第97話:スズメと駄犬!灼熱のトレードなんですけどぉ!
灼熱のドラグリア・インフェルノに、再び小さな影が降り立った。
チュンペーはあまりの熱気に羽を焦がされそうになり、シナシナ状態になりつつも、楽しげな馬鹿どもの声が響く方へと飛んでいく。
「ワンワン!」「グハハハ!」
見れば、グラディアスがブン投げたマグマの球を、ルクレシアは自慢の尻尾でいとも容易く打ち返していた。
そして、その口元にはしっかりと、星凛愛のネイルチップが入った小瓶が咥えられている。
「……フン、完全にマグマキャッチボールに夢中だな。隙だらけだ」
チュンペーは鋭く目を細めた。
しかし、今の雀の体で力づくで奪い取るのは不可能に近い。キラキラ好きなあの駄犬を釣るには、別のキラキラを差し出すしかないのだ。
チュンペーの視線が、自身の首元に落ちる。そこには、凛愛から無理やりプレゼントされた、ハートのチャームが結び付けられていた。
「バカ人間め、このチャーム……致し方あるまい」
忌々しいが、やるしかない。
凛愛の窮地を救い、あのカオス教室の爆発を防ぐには、これしか手がなかった。
「おい、そこの駄犬! もっと良いものをくれてやる、それをよこせ!」
チュンペーは心の中で毒づきながら、マグマ球が飛び交う戦場へ弾丸のように急降下した。
ハートのチャームを翻し、素早く駄犬の口からネイルチップを入れ替える、命懸けのトレード作戦が幕を開けた。
マグマが飛び交う灼熱の戦場へ、チュンペーは意を決して割って入った。
しかし、ドラグリア・インフェルノの凄まじい暑さと、予想以上に素早いルクレシアの動きは、小さな雀の狙いを大きく狂わせていく。
「くっ、この暑さは……やはり堪えるな……」
元魔王のプライドで耐えようとするが、雀の体には限界がある。
ルクレシアが激しく跳ね返したマグマ球の風圧が、チュンペーの羽の制御を鈍らせた。
不運なことに、次のマグマ球がすぐ目の前まで迫ってきている。
「いかん! 避けきれん!」
チチチッ! と、灼熱の空気の中に雀の悲痛な叫びが響き渡った。
万事休すかと思われたその瞬間、シュン! と鋭い風切り音が轟く。
チュンペーが衝突の衝撃に備えて目を瞑り、再び恐る恐る目を開けると、視界を遮っていたのはルクレシアの手の甲だった。
マグマの熱球は、彼女の手によって寸前で叩き落とされていた。
「ダメだぞ! チュン、危ないワン!」
ルクレシアは、口からネイルチップの小瓶をぽろりと落としながら、チュンペーを心配そうに覗き込んできた。
「なんだー? ルクレシア! どーしたー?」
遠くからグラディアスが不思議そうに声をかけ、マグマのキャッチボールの手を止める。
ルクレシアはチュンペーを手のひらに乗せると、遠くのグラディアスへ向かって元気に叫び返した。
「チュンが危なかったから助けたのワン!」
ルクレシアにしてみれば、ただ小さな小鳥を助けただけなのだろう。
しかし、助けられた当の本人は、手のひらの上で激しい屈辱と衝撃に震えていた。
「くっ! まさか……この我が、このような駄犬に命を救われるとは……」
チュンペーはガタガタと震えながら、己の無力さを呪った。
だが、その足元には、ルクレシアの口から転がり落ちたあのネイルチップの小瓶がある。
怪我の功名か、ハートのチャームを失うことなく、最大の目的であるブツが目の前に転がってきたのだった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・限界チクチク継続中: 教室でティアリスの機嫌を必死に繋ぎ止めているが、そろそろネタが尽きかけている。
・生存祈願: チュンペーが戻ってくることだけを信じて、冷や汗を流し続けている。
・相棒:
・プライド崩壊雀: 目的のネイルチップは目の前だが、ルクレシアに助けられたショックで精神的ダメージ大。
・周囲の状況:
・炎獄領域: グラディアスが「なんだ、鳥か」と退屈そうにマグマをいじり始めている。
・教室: ティアリスがチクチクに飽き始めており、徐々に不穏な空気が戻りつつある。




