第79話 : 濃すぎるクラスメイトと、揺れるモフモフの誘惑なんですけどっ!
「セルヴァイン・アーベルーナ。七大貴族アーベルーナ家、次期当主だ。我が一族は魔界をより良い魔導で導くのが役目……よろしく頼むよ」
冷静で知的な、どこか浮世離れした雰囲気の少年が名乗る。
(この人が……ピンクの雪降らせてたヤツかな……エルドリンさんと気が合いそうだなぁ)
さらに、その隣からしわがれた、しかし重みのある声が響く。
「儂ゃあ、ネクロス・モルディーア。七大貴族モルディーア家の当主じゃ……人間よ、珍しいものが見られると、たのしみにしておったぞぉ……ウィッヒヒ」
(えっ!? おじいちゃんおるじゃん! 冥王クラスって年齢制限ないの? 杖ついてるし、なんかすごい秘術とか使いそう……)
凛愛が驚きを隠せずにいると、今度は元気よく椅子を身の丈程ある尻尾で鳴らして立ち上がった者がいた。
「ワンは、ルクレシア・フェン・リンヴル! 七大貴族リンヴル家、次期当主よ! あたしは強い奴が好きだから、あんたが、どれだけヤれるか楽しみにしてるワン!」
尻尾をブンブン振り回して凛愛に興味深々だ。
(うわぁぁぁ! ケモミミシッポモッフルちゃんだぁぁ!! 触りたい、あのシッポ絶対ふわふわじゃん! あのシッポは反則級の可愛さなんですけどぉ……!)
次々と現れる、魔界を背負って立つ個性豊かな「次期当主」たちのパレードに、凛愛の脳内は処理落ち寸前。
「……なんか、キャラ濃すぎて胃もたれする……これ、本当に同じクラスなの? 全員が主役級なんですけど……」
『チチッ! 当たり前だ。七大貴族の跡取りがこれほど集まることなど、平時ではありえん。貴様の存在がそれだけ異例だということだ』
チュンペーが呆れたように鳴くが、凛愛はすでに「怖さ」を通り越して、どこか別の次元へ飛び始めていた。
「……キャラ濃すぎ、っていうか、もう画力が強すぎて画面酔いしそう……」
凛愛は、豪華な教室を見渡しながら、そっと自分の胸元を押さえた。
知的な魔導師、不気味な笑みの老人、そして――。
豪快に振られたルクレシアの尻尾が、バシッ、バシッ! と周囲の空気を切り裂く。
その破壊力満点な音とは裏腹に、凛愛の視線は吸い寄せられるようにその「毛並み」に固定されていた。
(めっちゃ、シッポ振ってるやん……振れるたびに空気が柔らかそうに動いてる……あの密度、絶対高級なファーより気持ちいいやつじゃん! 触りたい……抱きつきたい……!)
人見知りの恐怖心よりも、オタク気質な「カワイイ物好き」のセンサーが完全に振り切れている。
『バカ人間、よだれを拭け。彼奴はリンヴル家の次期当主、つまり魔獣の頂点に立つ一族だぞ。安易に触れれば、その腕ごと持っていかれるのが関の山だ』
「え、そうなの? チュンペー、詳しいね……」
『……フン、魔界の勢力図くらい、頭の中に入っているわ。特にあの一族は、純粋な実力至上主義だ。貴様のような人間は、本来なら見向きもされんはずだが……』
チュンペーの言葉通り、ルクレシアの瞳は好奇心と「獲物を見定める鋭さ」で爛々と輝いている。
すると、今まで静観していたヴァル先生が、熱気をさらに一段階上げて叫んだ。
「よぉーし! これで全員の顔は合わせたな! リアちゃん、これで今日からお前も冥王クラスの立派な一員だッ!!」
「え、あ、はい……(できればもっと端っこの、目立たない席がいいんですけど……)」
「お前の席はあそこだ! グラディアスとライゼルの間、ド真ん中だぜ!!」
ヴァル先生が指差した場所。そこは、凶暴な竜族と、人間を憎む堕天族に挟まれた、まさに「地獄のVIP席」だった。
「……無理。詰んだ。あたしの学園生活、一話目にして最終回なんですけどぉ……!」
凛愛の絶望を余所に、物語は容赦なく進んでいく。
現在のステータス
・名前:星凛愛
・レベル:17
・力:4
・体力:4
・素早さ:18
・知力:12
・魔力:19
・運:10
・状態:指定席へ移動(絶望中)
・状況:七大貴族の次期当主たちに囲まれ、精神的デバフが限界。
・精神状態:シッポ……モフモフ……それだけを心の支えに、この魔境を生き抜くしかない……




