第73話:聖光剣覚醒! あたしの逆転劇、始まっちゃう感じ!?
魔族キラーの聖光剣が放つ神聖な輝きが、一瞬にして会場を凍てつかせた。
嘲笑っていた貴族たちは、本能的な恐怖に喉を鳴らし、ガタガタと震えだす。
「勇者よ、言ったであろう。ワシを握る限り魔族などに指一本触れさせぬ、と」
鞘の中から響く声には、伝説の遺物としての圧倒的な威厳が宿っていた。
「か、かっこいい……エロ剣、マジで主人公補正きたこれ!」
凛愛が、涙目になりながらその温かい柄をギュッと握り直す。
「んん〜! 良いぞ! その締ま……いや、握り! さぁ、ワシを抜き、その威光を示すのだ!」
「よっしゃー! 抜剣しちゃうよぉぉ!」
凛愛がアルスカイゼリオンを一気に引き抜くと、まばゆい黄金の光が爆発的に広がり、会場全体を震えあがらせた。
重装の剣士はガシャガシャと音を立ててその場に膝を突き、完全に戦意を喪失している。だが、その光を浴びたアザエルの反応は、他の魔族とは全く異なるものだった。
「ク……ククク、ハハハハ!」
アザエルが玉座から立ち上がり、狂おしいほどの笑い声を上げた。
その瞳には、五百年前、自分を無力化して立ち去ったセリアへの屈辱ではなく、ギラついた歓喜が宿っている。
「ついに……ついに、この時が来た! あの女の遺した忌々しい光……それを私の目の前で、兄上の選んだ人間が掲げるとは!」
アザエルは身を乗り出し、獲物を見つけた獣のような視線を凛愛に投げかける。
「兄上、これは冗談などではない……最高の捧げ物だ! この光を、私の積み上げた五百年の努力で塗り潰す。それこそが、あの女への、そして兄上への私の答えとなるのだから!」
アザエルの放つ凍てつくような魔力が、黄金の光と衝突して火花を散らす。
チュンペーは凛愛の髪の中で、弟のあまりの執念に身を震わせた。
それは和平を望んだあの日にはなかった、純粋で苛烈な闘争心だった。
「え、ちょっ待って……アザエルさんの目ぇバッキバキ!!やる気スイッチ全開なんですけどぉ!」
知力12の凛愛は、アザエルの狂気じみた喜びを前に、掲げた剣が急に重くなったように感じた。
「なんかアザエルさんの目がマジ……なんだケド?」
ドン引きする貴族達の静寂の中、一人高笑いするアザエル。
その狂気じみた笑みは、広大な闘技場に冷たく響き渡り、観客席の魔族たちは言葉を失って顔を見合わせていた。
戦闘適性値45を遥かに超えただけでなく、悲しみに暮れていたアザエルが見せた狂気の笑み、セバスチャンデルセンは確信する。
これ以上の試験の必要性は無いと。
伝説の遺物の力を引き出し、魔王の魂をこれほどまでに揺さぶった事実は、数値以上の意味を持っていた。
「では、アザエル様……」
セバスチャンデルセンの問いかけに、アザエルは深紅の瞳をぎらつかせながら答えた。
「無論だ! この者を、魔界最高学府への正式な特別枠として迎えよう!!」
それは合格の宣言であったが、同時に逃れられない運命への招待状でもあった。
チュンペーは、500年前の因縁を再燃させてしまった凛愛の髪の中で、重苦しく告げる。
『……バカ人間、よく聞け。今のあいつの目は、ただの試験官の目ではない。アザエルは話し合いだけでは済まないだろう。お前が掲げたその光が、あいつの500年の執念の火に油を注いでしまったのだ』
凛愛は、さっきまでの冷徹な魔王と、今の狂気的な喜びを剥き出しにするアザエルのギャップにビビりまくっていた。
「え、なに今のテンション……マジで、ヤバくない?あたし、もしかして一番開けちゃいけなパンドラの箱開けちゃった感じ?」
そんな中、脳内のメモリエルが淡々とエロ剣を褒める。
「ひとまず危機は脱しました。アルスカイゼリオン、まだあの日の威光は衰えていませんね。素晴らしい出力でした」
「舐めるで無い! この勇者の握りは、ワシの柄に実に馴染むでな! あんなのは序の口よ! 勇者よ、もっとワシを愛でるがよいぞ、ぐふふっ!」
「その笑い!キモいんだよっ!!さっきの台無しじゃん…」
凛愛は全身の力が抜けたように、その場にヘタリ込んだ。
「はぁ……とりま、入学決まった……疲れた、あたし……」
大きくため息をついて顔を上げると、いつの間にか観客席の貴族たちはアザエルと共に姿を消していた。
気づけば、会場はセバスチャンデルセン以外居なくなっていた。
「では、リア様、改めて、おめでとうございます。魔界学園での生活が、あなたにとって……忘れがたいものになることをお祈りいたします」
セバスの慇懃な一礼が、これから始まる怒涛の学園生活の幕開けを告げていた。
現在のステータス
• 名前:星凛愛
• レベル:17
• 力:4
• 体力:4
• 素早さ:18
• 知力:12
• 魔力:19
• 運:10
• スキル:魔力感知、逃走の極意
• 状態:魔界学園・正式合格(特別枠)
• 状況:アザエルの狂気を引き出しつつ、なんとか入学を勝ち取る。
• 精神状態:合格したのに、全然お祝いムードじゃないんですけどぉ! むしろ命の危険が増した気がするのは気のせい!?




