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第53話:聖なる場所の深淵へ!教会の地下に眠る秘密なんですけどぉ!

 聖光剣がアヴェントリアの地下にあるというモリエの言葉に、一行は戸惑いを隠せなかった。


「地下ったって、下水しかしらないわよ? アタシぁ。ネズミと泥にまみれて剣探しなんて、冗談じゃないわよォ!」


 マルコが顔をしかめて斧を担ぎ直すと、ハルドも腕を組んで唸った。


「俺もこの街は長いが、地下にそんな巨大な遺構があるなんて話は聞いたことがねえ…アルメリア、あんたはどうだ?」


「……いいえ。魔法的な隠蔽が施されているのなら、地上からは感知できないわ。でも、これだけの規模の街の真下となれば、入り口は限られるはずだけど」


 アルメリアが首を振ると、凛愛は手元のメモリエルを覗き込んだ。


「ねぇモリエ、具体的な入り口とか、どこから行けばいいか分かる?」


「ナビゲートを更新します。誘導ラインを追ってください……反応の源流は、北の魔法学院区に隣接する、聖光教会を指しています」


 モリエの淡々とした宣告に、その場の空気が一瞬で凍りついた。


「聖光教会……まさか、教会は知っていたのか……?」


 ハルドがポツリと呟いた言葉に、全員が同じ懸念を抱く。

 もし知っていて隠していたのなら、それは一筋縄ではいかない。


「勇者がいるから問題は無いにしろ、いきなり地下に入らせろとは……いかねぇよな? 相手はあの堅物揃いの司教たちだぜ」


「んっン〜…あそこはアタシの商売もなかなか通じない場所なのよねェ……リア、アンタが勇者だって言えば通してくれるかもしれないけど、騒ぎになれば面倒なことになるわ!あぁ〜ン!よりによって、暴れらんねェ場所とはねェッ!!」


 マルコの言葉に、凛愛は少しだけ身震いした。

 ギャルでゲーム大好きな自分にとって、厳格な教会は一番苦手な場所の一つだ。


「えぇー、いきなりラスボス直前のイベント会場に行くみたいなプレッシャーなんですけどぉ……でも、モリエがそこだって言うなら行くしかないよね」


 髪の中のチュンペーが、退屈そうに羽を膨らませる。


『フン、神を騙る人間どもが、かつての勇者の遺産を私物化しているというわけか。気に入らんな。バカ人間、力ずくでこじ開けてやれば良かろう』


「そんなことしたら、勇者じゃなくて指名手配犯になっちゃうから! ……よし、とにかく行ってみよう。話せばわかるかもしれないし、隠し通路的なやつがあるかもしれないしね!」


 凛愛たちは覚悟を決め、北の魔法学院区へと続く坂道を登り始めた。


 聖光教会の巨大な正門前。


 夕闇に浮かぶ白い尖塔は、神々しいはずなのにリアにとっては完全にホラー映画のセットだった。


「うわぁ……やっぱり来ちゃった……。教会の空気、めっちゃ重い……息するだけで罪悪感出そう……」


 凛愛はアルメリアの後ろにピッタリ張り付き、モリエを胸に抱えて小さくなっていた。

 マルコは巨大な魔導斧を肩に担いだまま、ドカドカと先頭を歩いている。


「ふふん、心配すんなってリア。今日はアタシが『経済統治機構』の代表として同行してんだから。教会の堅物どもが何か言ってきたら、アタシの斧で商談してやるわよォ!」


 ハルドがため息をつく。


「おいマルコ……教会の敷地内で斧振り回すなよ。俺まで指名手配犯にされそうなんだが」


 モリエの淡々とした声がスマホから流れた。


「ナビゲート更新。地下への最短ルートは、大祭壇の裏側、石板の魔力反応が強い地点です。ただし、教会側の魔力隠蔽が強力。表向きは『勇者様のご来訪』として通す必要があります。」


