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 今日は母さんのお墓参りに行く日だ。


 天気がいいからピクニックしようかって話になってその準備をしている。


 ライアのためのパーティーが終わってからライアの家に通ったりこっちに来てもらったりしながら教えてもらっているのでサンドイッチぐらいなら多少崩れたものの作れた。


 サンドイッチはシスが用意してくれたバスケットにこれ以上潰れないように詰め込んで外に出る。


「アリシアー! 帽子忘れているよ!」

「あ、ありがとう」


 シスにもらった母さんの帽子を忘れるところだった。


 シスが家の鍵を閉めるのを待って2人揃って歩き出す。


「いい天気でよかったね」

「そうね」


 さりげなくシスはバスケットを持ってくれたのはいいんだけど。


 ちらりとシスの空いている方の手を見る。


 父さんの手は固くてゴツゴツした感じだったけど、シスの手は指が長くて綺麗。この指なら楽器とかやっててもおかしくはなさそう。


「どうかした?」

「ううん、手繋ぎたいなって思って」

「ああ」


 じっと見てたから気付かれてしまい思わずそんなことを言ってしまったが、これはこれで嬉しいからいいっか。


 シスの手は少しひんやりとしていたが、あたしの手よりも大きいからあたしの手がすっぽりとはまってしまったみたいでなんだかくすぐったい気持ちになった。


「あたし父さんとも手は繋いだことなかったけど、これは案外いいものなのね」

「これから沢山手を繋ごっか」

「いいわね」


 時々エペンス通りの人たちに声を掛けられたり声を掛けたりしながら目的地に向かう。


 母さんのお墓はエペンス通りにある路地の1つを曲がりゆるやかな階段を登り続けた突き当たりにあった。


「この辺じゃ昔からお墓はこの高台にあるんだ。姉さんのお墓はあそこ。街がよく見えるだろ」

「うん」


 死んでからも死者が寂しくないように街が一望出来る場所にしたのだろうか?


 それにしてもあの階段かなり長かった。


 シスはゼーハー言ってるし、あたしも少し息が上がってしまった。


 シスの息が整うのを待って母さんのお墓に行く。


 お墓を見たら何かこみ上げてくるものがあるかもと思っていたが特に何もなく普通のお墓だ。墓石には母さんの名前も掘ってある。


「姉さんはこの国を離れていた間のことはあんまり教えてくれなかったけど、いつだったかアリシアを産んだ時のことを教えてくれたんだ」


 墓石に刻まれた母さんの名前をじっと見つめていたらぽつりぽつりとシスが話し出した。


 シスが話す母さんの話はシスが小さかった頃に時たま友達を連れてきたり、絵本を読んでくれたってものばっかりだったような。あ、でも、一番話すのは小さい時からシスが絵を描くと褒めてくれてシスはそれで絵描きを目指したって話だけどね。


「アリシアは小さくて可愛くてずっと見ていたくなったけど、アリシアのお父さんは生まれたばかりのアリシアや産後で疲れていた姉さんよりも仕事ばっかで録に話もしようともしなくてそんな義兄さんに嫌気がさしてアリシアを置いて逃げちゃったって」

「……それあたしに言っていいの?」


 なんか段々と話があまり聞きたくないような感じになってきたんだけど。


「いいんじゃない? 姉さんはあの時のこと後悔してるみたいだったし、アリシアも知っといた方がいいかなって。姉さんは自分のことをあんまり教えてくれない人だったけどアリシア置いてったことを僕に言うってことはいつか僕がアリシアに会った時に伝えて欲しいってことだと思うよ」

「そうなの」


 もう一度母さんのお墓を見る。


 さっきと同じなんだけどシスの話を聞いてからだと何かが違う気がする。


 それは上手く言葉に出来なくてもどかしいけど、いつか上手く言葉に出来る日が来るといいな。


 そうして母さんのお墓を後にして今度はピクニックだ。


 お墓の途中の階段で休憩しながらでもって言ったんだけど、シスはいい場所があると言ってどこかへと向かっている。段々と木が増えている。森に入るのかな?


 この辺のことはエペンス通りぐらいしか知らないのでシスにお任せするけど、あんなにゼーハー言っていたのにもう30分以上歩いている。


 いつもは家の中に籠って絵を描いてるから明日は筋肉痛になるんじゃないの? 大丈夫なの? とハラハラと見守っているとシスが「着いた」と言った。


「わっ!」

「ここは姉さんと僕のお気に入りの場所なんだ」


 森の中にあるぽっかりと開けた場所には花が咲き乱れている場所があった。


「ここはあんまり人が来ないから気分転換にはもってこいなんだよね」


 そう言うとシスはスケッチブックを取り出してさらさらとスケッチし始めた。


 あたしはどうしようか。


 お昼を食べるにはまだ早いし、この辺の探索でもする? 


 ちらりと咲き乱れてる花を見る花を摘んで喜ぶような性格でもないしそうしよっかな。


「シスあたしこの辺り探索してくる」

「あんまり遠くに行かないようにね」

「もちろん」


 シスが視界から外れないようにして動けばいいでしょ。


 それにしてもあたしの母さんがますます分からなくなりそう。


 シスたちの話では奔放な人だったというのにこういった静かな場所も好んでいたとか。


 シスに聞いてもいいけど母さんについて思いを馳せる時間も結構好きだからもう少し色々考えたい。


「っと」


 危ない。考えごとしてたらシスの姿見失うところだった。


 その後はシスのところに戻って絵を描くシスを眺めたり暇だしお花を摘んでみようかと思ったらシスが花冠の作り方を教えてくれてつい夢中になってしまい気付けばあっという間に夕方になってしまった。


「あ、もうこんな時間か。どっかで食べてく?」


 そう言うシスの頭にはあたしが作った花冠が


「そうね。お昼はサンドイッチだったから夜は豪勢な物が食べたい」


 返事をするあたしの頭にはシスが作った花冠が乗っかっている。


 あたしが作った花冠はところどころ茎が飛び出してかなり不恰好だけどシスが作った花冠は茎が全く飛び出さないのは一体なんでなんだろってぐらい綺麗で次があればもっと綺麗な物を作りたい。


 行きとは違い帰りはどちらから言わなくても手を繋いで歩く。


「今日は楽しかった?」

「そうね。ここじゃなくてもいいからまたどこかに遊びに行きたいかも」

「いいね。今度は海とか」

「海? 近くに海なんかあったっけ?」

「海だと旅行になるね。でも、新鮮な魚介類もきっとおいしいから楽しい旅になると思うよ」

「海以外だと?」

「えっと、芸術の都のウィンチェルとか……あ、観光都市のバルヴェルとかもいいな。アリシアは?」

「そうね……」


 シスが上げたのはこの国の人じゃなくてもわりと有名な観光地だ。


 そういった観光地でもよさそうだけど、静かなところでゆっくりとするのもよさそう。


「あたしはシスと一緒ならどこでも楽しそう」

「それは、嬉しいことを言ってくれるね。今日の夕方はお高いところにしないと」

「ふふ、楽しみだわ」 

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