第30話:コネと名声爆上がり!でも、勇者の影がチラつくんデスけどぉ!
結局、凛愛はマルコに片手で抱えられ医務室へと運ばれた。
「……ん……あ、あたし……生きてる?」
目が覚めた時、視界に入ってきたのは、心配そうに覗き込むミリナの顔と、なぜかドヤ顔で腕を組んでいるエルドリン、そして優しく微笑むアルメリアだった。
「お姉ちゃん! 起きた! よかったぁ……!」
「おやおや、歴史の目撃者がようやくお目覚めかな。マルコ殿、ガチで鼻血出して喜んでいたよォ」
『……フン。気絶してオークの腹に寝そべるとは。最後までバカ人間らしい、品のない勝ち方だったな』
髪の中でチュンペーが吐き捨てる。
でも、その声はいつもよりずっと弾んで聞こえた。
ラグも壁に寄りかかり、凛愛が目覚めるのを確認した後、音もなく去って行った。
「あたし、やったんだ…」
闘技場での「ボヨン着地」から数日。
凛愛はマルコの圧倒的な資金力と行動力に、口をあんぐりと開けていた。
「いい? 孤児院の建設はもちろん、アンタのショップ経営権もアタシがガッツリ保証したげるわ! ただし、あの魔導器の簡易版……『スマホ・ライト』とでも呼びましょうか、それはアンタの店で独占販売なさいな! スタートダッシュ、キメるわよォン!」
「マジで……マルコさん、マジで器がデカすぎて逆に怖いくらいなんですけどぉ……!」
マルコにとって、凛愛のスマホは「量産して売れば莫大な利益を生む金の卵」。
凛愛の店を、その拠点にすることで投資分を速攻で回収するつもりらしい。
(さすが商売人、マジでエグい!)
おまけに「勇者に似た美少女魔導師(?)」なんて噂まで広まって、有名になりたくない凛愛の意志とは裏腹に、アヴェントリアの有名人リストに強制登録されてしまった。
そんな中、凛愛は外縁区の入り口でラグと合流した。
「孤児院の方は、ウチらの仲間が見守ることに決まったぞ……盗賊ギルドが守る場所なんて、下手な役人が管理するより安全だからな」
ラグの不敵な笑みに、あたしは心の底からホッとした。
「ありがと、ラグさん……考えてみたら、あたしのスマホが盗まれなきゃ、外縁区にも行かなかったし、フィオちゃんたちにも会えなかった。マルコさんとも繋がれなかったし……結果的に、スマホ盗まれて良かったのかも!」
「そうなのか?……ははっ、モノ盗まれて喜ぶ奴なんて、お前くらいだな」
ラグさんと別れた後、あたしはフィオちゃんの元へ駆け寄った。
フィオは、いつものように、ボロボロの毛布にくるまいた。
凛愛は、その小さな肩を抱き寄せ、少し震える声で切り出した。
「……フィオちゃん、あのね。もうすぐ、新しいお家ができるんだよ」
「あたらしい……おうち?」
天使の様な瞳で不思議そうに首をかしげるフィオ。
凛愛は込み上げてくる涙を堪えきれずに、彼女の泥のついた手をぎゅっと握りしめた。
「そうだよ……もう、冷たい地面で寝なくていいの。雨の音に怯えなくていいんだよ? 毎日、あったかいベッドで、ふかふかの布団でぐっすり寝られるんだから……お腹いっぱいご飯も食べて、みんなで笑って暮らせるんだよ……!」
凛愛の目から溢れた涙が、フィオの手にこぼれ落ちる。フィオは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべて、凛愛の涙を小さな指で拭った。
「……ありがとう、おねえちゃん」
その笑顔を見た瞬間、あたしは確信した。
あの地獄の特訓も、オークの腹の上での気絶も、全部全部、この瞬間のためにあったんだって。
そんな、しんみりした余韻をぶち破るように、聞き慣れた野太い声がした。
「よぉ、お嬢ちゃん! 探したぜぇ!大活躍だったみたいじゃねぇか!」
ハルドだ。
闘技場の試合はギルドの呼び出しで見に行けなかったらしく、少し悔しそうな顔をしている。
「ハルドさん! 仕事終ったんですか?」
「あぁ…だがな、その呼び出しで、お嬢ちゃんに関係ありそうな話が舞い込んできたんだ」
ハルドの表情が、現役Sランク冒険者の真剣なものに変わる。
「……勇者に纏わる『遺物』の調査依頼だ。特定の血統、あるいは特殊な魔導器を持つ者の同行が条件でな。ギルドは、今の有名人……お嬢ちゃんを指名してきた」
勇者。
その言葉に、心臓がトクンと跳ねた。
「……あたし、行きます!ずっとモヤってたんで」
(……勇者の遺物か……セリア。お前とバカ人間を繋ぐ何かが、そこにあるかもしれんな)
髪の中でチュンペーが、静かに、でもどこか切実な声で呟いた。
あたしのギャルな異世界生活は、一旦ビジネス成功のハッピーエンド……かと思いきや、ついにこの世界の「核心」へと足を踏み入れようとしていた。
現在のステータス
• 名前: 星凛愛
• 状況: 孤児院プロジェクト始動。そして「遺物調査」へ。
• 実績: フィオに最高のニュースを届ける、盗賊ギルドの守護を確保。
• 次の目的地: 勇者の遺物が眠る遺跡。




