攻撃しないんですか?」
「まだ早い。 身体を晒したがまだ奴は攻撃をしている。 全て捨てさせてやらなければ危険だ」
あれが止まない限りはいつでも狙いをつけて正確な攻撃をしてくる可能性がある。 狙われるような行動はしない方がいい。
「攻撃を命令すれば彼女は最優先で狙われる。 それは避けなければならない。 今は危険なだけでなく効果もそれほど高くない。 全て脱ぎ捨てていない状態ではそれにある程度防がれるだろう。 奴が土を背負っている間は特にだ」
「そうですか…… でも待ちすぎるのも良くないですよね?」
「当然だ。 狙いすぎれば奴に気付かれる可能性もある」
気付かれたら二度目があるかわからないからな。 一回攻撃できるかどうかも怪しくなる。
「公爵、奴が攻撃をやめたら魔法で足止めするのか?」
「そうだな、近すぎれば彼女の攻撃で飛んできたものがこちらに飛ぶかもしれん。 どれほど効果があるかはわからないがやるべきだろう」
「わかってはいたが俺の出番はまだまだ先か」
やっぱり遠距離攻撃する手段がないとこういう時辛いな。 あっても今回みたいなのじゃなきゃ近付いて殴れるから持ってても邪魔かもしれないが。
「爆弾を奴の近くに置いて来るということも可能だが、まあ魔法がいつどこに当たるかもわからん場所に行きたくはないだろう?」
「行きたいって言っても行かせませんからね」
「いやさすがに行かねえよ。 死ぬぞ」
「待つだけは退屈かもしれないが我慢してくれ」
その分観察できるから悪いことばかりじゃない。 今のところ変わった様子はないな。 中身は見えない。 さすがにここまでのサイズだとあまり透けないな、装甲がないからどこに弱点があるか予想もできない。 あっても誘導されるだけの可能性はあるからそれは大して変わらないかもしれないが。
というかどこまでデカくなるんだあれ。
『遠近感がおかしくなってきました』
デカイ上に色も大して変わらないから本当に遠近感が狂うな。 正確な大きさがわからない。 めっちゃデカイのは確かだが。
「こうなるとこちらから合図を送るのは難しそうだな」
公爵が手を上げて、何か魔法をしようとしてる。
「有色炎【緑】」
信号弾じゃねえか。 信号弾を撃てる装備は近代から、こっちじゃ魔法でしか使えないのが欠点か。 狼煙も使われているし。 あるのは嬉しいが。
「閣下、何を?」
「気を付けろ。 いつ撃つか私にもわからなくなったからな」
漢数字面倒になったので今回からアラビア数字化します




