第72話 : セバスチャンデルセンの残酷な解説なんですけどぉ!
「第二試練『戦闘適性試験』に移ります。
魔界の学園では、魔力だけでなく実戦での適性も重要です。最低基準は戦闘適性値45以上……特別枠であっても、これを下回れば即不合格となります」
「リア様、混乱されているようなので補足いたします。戦闘適性値45とは、魔界における下級兵士の精鋭、あるいは中級の魔獣を単独で討伐できる最低限の武力を指します」
セバスは手元の魔導書をめくりながら続けた。
「魔界の学園に入学する若き魔族たちは、幼少期から殺し合いに近い訓練を積み、この数値を叩き出します。ちなみに、一般的な人間の成人男性の平均値は3から5……力4、体力4の凛愛様が45という壁に挑むのは、蟻がドラゴンに相撲を挑むようなものでございます」
「いや……例えエグ過ぎんですけどぉ!! 蟻って! あたし、せめて猫とかにしてよ!」
チュンペーが凛愛の髪の中から、呆れたように口を出す。
『フン。このバカ人間は勉強も嫌い、痛いのも嫌い、おまけに運動神経も期待できんからな。だが、魔界は実力至上主義だ。45という数値は、この過酷な魔界で死なずに放課後を過ごすための、いわば安全基準なのだぞ』
「……は?放課後過ごすだけで死ぬとか、魔界の校則ブラックすぎない!? あたし、普通に放課後はゲーセンとかプリ撮りに行きたいんですけどぉ!!」
メモリエルが脳内で数値を弾き出す。
「補足します。星凛愛の現在の実測値は、力・体力・素早さの総合評価から算出すると、約6.5です。合格基準45に対して、約38.5不足しています……正直に申し上げまして、真っ当に戦って勝てる確率は0.0001%以下です」
「0.0001!? ガチャのSSR当てるより低い!! 運営さん、このゲーム難易度設定ミスってませんかぁ!?バカじゃん!」
エロ剣が鞘の中で、下卑た笑い声を漏らす。
『ククク……案ずるな勇者よ。数値など、ワシが汝の体に魔力を流し込み、無理やり底上げしてやればよい。ただし……汝の体が拙者の激しい魔力に耐えられるかどうかは……ぐふふ!』
「ぐふふ!じゃねー!このエロバカ!!結局、力技で解決するしかなの!? あたし、戦闘も勉強もマジでやりたくないんですけどぉ!!」
凛愛は頭を抱えて叫んだが、目の前の訓練兵は容赦なく、その巨大な拳を振り下ろそうとしていた。
45という絶望的な壁。
知力12の凛愛が、この「無理ゲー」をどう攻略するのか……それとも、持ち前の運10が奇跡を起こすのか!?
セバスが無情な合図を出すと、闘技場に巨大な鉄の塊が足を踏み入れた。
場内に重装の剣士が入ってくる。
全身を黒ずんだ厚い鉄甲冑で固め、手には凛愛の背丈ほどもある大剣を携えている。
ガクブル凛愛が、一瞬でヤバいと感じる。
「ちょっと! 訓練兵って言ったじゃん! これ、どっからどう見ても中ボス級のグラフィック!!」
ガッシャンガッシャンと重厚な音を立てながら、剣士はジリジリと距離を詰めてくる。その一歩ごとに、闘技場の床が小さく震えた。
「あわわ……どーすんの!? モリエ! 魔法よ! 全魔法ぶつけんのよぉ〜!」
「了解しました。四属性基本魔法、同時起動。全魔力を投下します」
メモリエルの制御により、凛愛の手の先から火、水、風、土の魔弾が放たれた。だが、それは花火のように虚しく剣士の鎧に当たって散るだけだった。
魔力19のショボさが、魔界の魔導処理を施された鎧に無慈悲に弾かれてしまう。
アザエルが玉座から、氷のように冷たい声で言い放った。
「……その程度の魔力では、魔界の赤子すら傷つけることはできないよ? 兄上の目は、これほどまでに曇ってしまったのか」
会場の貴族たちからも、隠しきれない失笑が漏れ聞こえてくる。
「くっそー! 無理ゲー過ぎんだよっ! 運営、難易度調整の仕事しろー!!」
凛愛が半泣きで毒づいた瞬間、重装剣士が動いた。
巨体に似合わぬ速度で踏み込み、剣士の刃が鋭く光り、凛愛目掛けて真っ直ぐ突きをはなつ!
『勇者よ、ワシを握れ! 本気で握らぬかぁ!』
エロ剣がかつてないほど激しく、金色に輝きながら叫んだ。
「あー!ちくしょー!終わったぁー!」
凛愛が泣き叫びながら、無我夢中でエロ剣の柄を両手でギュッと握りしめた。
キィィィーーーン!!!
鼓膜を突き刺すような金属音が響き渡る。
凛愛が目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
重装剣士の全力の突きが、エロ剣が放つ黄金の障壁に触れた瞬間、紙切れのように容易く弾き飛ばされていたのだ。
勢い余った相手の剣は、主人の手を離れて遥か後方の壁に深く突き刺さり、火花を散らしている。
「え!? あたし……生きてる?」
呆気に取られた凛愛は呆然と立ち尽くし、手の中で『ふぅ〜ハハハァ!』と下卑た笑い声を上げる剣を見つめた。
現在のステータス
• 名前:星凛愛
• レベル:17
• 力:4
• 体力:4
• 素早さ:18
• 知力:12
• 魔力:19
• 運:10
• スキル:魔力感知、逃走の極意
• 状態:奇跡のカウンター発動
• 状況:エロ剣を「全力で握った」ことで、伝説の遺物の真価が(変な意味で)発動。
• 精神状態:握った感触がなんか生々しくて気持ち悪いんですけどぉ! でも助かったぁ……!




