第46話:魔王の鼓動(BPM)を暴け!空気の読めない聖なるデバイス?ギルドの受付嬢は、ガチ勢だった件なんですけどぉ!
マルコやラグと別れた一行は、ギルド本部へと向かっていた。
港であれだけ派手にセラフィナとやり合った以上、教会にはすべて筒抜けだが、ギルドへの正式な「依頼完了報告」という事務手続きを飛ばすわけにはいかない。
ハルドが事前に打ち合わせた、当たり障りのない公的な報告書を提出するためだ。
市場区の喧騒を抜け、少し静かになった道中。
凛愛の髪の中でずっと沈黙を守っていたチュンペーが、ポツリと独り言のように呟いた。
『……バカ人間。貴様は、やはり何かに導かれているかの様だな』
「え、なに急に、どしたの?あたしが持ってるって話ぃ〜?チュンペーもついてるよねー」
『フン、事実を言ったまでだ。ハルドやアルメリア、変人に怪物、それにラグのような者までが、こうも貴様に肩入れするとはな……ステータスそのものは相変わらずショボいが、着実に周囲を巻き込み、力をつけている』
ハルドが前を歩き、アルメリアが隣で微笑む。
そして裏ではラグの精鋭たちが警備として動いている。
かつて孤独な王として君臨していたクロウヴァルドにとって、損得を超えて凛愛を支える彼らの絆は、少しずつ、けれど確かな変化をその心に与えていた。
「ま、あたしは、みんなに甘えてるだけだけどね! チームプレイこそRPGの醍醐味っしょ?」
凛愛がヘラヘラ笑いながらスマホを取り出すと、同時に蒼の宝珠が喋り出した。
「心拍数の上昇を確認。対象、クロウヴァルド。現在120」
「……なになに?あたしだけじゃ無いんだ?チュンペーのまで計り出した?ウケるんだけど!」
蒼の宝珠が、スマホの画面に心電図のような波形を映し出し、無機質な声で指摘を続ける。
「情動の変化による自律神経の乱れを感知しました。対象は、星凛愛の言葉に対し、微かな充足感と気恥ずかしさを抱いていると推測されます」
『……!? な、何を勝手なことを! 貴様!破壊してくれるわ!!』
「ちょ、チュンペー! 暴れないで、髪の毛ぐちゃぐちゃになるってぇ!」
顔を真っ赤にした(と思われる)チュンペーが、凛愛の頭から飛び出し、宙に浮くスマホを嘴で執執拗に突きまくる。
『この、口の減らぬ宝珠め! 余計な解析などしおって! 我の心は鉄壁!!』
「あはは! チュンペー、図星ぃ〜?マジギレじゃん! 宝珠、もっと詳しく解析してよ!」
「解析を継続します。対象の体温も微増しており……」
『黙れぇぇぇい!!』
ピリピリと小さな電撃を放つスマホと、必死にそれを攻撃する小さな雀のじゃれ合いに和む一行は、ギルド本部へ到着。
本部の重厚な扉を開けると、そこにはいつになくソワソワした様子のリリスが待ち構えていた。
ハルドが用意した「建前上の報告書」を差し出そうとしたが、リリスはそれを手に取るよりも早く、机から身を乗り出して凛愛を凝視した。
「……リ、リアさん……貴女が、いえ、貴女様が……勇者様だったのですね!!」
「……うぇ!? ちょ…リリスさん、顔近っ!鼻先が当たってるんですけどぉ!!」
凛愛が引き気味にのけぞるが、リリスの羨望の眼差しは止まらない。
その瞳はキラキラどころか、もはや執念すら感じる輝きを放っている。
「教会からすでにお聞きしました! 500年の時を超えて現れた、蒼の宝珠に選ばれし伝説の継承者……! ワタクシ、そんなお方のギルド登録を担当していたなんて……一生の不覚、いえ、一生の誉れですぅ!!」
「あー、素早えぇなぁ教会はよぉ……リリスちゃん、依頼は一応、達成ってことで、いいのか?」
ハルドが苦笑いしながら尋ねると、リリスは鼻息荒く頷き、震える手で報酬の金貨袋を差し出した。
「あぁ…勇者様!依頼報酬と、今回の特殊任務によるボーナス、さらにギルドマスターからの特別功労賞も合算されております! 勇者リア様、どうか……どうかこの後、サインを頂けませんか!? ギルドの永久保存資料として!」
「サイン!? あたし、ただのゲーマーだし…… タレントじゃないんですけど!?」
凛愛が困惑してアルメリアに助けを求めるが、アルメリアは楽しそうに微笑んでいる。
『……フン、この様子では、明日から街を歩くのも一苦労だな』
髪の中でチュンペーが勝ち誇ったように呟くが、その声もリリスの熱狂にかき消されてしまう。
「あぁ、このオーラ……! 勇者様特有の、何にも縛られない自由な波動を感じます! リア様、これからショップを開業されるとマルコ様からも伺いました! 私、非番の日は必ず通い詰めますからね!!」
「マジ!?早くもリピーターゲットだぁ!」
ギルド内は、すでに「新人冒険者のリアが勇者だった」という噂で持ちきりになっていた。
形式上の報告を済ませるつもりが、もはや伝説の幕開けを宣言するセレモニーのような騒ぎ。
凛愛は、押し寄せる視線から逃げるように、ハルドたちの背中に隠れてギルドを後にするのだった。
現在のステータス
• 名前:星凛愛
• 状況:ギルドへの報告完了(有名人扱い)
• 報酬:大量の金貨(うほぉ!ショッピング❤︎じゃなくて開店資金かな…)
• 精神状態:推されることに慣れていないオタク気質




