第31話:未知なる海域へ!ギャルと魔導師と剣士で海神の眠る場所へ行くんですけどぉ!
「海………勇者の遺物が海にあるとか……マジで? 水没系ダンジョンとか、あたし、一番苦手なギミックなんですけどぉ!!」
ハルドから渡されたギルドの依頼書には、確かにアヴェントリアから遠く離れた外海に浮かぶ「海神神殿」の文字が躍っていた。
今回の調査は、ギルド内外の有力者が参加できる
「合同探索」という特別枠。
「……吾輩も行きたかったね!しかし、マルコ殿が『量産化のラインを今すぐ引けェ!』って、吾輩を工房に監禁する勢いなのだよ。やったね吾輩、売れっ子すぎて過労死しちゃうね!」
エルドリンは泣きながら工房へと引きずられていった。
代わりに、静かに立ち上がったのはアルメリアだった。
「勇者セリア……ね、彼女にまつわる遺物なら、私にも見識があるわ。ハルド、私も同行させてもらうわね。」
「しっかし、2人が知り合いとはなぁ、アルメリアがいてくれりゃ百人力だ!よろしく頼むぜぇ」
かくして、凛愛、イケオジ剣士ハルド、そして美しき魔導師アルメリアの三人+1羽による「遺物調査パーティー」が結成された。
数日後。
凛愛たちは巨大な帆船に揺られ、アヴェントリアの港から外海へと漕ぎ出していた。
「……うぅ……怖い……海、怖い……あー帰りたい!」
『……シャキっとしろ、バカ人間。海風は魔力を研ぎ澄ませるのに最適だというのに』
「……むり!ムリムリムリっ! 絶対に無理なんですけどぉぉぉ!!」
凛愛は甲板のど真ん中に座り込み、両手で頭を抱えて丸まっていた。
視界に一切、海を入れない防御体制をとった。
そこから一ミリでも顔を上げたら、あの底の知れない「ドス黒い青」が視界に入ってしまう。
ガチの海洋恐怖症なのだ。
ゲームの水中ステージですら、画面の奥に巨大な影が見えるだけでコントローラーを投げ出すレベル。
それが今、360度逃げ場のないリアルな深淵として足元に広がっている。
考えただけで、肺の空気が全部抜けていくみたいに息が苦しい。
「ちょっと、リア? 顔色が真っ青よ!特製の酔い止め、多めに飲む?」
心配そうに覗き込むアルメリアの声も、遠くの波音に消されそうになる。
「薬とかそういう問題じゃないんですってぇ! 見てよあの海! なに!あの中途半端な紺色! 殺意高すぎでしょ! 誰だよ! こんな底見えないガチ勢ダンジョンに遺物隠すとか、バカじゃないの?性格悪すぎてキャラデザからやり直して欲しいレベルなんですけどぉ!!」
あたしは床に額をこすりつけながら、マシンガントークで愚痴りまくった。
喋ってないと、波の音が巨大な怪物の咀嚼音に聞こえて発狂しそうになる。
「ハルドさんも、なんでそんな平気そうなの!? もしかして、あの暗闇の中からビル5階分くらいある触手がバァーン!って出てきて、船ごとバッカーン!ってされるシチュエーションとか想像してないの!? 想像力欠如してんじゃないんですかぁ!?」
「……お、おう?嬢ちゃん、元気があるんだか無いんだか分かんねぇな……まぁ、落ちつけって、な?」
ハルドの呆れた声が上から降ってくるが、凛愛は頑なに頭を上げない。
「……あの神殿、沈んでる……んですよね? あの中に入るの……? 嘘でしょ、バカじゃないの!? 誰だよ!こんなトコに遺物隠したやつ!!勇者?マジで性格悪すぎなんですけど!!」
ハルドもアルメリアも同じ様な愚痴を吐く凛愛に、哀れみの表現を浮かべるしかなかった。
『……おい。鼻水を拭け、バカ人間。やかましいぞ』
「……チュ、チュンペー……もう、アンタの羽の中にスマホ持ち込んで、一生ログボだけ受け取って暮らしたい……っていうか、神殿って言ったよね? 建物なんだから、せめて屋根くらいガッツリあって、水一滴も入ってこない仕様になってんでしょうね!? もし浸水バグとかあったら、あたしその場でログアウトするからね!!てか、海に造んなよ!ウザっ!あー!怖いよぉぉ〜!ヤダヤダヤダァ〜!!」
『うるさいぞ!バカ人間!』
「……見て、海の色が変わったわ」
アルメリアの声に顔を上げると、エメラルドグリーンだった海が、急激に深く、吸い込まれるような藍色に染まっていた。
その海域の中央に、白亜の建造物が突き出している。
「あれが……海神神殿。勇者の伝説の一つ、海を割って道を作ったという『蒼の宝珠』が眠ると言われている場所よ……リア?」
凛愛は恐る恐る顔を上げた。
白亜の建造物が、藍色の海から突き出している。
波に洗われながらも、圧倒的な存在感でそびえ立っていた。
「うぅ……こーわっ!」
現在のステータス
• 名前:星凛愛
• 状況:最大の敵、海を渡る
• 精神状態:極限パニック(海洋恐怖症が限界突破中)




