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「アリシアってイビーナと喋ったの!?」
「とんな感じだった?」
「どんな感じだったって言われても……」
カノンとノアが興味津々とばかりに聞いて来るんだけど同じ通りの2人の方が詳しいんじゃないと聞けば2人共そんなことないと口々に言う。
「イビーナってかなり人見知りだし大人しいからチャンスだと思って近寄っても気付いたらどこかに隠れちゃうのよ」
「そうなんだ」
一昨日約束をした時は引っ込み思案なのかな? と思ってたけど昨日一緒
に絵を描いた時は2人が言うよりは酷くはなかったような?
今日はイビーは参加してないのか朝は姿を見かけなかった。
なのでイビーの変わりじゃないけど今日は2人と一緒に描いている。
あたしは通りから見える森をカノンは通りの風景でノアは近くの家の庭をここから描いている。
「んー引っ込み思案なのかなとは思ったけど聞いたら返事してくれたり、色々話を振ってくれたよ。最近読んでる本が面白いんだって。今度貸してくれるって言ってた」
「本が趣味なのかな?」
「どんなジャンルが好きとか分かる?」
「え? 何で?」
「そりゃもちろん僕たちだって仲良くなりたいからだよ」
「この通りの子たちって同じ寄宿学校だしシス先生に絵を習っているでしょ」
「大きくなってからも通りから出てかない人も多いんだけど一番の理由は」
「理由は?」
「「イビーナと仲良くなりたいから」」
声を揃えてきっぱりと言い切る2人に呆気に取られる。
「だからアリシアが仲いいんだったら僕たちとイビーナの仲とりもって欲しいんだ」
「えぇ、でも、あたしこの通りに来たばっかりだし……」
「大丈夫。家族以外イビーナから声掛けたのってアリシアぐらいだから」
そんなこと言われても……。というか、イビーだってもうちょっと喋ってるはずでしょ。
「ね、お願いよアリシア!!」
「そう言われても……」
イビーのことだからあたしが勝手に決める訳にはいかない。
そう言ったらイビーに話をしてきて欲しいとお願いされて見送られてしまったが、あたしイビーの家知らない。
イビーの家を探しに行ってもいいけど、一回戻る? それともどこかで時間を潰して会えなかったとでも言えばいいかな。
悩みながら歩いているといつの間にかお墓に行く方の路地に入ってしまっていることに気づいた。
「あ、戻らないと……」
「おい」
このまま歩いて行ってあの長い坂道を歩くのは嫌だと思って引き返そうと振り向くと声を掛けられた。
「?」
「見たことない奴だな。どこから来たんだ」
どこから声がするんだろとキョロキョロしているともう一度声が掛かった。
「どこ見てんだ。こっちだ」
「あ」
坂道の途中に細い路地がさらにあった。
声の主はそこにいるらしいと気付いてその路地をそっと覗き込む。
褐色の肌に銀色の髪に赤い瞳。あたしと同い年か少し上ぐらいの男の子だ。
シスの絵画教室で見たことないし、肌の色もこの辺りの人と違う。
移民か観光で来た子なのかもしれない。
「あたしはアリシア」
「そうか、俺はユスリアルだ」
「ユスリアルね。ユスリアルはどうしてこんなところに居るの?」
この路地は家と家の隙間、お店の裏側があるような細い道だ。
わざわざ入ってみようとは思わないような場所なんだけど。
「俺は数ヶ月前に父の仕事の都合でこの辺りに引っ越して来た」
「あらそうなの。あたしはちょっと前にここに移り住んだばかりよ」
ライアのパーティーの時にこの子の名前は聞かなかったけど通りの子ではないのかな?
「なるほど。じゃあ、行くぞ」
「行くぞってどこに」
いきなり腕を掴まれてそのまま細い路地へと連れてかれそうになって慌てる。
「こういう細い路地見るとわくわくしないか?」
「は?」
わくわく? 何を言ってるんだ?
意味が分からずにユスリアルの顔を見るが彼の顔は至って真面目そうだ。
だけどあたしはユスリアルじゃないから彼の言いたいことなんてさっぱり分かる訳がない。
どういうことだと睨むもなんのそのあたしの腕を掴んだままずんずん路地へと入って行く。
「ちょ、ちょっと!」
「何だ?」
「あたし用事があるんだけど!!」
「それは急ぎか?」
急ぎかと言われるとそうでもない。だけどこのまま路地に入って迷子にでもなったら嫌だ。
「そうよ」
「それならばさっさと済ませよう」
「はっ?!」
ユスリアルはあたしの腕を掴んだまま今度は路地から出て来た。
「どうした? 用事があるのじゃなかったか?」
「いやいやいやいや着いて来るつもり?」
「当たり前じゃないか」
まさかの返事に開いた口が塞がらない。
イビーのところに連れて行く? イビーは人見知りでしょ。
「さあ、どこに行くんだ?」
「えぇ……」
どうしてこんなにぐいぐいくるのよ!
その後も説得して諦めさせようとしたがユスリアルは一歩も引かずこちらが折れるはめになった。




