第32話:水没バグですかぁ!?無重力の天井から、巨大な「何か」がコンニチハ!
「……うあぁ!怖いぃぃ…… 死んじゃうぅぅ!!」
凛愛は神殿の入り口で、アルメリアの腰にガチでしがみついていた。
顔は彼女の服に埋めたまま、一ミリも前を見ない。
視界に入れたら最後、あの「深淵に吸い込まれる感覚」で心臓が止まる自信がある。
ハルドが警戒しながら先を行き、凛愛を引きずるようにして内部へと足を踏み入れた。
ボッ、ボッ……!
「えっ!? なに、爆発!? 敵!? セーブしてないんですけどぉ!!」
「落ち着きなさい、リア……ただの燭台よ。私たちの到着を歓迎してるみたいに…勝手に火が灯ったわ」
アルメリアの冷静な声に、凛愛は指の隙間から恐る恐る辺りを見渡した。
そこは、本来なら数々の難解なパズルを解かなければ進めないはずの迷宮。
なのに、怪しげな封印のゲートが「どうぞお通りください」と言わんばかりに勝手に開き、底の見えない奈落からは、ガタガタと音を立てて石の橋が浮上してくる。
(『……やはり、凛愛は……』)
チュンペーは凛愛の頭上で羽根を震わせる。
「チュンペーも怖がってんじゃん!さっきから黙っちゃってさぁ……」
「おいおい、おかしいぜ……ギルドの過去の調査記録でも、こんな簡単に通れた、なんて話は一度も見てねぇぞ? まるで、招かれてるみたいじゃねぇか」
ハルドが剣の柄を握り直し、険しい表情で周囲を警戒する。
「……そうね。私が500年前にセリアと一緒にここへ来た時も、こんなに静かではなかったわ。仕掛けを解くのに、彼女と丸三日は戦い続けたもの……」
アルメリアが訝しげに眉をひそめる。
「……え、ちょっと待って? アルメリアさん、サラッと爆弾発言した!? 500年前、勇者と一緒に!?ヤバっ!さすが千年美魔女! 」
あたしが絶叫する中、一行はさらに奥……開けた巨大な円形広場へと辿り着いた。
中央には、古びた、けれど神々しい祭壇がポツンと置かれている。
「罠なんじゃないのー!? これ、絶対『後でまとめて地獄を見せてやるから奥までおいで系』の接待プレイだよぉ! 誰だよ、この神殿のディレクター! 悪趣味すぎ!!」
手招きされているような不気味な静寂の中、凛愛たちはさらに奥へ進む。
中央には、古びた、けれど神々しい祭壇がポツンと置かれている。
「おっ……あれが、遺物の安置場所か?」
ハルドが剣を抜き、慎重に祭壇へ近づく。
その時——。
ズ、ズズズ……ッ!!
「イヤぁぁぁっ! 揺れてる! 崩れる! 浸水バグ!? やっぱ罠じゃんかよぉー!!」
天井から大粒の水が滴り落ち、凛愛は頭を抱えて蹲った。
「リア、上よ!!」
ハルドとアルメリアの鋭い制止に、反射的に顔を上げる。
「……え、嘘でしょ……?」
そこにあったのは、石造りの天井ではなかった。
物理法則を無視して、一面が「無重力の水面」に変わっていたのだ。
天井そのものが逆さまの海。
その深い闇の中から、ぬらりと、あまりにも巨大な影が姿を現した。
長さは分からない。
雷光のような模様を刻んだ巨大な「ウツボ」のような怪物が、水面から首を出し、凛愛たちを見下ろしている。
凛愛は腰が抜けて、ガクブル状態。
ハルドは意を決した臨戦体制に、アルメリアは冷静に状況を見ていた。
だが、その怪物の口から漏れたのは、地響きのような、けれど慈しみに満ちた思念だった。
『…………待っておったぞ……勇者よ』
「……は? ゆう……しゃ? だれが……?人違いなんですけどぉぉ!!デカぁぁぁあ!!ちょー怖えぇぇええぇ!!」
現在のステータス
• 名前:星凛愛
• 状況:巨大ウツボ(神殿の守護者?)と対面中
• 精神状態:極限パニック(海洋恐怖症+海洋生物)
• 謎:500年前を知るアルメリアと、ウツボが呼ぶ「勇者」の声




