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第91話:タゲ取り完了!?キラキラネイルは爆発の合図なんですけどぉ!

 ティアリスの小さな手が、凛愛の指先を掴んで顔を近づけてくる。

 とても手のひらサイズとは思えない馬鹿力を感じた。


(あ、コレ簡単にイかれるヤツだ……)


「其方のこの、爪に付いておるキラキラ……妾の魔力とは違う、不浄ならざる輝き!これは何じゃ!?答えよ!」


「あ、これ? これはネイル……っていって、人界の女の子たちが可愛くなるタメに付けてるやつなんだけど……」


 凛愛が恐る恐る説明すると、ティアリスの瞳がこれ以上ないほどキラキラと輝き始めた。


「ネ、ネイル……? 其方、こんな素敵なものを隠し持っていたのか!妾の魔力を込めた妖精芸術に匹敵する美しさではないか!今すぐ妾にも施せ!今すぐじゃ!」


「ええっ!? 今ここで!? でもあたし、これ専用の道具がないと……」


 凛愛が困惑していると、ティアリスの表情が急激に曇り、周囲にバチバチと不穏な電撃が走り始めた。


「道具がない……? 妾の頼みが聞けぬと申すか? 妾が不細工なままでいろと!? 其方……やはり妾を馬鹿にしておるな!?」


「ひ、ひぃぃっ! 分かった! 作る! 今すぐ魔力でそれっぽいの作りますからぁ!爆発しないでぇぇ!」


 凛愛は慌ててメモリエルを起動させ、無限スクールバッグから素材を引っ張り出す。

 ティアリスの小さな爪に合わせた極小のネイルチップを即興で生成し始めた。


「……バカ人間、中々器用じゃないか?だが、気をつけろ!こいつは少しでも気に入らない色だと、その瞬間にその手を消し飛ばしかねん」


 髪の中で震えながらアドバイスを送るチュンペー。

 凛愛は脂汗を流しながら、ティアリスの機嫌を損ねない究極の「シャイニーピンク」を調色していく。


「ほら、見てティアリス様! このキラキラ感、ティアリス様のオーラにぴったりだと思わない!? マジで世界一可愛いよ、マジで!はい!ですっ!」


 必死の盛り上げに、ティアリスは頬を赤らめてそわそわしだした。


「ん……世、世界一……? 当然じゃ! 妾は世界一可愛いのじゃからな ……ふむ、褒めて遣わすぞ!」


 案外チョロい?

 ようやく地雷原を抜けたかと思ったその時、教室の入り口から冷たい声が響いた。


「放課後の課外授業、担当はティアリスだったな……人間と馴れ合いなどしている様ではな?ふん、単純バカのグラディアス然り、甘すぎるぞ!」


 ライゼルだった。


 ティアリスの肩がビクッと跳ね、またしても不機嫌な魔力が膨れ上がる。


 その騒ぎを聞いていた、ネクロス・モルディーアがゆったりと間に入ってきた。

 枯れ木のような体を影の衣で覆いながら、ウィッヒッヒと笑う。


 ネクロスは這いずるように近づき、枯れた指を突き出した。


「ほほぉ…おまえさんの爪に宿るキラキラ……死と生の狭間を象徴しておるのではないか?儂のこの枯れた指にも、永遠の輝きを……ウィッヒヒヒ……」


 凛愛は白目を剥きかけた。


「キモっ……ジジイまで!? しかも這い寄ってこないでぇぇ!!あたし、今、爆弾妖精の機嫌取りと不審者のネイル同時施術とか、命がいくつあっても足りないんですけどぉ!!」


 その時、教室の隅でぐっすりと自分の尻尾に抱きついて爆睡していたルクレシアが、騒がしさに反応してピクッと耳を動かした。


「んん〜……うるさい……」


 ルクレシアは目をこすりながらゆっくり起き上がり、自分の尻尾をぎゅっと抱きしめたまま、眠そうに周囲を見回した。


 次の瞬間——


「ワン!!ワンワン!!うるさい!!寝てるのに起こすな!!ワンワンッ!!」


 獣耳をピンと立て、尻尾をブンブン振りながら本気で怒り始めた。

 ルクレシアの寝起きは、完全に犬モードだった。


 凛愛は完全にパニック。


「シッポモッフルちゃん?起きてワンワン言ってる!!犬かよ!?カワイイんだけど!!じゃくて!

 あたし、今、妖精爆弾+ゾンビ+寝起き犬+イジメっ子のヘイト全部向いてない?誰か助けて!!このカオス教室から出してぇぇ!!」


 ティアリスはさらにキレて、

「ぬぬぅ………其方ら全員、妾の儀式を邪魔するな!!ワンワンうるさいぞルクレシア!!処されたい様じゃな!!」


 ルクレシア「ワォーン!!(怒)」


 ネクロス「ウィッヒヒ……実に生き生きとした矛盾じゃ……」


 凛愛は床に突っ伏して小さく叫んだ。


「うぁ……もう、誰かこの学園から連れ出して……完全に地獄なんですけどぉぉ!!」


 チュンペーは凛愛の髪の中から、外の惨状を冷静に……というか、もはや半分諦めたような呆れ顔で眺めながら吐き捨てた。


「……フン、まさに地獄絵図だな。バカ人間、お前の『運10』は、死なない代わりにトラブルを全部引き寄せる呪いか何かなのか? これならまだグラディアスとマグマで遊んでいた方がマシだったかもしれんな……おい、ルクレシアがこっちに来るぞ! 噛まれたくなければ、その犬にも何かキラキラしたもんでも投げとけ!」


 現在のステータス

 ・名前: 星凛愛ホシ・リア

 ・状態:

 ・カオス教室の中心: 妖精(爆弾)、ゾンビ(不審者)、犬(寝起き)、イジメっヘイトの全方位タゲ取り完了。

 ・限界突破ネイリスト: ティアリスの爪を塗りつつ、ネクロスの枯れ指をどう回避するか脳内フル回転中。

 ・現実逃避: 「シッポモッフルちゃん可愛い……」と一瞬現実を忘れかけるが、ワンワン吠えられて即座に復帰。

 ・相棒チュンペー

 ・毒舌解説雀: 危機的状況を楽しんでいる節すらある。でもしっかり凛愛の髪を掴んで振り落とされないように必死。

 ・聖光剣アルスカイゼリオン:

 ・高みの見物: 「賑やかで良いではないか! 次はその寝起きの獣娘を抱きしめてやるのが勇者の務めよ!」とクソのアドバイスを送る。

 ・周囲の状況:

 ・教室内: ティアリスの魔力粒子と、ルクレシアの咆哮、ネクロスの腐臭が混ざり合って生存圏が崩壊中。

 ・ライゼル: この惨状を見て、さらに勇者とティアリスへの評価を下げようと冷徹に観察している。

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