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第93話:異常な教師に生徒!腕なしジジイが褒められる魔界の常識に脳がパンク中なんですけどぉ!

 一旦、ヴァル先生の登場でその場の騒ぎは収まった。

 しかし、ネイルを途中で中断された爆弾妖精ティアリスの機嫌は、目に見えてヤバいことになっていた。


 彼女は小さな体をプルプル震わせながら、凛愛の机の端に座り込み、じーっと睨みつけている。


 その視線は「放課後になったら絶対に覚えておれ」という殺気を孕んでおり、凛愛の背中は冷や汗でびっしょりだった。


「放課後の課外授業……あたしの生存フラグ……」


 出欠をとり始めたヴァル先生が、教壇から教室内を見渡した。


「よし、セルヴァインはインフラ整備で忙しい。アザエルも、それについての会議で忙しい。共に魔界の未来を見据えた立派な心がけだな! あとは……グラディアスとルクレシアか? 二人から連絡はないな……まったく!」


(やば……モッフルちゃん、さっきチュンペーが投げたあたしのネイルチップを取りに外に飛び出して行っただけだよ…… グラディアスにいたっては、さっき堂々とサボり宣言してたし。チクっちゃう? でも、後がコワイな……やめとこ)


「ん? なんだ、リアちゃん! 何か知っていそうな顔をして!」


 ドキッ!と心臓と体も跳ね上がる。


(ウソでしょ?この先生、感よすぎだって……)


「し、しりませーん」


「そうか! まあ、いい! じゃあ授業をはじめるぞー!」


 冷や汗を拭いながら、凛愛はなんとか難を逃れたことに胸をなでおろした。

 しかし、窓の外からはまだ微かに「ワンワン!」という楽しそうな声が聞こえてくる、放課後にはあのブチギレ妖精が待っている。


 ヴァル先生は教壇に仁王立ちすると、熱血全開で授業を始めた。


「んー!と、今日は魔界と人界についての歴史だな!

 昔はな、互いに干渉しない良い距離感だったんだけどな!人界がチョッカイかけてきたんだな!あー!先生は、体使わない授業嫌いだな!頭で知るより身体で感じろ!これだよな!」


 先生はそう言うと、突然自分の上着を脱ぎ捨て、隆起した筋肉をピクピクと動かしながらポージングを決めた。


「歴史については、ネクロスの方が詳しいよな!な?

 ちょっと先生の代わりに……なんだ?ネクロス!腕無いじゃないか!」


 ネクロス・モルディーアは、欠けた肩を気にすることなく笑いながら答えた。


「ウィッヒッヒ……腕より大事な体験を認めておるのじゃ!それどころじゃないわい!儂はただ、聖光剣の『好み』について考察しておっただけじゃ……」


 ヴァル先生は目を輝かせて叫んだ。


「ほう!身体で感じろと言ったそばから実践していたのか!素晴らしいぞ!ネクロス!」


 凛愛は心の中で全力で叫んだ。


(は?腕無いんだよ……?しかも先生がそれを褒めてる……この学園、普通じゃない……ありえない……)


 そんな退屈な話の腰を折るように、ライゼル・ヴァルシェイドが冷たい声で言った。


「先生!真面目にやる気がないのなら、自習でいいんじゃないか?欠席も多いしな」


 ヴァル先生は腕を組んで頷いた。


「ん?そうだな!良いぞ!ライゼルの言う通りだ!自習にしよう!」


 教室が一瞬、静まり返った。


 凛愛は机に突っ伏して小さく呟いた。


「……自習って……この教室で何すんの……?

 ティアリス様はネイルの続きを待ってるし、ジジイはこっちチラ見でメモ取ってるし、モッフルちゃんは外でワンワン出ていくし……あたし、もうこの学園の空気に慣れてきた自分が怖いんですけどぉ……」


 聖光剣アルスカイゼリオンは鞘の中でニヤニヤと震えだした。


『ククク……ワシは自習とやら大歓迎!特にミラ殿の腰つきをもう一度……!』


「ヨカッタネ…….あんたは楽しそうで……!」


 凛愛が呆れていると、更にチュンペーが髪の中で呆れた声を出した。


『……バカ人間。お前がここにいるだけで教室がカオスになる体質だな。放課後が面倒だ……自習なら丁度良い、機嫌をとりに行け』


 凛愛は机に顔を埋めたまま、魂の抜けた声で呟いた。


「はぁ……あたし、今日も生きて帰れるといいな……

 妖精かわいいのにイメージサイアク……」


 そして、カオスな自習の時間が訪れる。


 現在のステータス

 ・名前: 星凛愛ホシ・リア

 ・状態:

 ・戦々恐々: 自分の剣がネクロスの腕を消し飛ばしたことが不問に付され、魔界の価値観に付いていけていない。

 ・困惑: 腕がなくても平然としているネクロスと、それを褒めるヴァル先生のやり取りにドン引き中。

 ・相棒チュンペー

 ・沈黙の元魔王: ヴァル先生の適当な授業と、ライゼルの正論、そしてネクロスの異常性を黙って見守っている。

 ・聖光剣アルスカイゼリオン:

 ・不遜な剣: ネクロスの腕を炭にしたことも意に介さず、依然としてミラの腰つきを思い出してニヤついている。

 ・周囲の状況:

 ・教室: ヴァル先生の放任主義とライゼルの苛立ちが混ざり合い、自習という名の嵐の前の静けさが訪れる。

 ・ネクロス: 欠損した腕よりも、聖光剣への興味が勝っているという狂気。

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