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第48話:魔導男エルドリン、腕を増やして絶好調なんですけどぉ!

ラグの部下に案内され、半ば監禁状態となっているエルドリンの居る工場内部へと凛愛は足を踏み入れた。


重い扉の向こう側には、以前の面影など微塵もない異様な空間が広がっていた。


シュンシュンと吹き出す魔導蒸気の白煙。

ガシャンガシャンと一定のリズムで稼働音を響かせる巨大な生産ライン。

視界が悪く、オイルの匂いと熱気が肌にまとわりつく。


「……エルドリンさーん? 生きてるー? 工場長ー?」


凛愛がビビりながら名前を呼ぶが、機械音にかき消されて返事がない。

すると突然、手元のスマホが激しく振動し、蒼の宝珠が警告音を鳴らした。


「未確認の動体を検知しました。急速に接近中。回避行動を推奨します」


「は? な、何? なにが来るの!? モンスター!? 警備ロボとか!?どこ? エルドリンさん? 怖いんだけど! マジでホラゲ展開じゃん!」


ガシャガシャと鋭い金属音が天井から響き、何かが高速で這い寄ってくる気配。


直後、天井から肉体の一部……人間?の足がダラーんと凛愛の目の前に降りてきた。


「ぎゃあああああああああ!!!しっ……死んでるぅぅぅー!?」


凛愛が腰を抜かして絶叫し、その場にへたり込む。


だが、髪の中のチュンペーは冷静にその「物体」を観察していた。


『……落ち着け、バカ人間。よく見ろ。それは死体ではないぞ』


「……へ?」

涙目で顔を上げると、そこには天井の配管に逆さまにぶら下がったエルドリンがいた。


だが、その姿は異形そのものだった。


彼の背中からは、無数の金属製の魔導アームが蜘蛛の足のように生え、それぞれがハンダごてや精密ドライバー、魔石の研磨機を握りしめている。


「やぁ! リアちゃん! よく来てくれたねぇ!」


エルドリンは逆さまのまま、背中のアームを器用に動かして配管を伝い、凛愛の目の前に着地した。


「見ての通り、生産ラインは完成したよ! でもね、量産といっても繊細な作業を求められるからね! 吾輩が魔導義肢を増やして、直々に同時並行で作業してるわけだよぉ! スゴいね! 吾輩! やっぱり天才だね! 吾輩!!」


「……エルドリンさん、それ……天才っていうか、もうエルフやめてない? 目バッキバキだし、クマもヤバいんですけど……」


『……フン、狂気と才能は紙一重というが。これでは魔導族と変わらんな』


チュンペーの呆れ声もどこ吹く風。


背中のアームをわちゃわちゃと動かしながら、自画自賛を繰り返すエルドリン。

マルコの無茶振りと監禁生活は、この変人をさらなる高み(あるいは奈落)へと押し上げてしまったようだった。


無数の魔導アームを背負ったエルドリンの異形に圧倒されながらも、凛愛の視線はその背後、休みなく動く生産ラインへと吸い寄せられた。


そこには、見慣れた板状のデバイス……まさにスマホのような魔導機が、次から次へと流れていく光景があった。


「どうだい? リアちゃん。壮観だろう! 一つ手に取ってみてごらんよ」


エルドリンが背中のアームの一本で、完成したばかりの魔導機を差し出してきた。


「す、すご……見た目、まんまスマホじゃん! え、これ何ができるの?」


「基本機能は地図の表示。それに、初級から中級程度の理魔法がプリセットされているよ。使う者の魔力に合わせた触媒として機能するよう調整してあるんだ。これ一台あれば、火を熾すのも水を出すのも、道に迷うこともなくなる。一般の生活にかなりの利便性をもたらすはずだよぉ!やったね!」


「……マジかぁ!これ、アヴェントリアの生活水準を一気に爆上げしちゃうやつじゃん。マルコさんも納得の出来だね、これなら……」


魔導書を必要とせずに、誰でも手軽に使えるツールになる。その変革の凄まじさを、凛愛はゲーマーとしての直感で理解した。


「そうだ、リアちゃん。久しぶりにキミのオリジナルのスマホも見てあげようじゃないか。量産型のベースにはしたけれど、やはり本物の解析は終わっていないからねぇ……」


エルドリンが目を爛々と輝かせ、魔導アームを凛愛のポケットへと伸ばそうとした。


「あ、そうそう!今変な状態だから何か変わってるかも……」


凛愛がスマホを取り出し、エルドリンに渡そうとした、その時だった。


スマホが凛愛の手を離れた瞬間、嫌がるかのように自ら宙へと舞い上がった。


「え、ちょっと待って!? また勝手に浮かないでってばぁ!」


「解析を拒絶します」


無機質な声と共に、スマホの画面からパチパチと青白い火花が散った。


ビリッ!!


「痛ぁっ!?」


エルドリンのアームが触れる寸前、スマホは強力な電撃を放ち、周囲の空気を震わせた。


『……おい、バカ人間。この板、明らかに機嫌を損ねておるぞ。我には反撃すらせぬが』


「機嫌!? スマホに反抗期とかあるのぉ!? エルドリンさん、大丈夫?」


電撃を食らったアームが煙を上げているが、エルドリン本人は感電の痛みよりも、その未知の防衛反応にさらに興奮を募らせていた。


「素晴らしい! 自己防衛プログラム、あるいは精霊の拒絶反応か! リアちゃん、やっぱりそのスマホ、ただの触媒じゃないねぇ……! 吾輩の探究心が火を噴くよぉ!!」


「火を噴かなくていいから! 落ち着いてってばぁ!!」


暴走気味の天才職人と、プライドの高い蒼の宝珠。

板挟みの凛愛は、聖剣探索を前にして、早くも前途多難な予感に頭を抱えるのだった。


現在のステータス

• 名前:星凛愛ホシ・リア

• 状況:エルドリンの「魔導工場」を視察、エルドリン(魔導アーム装備・不眠不休)に会う

(蒼の宝珠/他者への拒絶反応アリ)

• 精神状態:エルドリンの姿にドン引き、更に宝珠が憑依したスマホに大興奮のエルドリンにビビり中

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