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第39話:逃走の極意(ハイスピード)!?ウツボの口から、コンニチハ!

「あああああ! 来てるっ! 上半身と下半身が別々に追いかけてくんなー! あんた負けてんだから! コッチ来んなー!!」


凛愛は涙目全開で、ピラミッドの出口に向かって全力ダッシュを続けていた。

足がもつれそうになりながらも、必死に前だけを見て走る。後ろを振り返ったら最後、絶対に足が止まってしまう自信がある。


背後からは、断面から火花をバチバチ散らす石像ガーディアンが、物理法則を完全に無視したスピードで迫ってくる。

腕が一本だけ先行して追いかけてくる姿が、特に恐怖を煽る。


「マッテェ〜……マッテェ〜……」


しかも、石像が悲痛な声を出し始めた。

低く、のろのろとした、まるで捨てられた子犬のような声だ。


「いやぁ〜!! マッテェ〜……って言ってるー!? こえーんですけどぉぉ!! どんなホラー展開!? 寂しそうに追われても困るんですけどぉ!!」


息も絶え絶えになりながら叫ぶリア。

汗が目に入って視界がぼやける。

その時、スマホから淡々とした声が響いた。


「自我が芽生えたようですね。待たなくても大丈夫ですよ。」


蒼の宝珠が、相変わらず冷静にコメントを入れる。


「待たないわ!! あんたの基準がおかしいんですけど!? 自我芽生えた石像と、お近付きになりたくねーし!」


するとスマホの画面に、新たな通知がポップアップで表示された。キラキラと派手なエフェクト付きで。


「おめでとうございます。新たなスキルに目覚めましたね」


「……は? 今!? めでたくねーし!! この状況でアプデ入るの!? タイミング悪すぎるんですけどぉ!! ボス戦中にレベルアップとか、ゲームかよ?」


走りながらチラリとスマホの画面を覗き込む。

すると、今まで地味に表示されていたパッシブスキル欄の「逃走の心得」が、黄金色に輝く「逃走の極意」へと派手に書き換わっていた。


「……え、極意? 心得の上位互換……きたぁぁぁ!!」


その瞬間、凛愛の足が自分でも信じられないほど軽くなった。

一歩踏み出すごとに、地面を蹴る力が爆発的に増し、景色が後ろへ猛烈なスピードで飛んでいく。

背後の石像が、みるみるうちに豆粒のように小さくなっていく。


「はやっ! なにこれ、あたし音速超えてる!? ヤバッ! 景色が線に見えるんですけどぉ!! 風圧で顔の皮が後ろに引っ張られてる気がする! 美容効果あるんじゃね?」


『……おい、バカ人間! 前を見ろ……!』


髪の中のチュンペーが必死に小さな脚で踏ん張りながら叫ぶが、リアの興奮は止まらない。


「ちょっと痛いけど!チュンペーしっかり掴まってなよー!……あ、出口見えた! 光! 外の光だー!!」


光の出口を全力で突き抜けた瞬間——。


急ブレーキをかけたリアの眼前に、壁ではなく、巨大なウツボの顔がドーンと広がっていた。


デカい、雷光のような模様が刻まれたその顔が、至近距離でこちらを見下ろしている。


「うっは……!? こ、ここって……どーなってんの!?」


気づけば、そこは体内に入る直前の祭壇広場だった。

どうやらウツボの巨大な口から、弾丸のようなスピードで逆噴射するように飛び出してきたらしい。


『戻ったか……勇者の試練、その身に刻んだようだな』


地響きのような、低く重厚なウツボの声が周囲に響き渡る。

リアは尻もちをついたまま、地面にへたり込み、手の中のスマホを見つめた。

息が荒く、肩が激しく上下している。

画面の中では、蒼の宝珠のアイコンが満足げにゆったりと明滅を繰り返していた。


「……はぁ、はぁ……刻んだっていうか、死にかけたんだけど……これ、クリア……でいいんだよね? 試練って、逃げ切ったら合格なの? それとももっと何か条件あった? ねえ、宝珠さん、教えてよぉ……」


スマホから、優しくもどこか楽しげな声が返ってくる。

「よく頑張りました、星凛愛。逃走の極意をここで発動できたのは、素晴らしい適応力です。」


「褒められても全然嬉しくないんですけど! あたし、ただ必死に逃げただけだよ!? しかも最後にウツボの口から飛び出すとか、完全に魚の餌みたいじゃん!」


祭壇の向こう側では、ハルドとアルメリアが呆然とした表情でこちらを見守っていた。


「リア!無事だったのね」


アルメリアが安堵の息を吐きながら近づいてくる。

ハルドは額の汗を拭いながら、苦笑いを浮かべた。


「おいおい……また派手に戻って来やがったな!元気そうで良かったぜ!」


リアは地面にへたり込んだまま、スマホを胸に抱きしめてぐったりと肩を落とした。


「イヤイヤ、もう……二度と胃袋の中とか入りたくない……次は普通のダンジョンにしてほしいんですけどぉ……宝珠は勝手にスマホと合体するし……」


スマホの画面が、優しく光を柔らかくした。


「それでは、試練を超えた勇者にお話があります」


「あ、そうだったね……何の話だっけ?」


現在のステータス

• 名前:星凛愛ホシ・リア

• 状況:神殿の守護者の体内から脱出成功

• スキル:逃走の極意ランクアップ

• 装備:スマホ(蒼の宝珠インストール済み)

• 精神状態:心臓がバクバク(でもちょっとドヤ顔)

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