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カノンとイビーが泊まるのは3日間。
ベッドは三人で寝るにはキツいかもしれないがあたしの部屋のベッドを使えばいいかと思っていたらシスに呼ばれて2階の奥に案内された。
「ここは?」
2階はあたしの部屋以外にも部屋はいくつかあるけどその殆どが物置になっている。
だから案内された部屋も物置なんだろうと思っていたが違った。
「ここは父さんと母さんが使っていた部屋なんだ」
「おじいちゃんとおばあちゃんの部屋?」
そういえばしばらくここで暮らしてたけど、おじいちゃんとおばあちゃんの話って聞いたことない。
そう思ってシスの顔を見上げていると察したのかシスは苦笑しながら教えてくれた。
「今は2人共別の場所で暮らしてるんだ。ても、アリシアのことは手紙を送ったからその内様子を見に来ると思うよ」
「そうなんだ」
知らなかった。いつの間に。
あたしがシスを避けていた間にでもしたんだろうか?
2人が泊まりに来ることが決まってから自然と会話が増えた。
2人のお陰って気持ちもあるし、でも、ちゃんとあの時のことは話しておいた方がいいんじゃないかって気持ちはあるけど、まだ上手く切り出せてはいない。
「それで、この部屋のベッドは大きいから泊まりの日はここ使おうかと思って」
「いいの?」
「うん。でも、掃除はしてなかったから今日はここの掃除をしよう」
中は薄暗いと思ったらカーテンが掛かっていた。
シスがカーテンを開けている間にホウキとチリチリを持ってきた。
ハタキとか雑巾も持ってこなくちゃ。
「わっ!」
そう思って部屋の中に入るとカーテンが開けられて窓を開いているところだった。
部屋には埃よけの布が家具に掛けられていたが結構広い。
大きいベッドが壁の真ん中辺りにあり、入ってすぐ横には大きめのクローゼット。
それとソファーとテーブルまであってまだゆとりがある。この部屋も少しだけ物置状態になっているけど、他の部屋と比べたら断然荷物は少ない。
というか、2階建てのそこそこ広い家なのにあちこちに荷物が有りすぎな気がする。
今はあたしがいるとはいえ、ちょっと前まではシスだけだったのだから。
そして、この部屋ずっと閉めきっていたからか少しカビ臭い気もする。
これは掃除するの大変かな? 時間があったら他の部屋も掃除した方がいいんじゃないかな? 今度言ってみようかな。
開け放たれた窓の外からは通りがよく見える。あたしの部屋の方は庭とか近所の家が見えるから思わず眺めてしまった。
「とりあえず埃よけの布外すからアリシアは一回外に出て」
シスが口元にタオルを巻いてガードするのを見て頷く。
言われるがままに部屋を出てバケツに水を入れてハタキと一緒に持ってきた。
埃よけの下からでてきたのはマカボニー色のソファーと同色のテーブル。
クローゼットの方は焦げ茶色。大きいから沢山収納できそうだと開けてみるとあたしが寝転べそうなぐらいの大きさだ。
母さんの部屋のクローゼットと違ってこちらはからっぽだ。
「シス」
「ん? こっちの埃よけの布は洗濯するから使わないでね」
「使わないわよ! それより、この部屋使わないの? こんなに広いのに」
「あー……、僕はアトリエの近くがいいからね。もしかして、姉さんの部屋よりもこっちの部屋の方がよくなっちゃった?」
「ううん。母さんの部屋がいい」
使わないのももったいないような。
でも、ここで何かしたいかって言われたら特にしたいこともないので今までどおりでいいんじゃないかな。
「とりあえず高い所をハタキがけするからアリシアは布類を洗い場に持ってって」
「はーい」
あたしも何かしたいけど上から埃落とすから今は居ない方がいいって言われてしまえば圧倒的に身長の足りないあたしは邪魔になる。
ハタキがけが終わるまで何かしていようか。
そんなことを考えながら洗い場まで行く。
洗い場は1階のキッチンの近くにある。お風呂場もこっち。水回りは一ヶ所に集めてあるみたい。
自分たちの服は自分で洗いましょうってなっているけどあたしの力が弱いからかすすぎが上手くいかないからそういえばシスが変わりに洗おうかと言ってくれていたっけ。
お願いした方が楽なんだけど、ここに住むのなら出来るだけやりたいと言って好きにさせてもらっている。
今までが他人任せだった分やりたいのよ。
布を持って来た時に服に埃がついちゃったけど、この後も掃除が待っているのなら着替えてもまた埃まみれになりそう。
というか、どれくらいあの部屋入ってなかったんだろ。
母さんの部屋はあそこまで埃はなかったような?
そう思いながら2階に戻るとようやくハタキがけ半分ぐらい終わったと言う。
「ハタキがけ終わった方からホウキお願いするよ」
「はーい」
やっとあたしの出番だ。
「けほっ」
ホウキを持って掃くとすごい埃が舞い上がった。
「アリシアも布巻こうか」
「うん。げほっ……ねえ、この部屋いつから掃除してないの?」
苦笑しながらこっちに来たシスに一番気になっていたことを聞く。
「えっと、いつだったかな? 父さんと母さんが出てって以来だから……」
「やっぱいい」
「そう?」
何か恐ろしい返事が返ってきそうだから。
その後は会話もせず黙々と掃除をする。たまに虫の死骸が出てきてびっくりするけどそういった時はあたしよりもシスの方が叫んでいた。
「虫苦手なの?」
「そういう訳じゃないけどいきなり出てきたらびっくりしちゃうんだよ」
「ちょっとよく分からない」
それ以外はこれといった騒動はなく荷物はあまり置かれてなかったから思ったより早く終わった。
掃除が終わってお風呂の順番でちょっと揉めた。
揉めたって言ってもお互いに譲り合ってって感じだ。
でも、疲れてたのもあって結局あたしシスの順番で入って今は休憩中。
午前中に作ったミントアイスティーを2人で飲んでまったりしているところ。うっかり寝ちゃわないように気をつけてつけなくちゃ。
「今日の夕飯はどこかに食べに行く?」
「そうね。疲れちゃった」
夕焼けの赤い光りが窓から差し込んでいる。
もうくたくたで料理のことは考えたくないと思ってたからシスの提案にありがたく乗っからせてもらう。
どこに食べに行こうか食べたいものを言い合いながら外に出る。
夕方だからさっきよりも涼しくなっている。
「アリシア手」
「暑くない?」
「でも、はぐれたら困るから」
夕暮れ時だから沢山の人が行き交っているが、はぐれる程ではないし、もしはぐれたとしても家まで帰れるんだけどと言っても差し出された手が引っ込む様子はなく仕方なくシスの手を握った。
シスの手は大きくて握っているというか、はたから見たら引っ張らないれてるように見えたりしないか心配になってきた。
「やっぱりさ」
「この前アリシアが中々戻って来なくてもしかしたら家出したんじゃないか、それとも誘拐でもされたんじゃないかって不安になってたからついキツい口調になっちゃってたかも。ごめんね」
手を離していいか聞こうとしたらシスが何かを言い始めたので口を閉ざせばこの間のけと。
「それは……」
あたしがユスリアルと時間を忘れて冒険してたからでと説明しようとするがシスは聞く耳を持ってくれない。
「僕が養子で姉さんとは本当の家族じゃないからアリシアのことちゃんと見れてないんじゃないかとか」
「は?! 今何て?!」
養子? シスが? どういうこと?
「アリシアのことちゃんと見れてない?」
「そうじゃなくてシスが養子ってどういうこと!?」
「えっ、あ……ええっと、その……」




