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第52話:不思議な少女フィオと衝撃の座標!灯台下暗しの聖域なんですけどぉ!

 ショップの店長代理をミリナに快諾してもらい、凛愛は思わずその場でガッツポーズを決めた。


「よっしゃぁ! これで留守中も安心だし、ショップ運営もバッチリだね!」


 突然の一等地での商売に、俄然やる気を見せるミリナ。


「うん、任せて!ちゃんと、常連さん達にも宣伝しておくから!」


 ミリナとマルコたちの顔合わせも順調に終わり、準備は整った。

 けれど、アヴェントリアの門を出る前に、凛愛にはどうしても寄っておきたい場所があった。


「マルコさん、ハルドさんたちのところへ行く前に……ちょっとだけ、外縁区に寄ってもいいかな?気になる子の様子見たくて……」


「よくってよ、孤児院の建設は順調だしぃ! 現場の様子はアタシがしっかり見といてあげるから、アンタはその気になる子のところ行って来なさいな」


 一行は活気ある中央広場を抜け、復興が進む外縁区へと向かった。

 そこではラグの部下たちが大きな釜を囲み、炊き出しを行っている。


「あ、いたいた! フィオちゃーん!」


 凛愛が声をかけると、食事の列に並んでいた一人の少女が足を止めた。


 フィオは手に小さな皿を持ったまま、無表情ながらも、そのまんまるな瞳でじっと凛愛を見つめ返した。


「フィオちゃん、元気にしてた? あのね、もうすぐ新しい孤児院ができるからね。ちゃんとした屋根も、ふかふかのベッドもあるんだよ。もう雨に濡れたりしないし、みんなで一緒にいられるからね!」


 凛愛が身を乗り出して伝えると、フィオの表情がほんの少しだけ和らいだ。

 彼女は小さく、けれど嬉しそうにこくんと頷く。


「……お姉ちゃん、ありがとう……」


「えへへ、どういたしまして!」


 凛愛はニコッと笑い、フィオの柔らかな頭を優しく撫でた。

 その瞬間、凛愛の懐にあるスマホ……蒼の宝珠を宿したメモリエルが、微かに、けれどはっきりとした震動を返した。


「……サーチ結果、不明……星凛愛、この個体はただのモブではありません」


「えっ、なに急に?」


 スマホを取り出すと、画面には複雑な波形が揺れていた。

 モリエの声は、いつもの無機質なトーンの中に、どこか戸惑いを含んでいる。


「得体の知れない感覚を検知……論理回路が、奇妙な共鳴を起こしています……懐かしい……そんなはずはありませんが、そのように記録を照合しています」


「だよね? やっぱモブ感無いよね、フィオちゃん! ……って、えっ? 懐かしい……?」


 凛愛は目を丸くして、フィオとスマホを交互に見た。

 モリエは、数千年前の勇者セリアの装備だったはず。そのモリエが「懐かしい」と感じる存在。


 フィオは不思議そうな顔で凛愛を見つめているが、その瞳の奥には、すべてを見通しているような静かな輝きがあった。


「……お姉ちゃん……気をつけて……」


 フィオがそっと凛愛の指先に触れると、モリエの震動は嘘のように収まり、画面には穏やかな青い光だけが残った。


「ムフッ……ありがと。フィオちゃん!」


 凛愛は立ち上がり、不思議な余韻を感じながらも、しっかりと頷いた。

 髪の中のチュンペーも、この少女の持つ気配に何かを感じたのか、珍しく騒がずにじっとフィオを見守っている。


『……フン、さっさと行くぞ。』


「分かってるってば! よっし!気合入った! 行こう、マルコさん!」


 小さな、けれど運命的な予感を胸に、凛愛は外縁区を後にした。

 ギルド近くの広場で待つハルドとアルメリアの元へ。


「あ、ハルドさん! アルメリアさん!お待たせー!」


 凛愛が大きく手を振ると、大剣を背負ったハルドがニカッと笑って二人を迎える。

 だが、その視線はすぐに凛愛の背後にいる人物に止まった。


「お? 遅かったな、リア……って、マルコの姐さんのお見送り付きたぁ、大した勇者様だ!」


 ハルドの冗談めかした言葉に、マルコは腰の魔導斧を鳴らして豪快に笑う。


「違うわッ! アタシも行くのォ! リアのケツ叩いて、サッサと商売に取り掛かって貰うのさッ!」


「ッハハ!なるほど、忙しい勇者様だぜっ!」


 ハルドは面白そうに肩をすくめた。

 隣では、杖を手にしたアルメリアが余裕のある微笑みを浮かべている。


「マルコ。あなたが居れば、道中は楽できそうね」


「ッフン!まかしときっ! アタシの斧は伊達じゃないわよォン!」


 気心の知れた実力者同士のやり取りに、凛愛も自然と笑みがこぼれる。

 アルメリアは優しく凛愛を見つめると、ふと表情を引き締めて問いかけた。


「頼もしいわね……所で、リア。聖光剣の場所の目星はついてるの?」


「えと、モリエ? 教えて!」


 凛愛が促すと、スマホに宿った蒼の宝珠が淡い光を放ち、メモリエルの静かな声が響いた。


「サーチ完了……聖光剣アルスカイゼリオンの反応は、現在地より垂直下方……このアヴェントリアの地下を指しています」


「えぇぇぇー!?」


 広場にいた全員の声が重なった。門の外へ向かう気満々だったハルドも、驚きで目を丸くしている。


「何てこった…地下だと!? まさか、この街の真下に眠ってるってのか?」


「……そう、500年前の決戦の跡地に、そのまま残して……私たちは、その上に街を築いていたのね」


 アルメリアは感銘を受けたように、足下の石畳を見つめた。

 かつての戦友セリアが振るった剣が、今も自分たちの足下で眠り続けている……その事実に、懐のチュンペーも満足げに喉を鳴らす。


『フン……セリアめ。わかりやすい場所を選ぶとは味なヤツだ。まさか灯台下暗しとはな。バカ人間、行くぞ! 伝説はすぐ足下にある!』


「まさかの地元ダンジョン!? 行こう、みんな! 聖光剣をゲットしに、いざ地下へ!」


 アヴェントリアの大門を背に、一行は街の深淵へと続く隠された入り口を目指す。

 勇者の物語は、思わぬ方向へと加速し始めていた。


 現在のステータス

 • 名前:星凛愛ホシ・リア

 • 状況:目的地がアヴェントリア地下と判明。探索開始

 • パーティー:凛愛、チュンペー、モリエ、マルコ、ハルド、アルメリア

 • 精神状態:まさかの展開にびっくりだけど、地元なら負ける気がしない!

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