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第62話:勇者と王様と、時々、雀!そして暗躍する策謀の影なんですけどぉ!

 静まり返った謁見の間。


 凛愛は膝を震わせながらも、レオニス王の威圧感に飲まれまいと顔を上げた。

 知力12の脳内シミュレーションでは、下手に隠し事をするより、この「詰みかけている現状」を正直に話した方が生存率が高いと出ている。


「あ、あた、わたしは……この世界の人間じゃないんです……! 実は、この頭の中に隠れてる雀のクロウが元魔王で、こいつに召喚されちゃったんです!」


 凛愛が叫ぶように告げると、玉座の周囲に控えていた近衛騎士たちが一斉にざわつき、剣の柄に手をかけた。

 だが、レオニス王は手でそれを制し、じっと凛愛の髪の隙間を見つめている。


『……おい、バカ人間。よりによって余の正体をバラすとは……!』


 髪の中でチュンペーが絶望的な声を漏らしたが、凛愛は止まらない。


「で、あたし……わたしが、人間として魔界で圧倒的な力を示して、みんなに認めさせれば、この雀の呪いは解けるんです! そうすれば、わたしは元の世界に帰れるし、こいつも魔王に戻って魔界が安定するし、人界への侵攻も止まって、みんなハッピーなんです!」


 一気にまくし立てた凛愛は、はぁはぁと肩で息をついた。


 魔力13の持ち主が、魔王を召喚主として従えている(ように見える)異常な事態。

 レオニス王はしばらく沈黙を守っていたが、やがて低く笑い声を漏らした。


「……くくっ。はははは! 勇者が魔王を頭に乗せて歩き、さらには魔王の呪いを解くために魔界のトップを目指すと申すか。前代未聞、まさに御伽噺にも劣る狂言よ」


 王の笑いは冷笑ではなく、あまりの突飛さに呆れ果てたような、どこか愉快げな響きを含んでいた。


「だが、星凛愛。そなたの瞳に嘘はないな。そして、その雀から漏れ出る不吉な気配……確かに、ただの鳥ではあるまい」


 王の鋭い視線がチュンペーを貫く。チュンペーはもはや隠れるのを諦め、凛愛の髪からひょこっと顔を出して王を睨み返した。


「……そなたの目的が、魔界を滅ぼすことではなく『元の世界への帰還』であり、その手段として魔界の秩序を整えるというのであれば、余がそなたを拒む理由はなくなる」


 レオニスは玉座から立ち上がり、ゆっくりと凛愛へと歩み寄った。


「面白い。ならば証明してみせよ。勇者としての力が、単なる破壊ではなく、調和と平和をもたらすためのものであると。余は、そなたの『勇者ビジネス』とやらを、しばらくの間、静観してやろうではないか」


 レオニス王は、平伏する凛愛を冷徹な、けれどどこか見極めるような瞳で見下ろした。


「民の熱狂も相まって、今この場で勇者に対し何かをするわけにもいかぬ。だが忘れるな、星凛愛。少しでも魔界との均衡を破るような真似をすれば、その時は王として、この余が直々に引導を渡してやる。覚悟しておくことだ」


「は、はは〜っ! 了解でーす! あ、いや……承知いたしましたぁーっ!」


 凛愛は深々と頭を下げると、騎士たちの視線が刺さる中をそそくさと退散し、逃げるように王城を後にした。


 城の門をくぐり、ようやく自分たちの馬車に飛び込んだ瞬間、凛愛はシートに崩れ落ちた。


「……ま、マジで死ぬかと思った。解像度高すぎなんだよ!王城のプレッシャー……めちゃくちゃ疲れたんですけどぉ……」


『……フン。貴様の純粋バカにも程がある。魔王を頭に乗せているなどと正直に話す奴がどこにいる。肝が冷えすぎて、羽が凍りつくかと思ったぞ』


 チュンペーが凛愛の髪から這い出し、やれやれと首を振る。


「……心拍数および発汗量が異常値を示しています。精神的な疲弊が著しいようです。直ちに帰宅し、十分な休息を。甘味の摂取も推奨します」


 腰元のメモリエルが、いつもの平坦な声で凛愛の状態を案じる。一方、その隣ではアルスカイゼリオンが怪しく発光していた。


「……クククッ! 恐れおののき、瞳を潤ませる勇者……実に愛いのう! 我も興奮したぞ! あの王の威圧感に当てられた貴殿の姿、最高のご馳走であった!」


「も〜、うっさいよエロ剣……あんたの性癖につきあってる余裕ないからぁ……」


 ぐったりとする凛愛。だが、彼女たちが安堵のため息をついている頃、別の場所では全く異なる空気が流れていた。


 神殿の奥深く。


 間者から謁見の一部始終を報告させたセラフィナは、美しくも冷酷な顔を歪ませていた。


「……魔王を元の姿に戻し、自分は帰還する、だと? 勇者が魔界を滅ぼすどころか、和解の道を探るなど、我々の計画には不要な要素だ」


 セラフィナの手元にある聖典が、その魔力に当てられてミシミシと音を立てる。


 王を操り、勇者を旗印に魔界を壊滅させるはずだった思惑が、凛愛の「バカ正直な本音」によって狂い始めていた。


「……ふふ、面白いわ。ならば、その『ハッピーエンド』とやらを、絶望に塗り替えてあげなくてはね」


 闇の中で、セラフィナの赤い唇が艶やかに弧を描いた。


 現在のステータス

 • 名前:星凛愛ホシ・リア

 • レベル:17

 • 力:4

 • 体力:4

 • 素早さ:18

 • 知力:12

 • 魔力:13

 • 運:10

 • スキル:魔力感知、逃走の極意

 • 状態:精神的疲弊(最大)、セラフィナのターゲット

 • 状況:王の黙認を得たものの、セラフィナの逆鱗に触れる。

 • 精神状態:とりあえず今は寝たい。

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