 その瞬間、正門がゆっくり開き、銀髪の優雅な女性が微笑みを浮かべて現れた。


 大神官セラフィナ。


「ようこそ、星凛愛様……お待ちしておりました。勇者として、この教会の象徴となる覚悟が出来ましたか?」


 セラフィナの視線が一瞬、マルコの巨大な体を捉えてわずかに細くなる。

 マルコがニヤリと笑った。


「あ〜ら、こんにちは、大神官さん。今日はアタシも一緒に来たわよォ。リアは今、『経済統治機構』の預かり中なんだから。勝手に象徴にしちゃダメよォ

 ン?」


 セラフィナの微笑みがピクリと凍りついた。


「……マルコ。貴女の商売熱心さは存じておりますが、ここは神聖なる場所です。俗世の経済など——」


「俗世?ふぅン……勇者がいなきゃ教会の寄付金だって成り立たないでしょ? 今はアタシが勇者の面倒見てんだから感謝してよね?」


 マルコが魔導斧の石突きを地面に軽く叩くと、石畳に小さな亀裂が入る。

 教会の騎士たちが一斉に剣の柄に手をかけた。

 リアが慌てて間に入る。


「ちょっ……待って待って!あたし…ただ聖光剣探しに来ただけなんですけど……象徴とか預かりとか…」


 アルメリアが静かに、しかし鋭くセラフィナに言った。


「セラフィナ。蒼の宝珠だったものが指し示すのは、ここの地下なのよ?」


 セラフィナは優雅に微笑んだまま、ゆっくりと手を振った。


「もちろん。勇者様をお連れするのですから、特別に地下の大聖堂をご案内いたしましょう……ただし、商業区の者たちはここまでです。」


「なぁんでよ?フザケんじゃあないわよォ〜!!」


 マルコが一歩踏み出すと、騎士団が一斉に槍を構える。

 その時、リアの髪の中からチュンペーがぼそりと呟いた。


『……デカいオネエと神を騙る女。面妖な奴らめ…バカ人間、お前はまた板挟みだぞ』


「あぁ……勇者ってメンドくせぇ〜……」


 凛愛の心境を知ってか知らずか、メモリエルが、いつもの落ち着いた声で勿体つけた。


「興味深い状況です。魔力隠蔽の強度……地下への反応が非常に強いですが……詳しくは中に入ってから、ゆっくりお話ししましょうか?」


「モリエ!焦らさないで、早く教えてよぉ!!教会と政治嫌いなんだから!!」


 結局、セラフィナの「特別許可」で一行は教会内へ入ることになった。


 しかし——


 大祭壇の前で、セラフィナが優しく手を差し伸べる。


「さあ、勇者様。まずは神への祈りを……勇者としてふさわしい姿をお見せください」


「え、祈り!? あたし、祈り方知らないんですけど!? どうやって!? 手をこう? それとも膝つくの!? やだ、なんか宗教的なプレッシャーすごいんですけどぉ!!」


 リアが慌てて手を合わせようとした瞬間、マルコが豪快に割り込んだ。


「祈りだァ?リアはアタシの預かりなんだから、まずは商談優先!ほら、聖光剣の情報よこせ!寄付金倍出すわよォ!」


 セラフィナの微笑みが完全に消えた。


「マルコ……ここは神の家です。金の問題ではありませんよ?」


「だったらァ…アタシの斧で交渉するわよォ!?」


 魔導斧がギラリと光る。

 ハルドが頭を抱え、アルメリアがため息をつく中、凛愛は祭壇の裏側にそっと近づき、スマホの光で石板を照らした。


「……ねえ、モリエ。ここ? なんか光ってる……」


 その瞬間、石板がカチッと音を立てて動き、隠し階段がゆっくりと開いた。


「うわっ!?開いた!?ホコリすげっ……」


 しかし階段から漂ってくる冷たい空気に、凛愛の顔が一瞬で青ざめた。


「待って……これ、めっちゃ暗い……ホラゲやん……あたし、教会地下恐怖症も追加されそうなんですけどぉ!!」


 チュンペーがため息まじりに呟く。


『……バカ人間。暗いだけでビビるな。』


 メモリエルが凛愛の状態を言った。


「星凛愛、心拍数が危険値です。深呼吸をしましょう」


「うぅ……ウザいわぁ……海とか地下とかぁ〜!!」


 セラフィナが、不適な笑みを浮かべる。


「聖光剣が勇者を誘っている様ですね……さあ、どうぞ奥へ、お進み下さい」


 現在のステータス • 名前:星凛愛ホシ・リア

 • 状況:聖光教会地下への隠し通路に潜入開始

 • パーティー:凛愛、チュンペー、モリエ、マルコ、ハルド、アルメリア

 • 精神状態:教会+暗所+政治プレッシャーで完全パニック(でもちょっと興奮)

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