第88話 : 嵐の後の静寂、身体めっちゃ痛いんですけどぉ!
凛愛のオーラに満足したのか、評価が上がってすっかり上機嫌になった単純バカなグラディアスは「じゃあな〜!リア!」と、さっきまで殺す気満々だったのが嘘のように軽く手を振って去っていった。
「……いや、マジで何だったのアイツ」
張り詰めていた気を緩めた途端、あたしを包んでいた純白のオーラが霧みたいに消えていった。
それと同時に、光の塊だった聖光剣アルスカイゼリオンも、スマホの姿をしたメモリエルも、いつもの姿に元通り。
そして、最悪なことにドラグリア・インフェルノの灼熱地獄も帰ってきた。
「……あ、もう、無理……」
セリアの力を借りて限界を超えていたツケが一気に回ってきのだ。
化粧はドロドロに崩れて、全身の節々が悲鳴を上げている。
凛愛は自分の体が自分じゃないかのように重くなるのを感じながら、そのまま地面に倒れ込んだ。
視界が真っ暗になる寸前、髪の中のチュンペーが「おい、バカ人間!」って慌てて叫んでるのが聞こえた気がした。
次に目を覚ました時、凛愛の目に映ったのは冥王寮の天井だった。
ふわふわのベッドの感触が、あの硬くて熱い岩場が夢だったんじゃないかと思わせてくれる。
あたし、生きて帰ってこれたんだ……。
静まり返った冥王寮の自室で、枕の周りをせわしなくピョンピョンと跳ね回りながら暴れている影があった。
髪の中に隠れていた時とは違う、必死な様子のチュンペーである。
『やっと起きたか!』
聞き慣れたその鋭い声に、凛愛は重い瞼をゆっくりと持ち上げた。
「おはよぉ、チュンペぇ」
『その様子だと、いつものバカ人間だな。あの覚醒は、まぐれだったか……』
呆れたような、それでいてどこか安堵したような相棒の言葉に、凛愛は自分の体を確認しようとして顔をしかめた。
「んぅ……いっ!全身痛いんだけどっ!?」
視界を動かせば、ベッドの周りには空になったポーション瓶や、中身の減った軟膏の木箱が足の踏み場もないほど散乱している。
どうやら凛愛が眠っている間、チュンペーが彼女の無限スクールバッグから必死に薬を取り出し、慣れない体で手当てをしてくれていたようだった。
『まだ、動くな!チャンデルセンが、アザエルの命令とは言え、覚醒するまで静観した事お許しください、と言っていたぞ』
チュンペーが伝えた執事の言葉に、凛愛は焦熱の地獄で見た光景を思い出す。
「ホント、死ぬかと思った……でも、そのオカゲでセリアさんと繋がれたからね」
そう呟いた彼女の瞳には、かつての弱気な色ではなく、伝説の勇者から託された確かな意思が静かに宿っていた。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・全身筋肉痛: 慣れない勇者ムーブの代償。指一本動かすのも一苦労。
・ポーション漬け: チュンペーの献身的な(?)手当てにより、全身から薬草の匂いがする。
・悟りモード: 死線を越えて、セリアさんとの繋がりを実感中。
・相棒:
・お疲れ様雀: 薬の瓶を開けるのに苦労したのか、羽が少し乱れているが態度は相変わらずデカい。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・沈黙: 主の体力を気遣ってか、今は静かに枕元に置かれている。
・周囲の状況:
・冥王寮・自室: ポーションの空き瓶だらけで、まるでお店を開けそうな惨状。
・アザエルの命令: 裏で糸を引いていた冥王の意図が、少しずつ見え隠れし始めている。




