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第54話:まさかの意思疎通!?罵倒と愉悦の三重奏!力が抜けて抜けないんですけどぉ!

 地下へ降り、重厚な石の扉を開けた先。

 そこには、凛とした空気を切り裂くように、一振りの白銀の剣が台座に突き立てられていた。


 あまりにも呆気なく伝説の獲物と対面した一行は、拍子抜けして肩を落とす。


「……なぁによォ!バリバリヤル気で来てんのに!アタシの斧が泣いてるわァ……」


 マルコが拍子抜けしたように呟き、ハルドも大剣を担ぎ直した。


「全くだ。罠の一つもねぇとは、カッコつかねぇぞ、こりゃ……」

 だが、その荘厳な沈黙を破ったのは、意外な「声」だった。


「勇者よ、よくぞ来た」


「……えっ? 今、誰か喋った?」


 凛愛が辺りを見渡すが、そこには自分たちとセラフィナしかいない。

 驚く一行の中で、セラフィナだけが静かに微笑んだ。


「フフ……その剣が語りかけるのは、真の勇者のみ……凛愛様、まさに貴女は、剣に選ばれし勇者なのです」


「はぁ……また喋るヤツ?勇者装備って全部しゃべる感じ……なの?」


 凛愛が恐る恐る台座へ近づくと、剣……アルスカイゼリオンは、さらに深く、響くような声で語りかけてきた。


「ムフッ、もっと近う寄れ……恐れるで無い。さあ、ワシを、その手で抜くのだ」


「……ワシ? なんか、思ってたよりおじいちゃんっぽい口調……?」


 凛愛は戸惑いながらも、覚悟を決めてその柄に手を添えた。

 レベル17。素早さに特化したしなやかな手が、ひんやりとした柄に触れる。その瞬間、剣のトーンが露骨に変わった。


「おぉ……なんと柔らかい手か。ふむ、この吸い付くような感触……悪くない」


「はっ……?」


「力は……4だな。ふむ、大分か細いが、それもまた一興。このワシを抜くには相当な時間を要するぞ……さあ、存分に、心ゆくまでワシを抜くがよい。くっくっく……」


 凛愛の背中に、嫌な汗が流れた。

 魔力感知が、剣から放たれる「期待」のような、ねっとりとした波動を捉えてしまう。


「キモ……ねぇ、モリエ。こいつ、おかしくない? なんかこう、言動が全体的にスケベな感じがするんですけどぉ!!」


「肯定します……星凛愛、私の半身から、著しく品性を欠いた波動を感じます……不快です。非常に不快です」


 モリエの声が、これまでにないほど冷徹に響く。

 隣で見守るハルドやアルメリアには、この「変態的なニュアンス」は聞こえていないようで、ただ真剣な面持ちで凛愛の挑戦を見守っている。


『……おい、バカ人間。何を固まっている。さっさと抜かんか』


「いや、チュンペー……これ、絶対抜いちゃいけないタイプのヤツだよ! 中身変態っぽいし!」


 凛愛は柄を握ったまま、引き抜くべきか、今すぐ逃走の極意でこの場を去るべきか、本気で悩み始めていた。


 聖剣の柄を握りしめ、顔を真っ赤にして踏ん張る凛愛。

 だが、その耳元はもはや聖域とは程遠いカオスに支配されていた。


「おぉ、よいぞ、よいぞ勇者よ。もっと必死にワシを締め付けよ……その指の震えがワシの刀身に伝わり、得も言われぬ恍惚を……」


「星凛愛、警告……アルスカイゼリオンの変態的思考が臨界点……非常に危険な領域。この世界の記憶から、この恥知らずな鉄塊を消去しますか?」


 嫌悪を剥き出しにするモリエの通信と、粘着質なエロ剣の囁き。

 それだけで脳内は大忙しなのに、凛愛にとっての真の天敵が、髪の中から最悪の追い打ちをかける。


『おい、この無能なバカ人間が! 貴様、それでも我の認めた器か! 剣一本抜くのにもたつき、顔を真っ赤にして……見苦しいにもほどがあるぞ、この出来損ないが!』


 チュンペーの容赦ない罵倒が、耳のすぐそばで響く。

 その瞬間、凛愛の体に奇妙な震えが走った。


「……あ……あぁ……っチュンペー……ヤバいっ」


『何をモゾモゾしておる! そのナヨナヨした腕で全力を出せ、さっさと抜け! 貴様にできるのは逃げることだけか!』


 チュンペーが、凛愛の頭上でピョンピョン暴れ回り、突きまくる。


「ちょ……ご褒美、後にして……力抜ける……って!」


 本来なら聖剣を力強く引き抜くために使われるべきエネルギーが、チュンペーの罵倒という劇薬によって、全く別の方向へと霧散していく。


「あ、ダメ……チュンペー……あたし、もう、ダメかもぉ……」


 凛愛の腰からガクンと力が抜け、柄を握る手も弱々しくなる。

 はた目には、聖剣の凄まじい反動に耐えきれず、膝をつきそうになっている悲劇的な勇者に見えている。

 ハルドが「リア! 負けるな!」と声を張り上げ、アルメリアが祈るように手を組む。


 だが、凛愛の脳内では。


「罵倒……刺さりすぎて……力が、入らないんだって……」


『何をニヤけているのだ、このバカ人間!やはり、誹りは逆効果だな…… なんともどかしい事か』


 凛愛は身悶えし、聖剣の柄に額を押し当ててプルプルと震える。


 エロ剣は「おお、なんと熱烈な愛撫か!」とさらに喜び、モリエは「……末期です。勇者まで、危険領域に……」と絶望のログを吐き出す。


 周囲の感動的な応援。

 髪の中からの苛烈な罵倒。

 それを受けて、謎の脱力感と悦びに打ち震える凛愛。

 聖剣アルスカイゼリオンは、そんなカオスな主人の様子を存分に楽しみながら、いまだ台座に深く根を下ろしたままだった。


 現在のステータス

 • 名前:星凛愛ホシ・リア

 • 状態:精神異常(錯乱・脱力)、罵倒による特殊デバフ

 • 状況:チュンペーの罵倒に身悶えし、物理的に力が抜けきっている。

 • 精神状態:もっと……もっと言ってぇ、チュンペー……(※抜く気ゼロ)

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