第28話:ガチ魔法使い(マジシャン)降臨!?運とスマホで、闘技場(ステージ)をジャックする!
「ねぇねぇねぇ!チュンペー!見てよコレをさぁ!うわぁぁ……! マジで浮いてる。あたしの手の上で、ピンクの激カワスマホがさぁ、意思持ってるみたいにプカプカしてるんですけどぉ!!もう、夢だったんだから!コレマジで、アガるわぁ〜♪聞いてるー?」
特訓を終えた帰り道、凛愛は夕闇に光るデバイスを見ながら、もう片方の手で頭の上のチュンペーをモフり、語彙力が死滅するほど興奮していた。
「ぬぅぅ……鬱陶しい奴だ」
揉みくちゃにされるがままのチュンペーを解放する、宿の部屋に入るなり鏡の前に立ちポーズをキメだす。
「これ、完全に「選ばれし魔導師」のビジュアルじゃん! 鏡に映る自分、ギャルな見た目と浮かぶスマホのミスマッチが逆にエモすぎて、自撮り出来ないのが人生最大の損失だよ……あー!撮りてー!!」
ふと気づけば、この世界に来たばかりの頃にあんなに執着してたスマホの「ログインボーナス」や「SNSの通知」が、全然気にならなくなっていた。
画面の向こう側の数字より、今、指先から放たれる火花の熱さや、風を操る感触の方が、ずっと「リアル」で「生きてる」感じがする。
『……フン、いつまで浮かれているバカ人間、しかし……お前のその異常なまでの「運」と、厚かましく有力者を巻き込む力だけは、認めざるを得ないようだ』
「ちょ、チュンペー! それ褒めてるの? 結局バカって言いたいだけでしょ!あたしだから許されてんだからね?バカ人間とか…❤︎」
でも、髪の中で少しだけ誇らしげに喉を鳴らすチュンペーの気配に、凛愛はニヤけが止まらなかった。
無限収納スクールバッグには、ミリナ特製のポーションを、これでもかってくらいブチ込んだ。
「準備、オッケー! 物理で殴られたら終わりだけど、当たらなければ、なんとやら……ってね!」
そして迎えた、大会当日。
アヴェントリアの中央広場にある巨大な石造りの闘技場は、地鳴りのような歓声に包まれていた。
「うっは……人、多すぎ!これ、オタイベの開場待ちよりエグくない?」
心臓がバックバク鳴る中、選手専用の入り口に向かうと――そこには、ひときわ異彩を放つ巨躯が、腕を組んで待ち構えていた。
「あンン〜ん! 来たわね、アタシの可愛い子ちゃん! 待ちくたびれて、アタシの睫毛が一本抜けちゃったじゃないのォ!」
超ド派手な衣装のマルコが、太陽を背に受けて立っていた。その隣には、かつてチャンプだった頃の栄光を示すような、禍々しくも美しい超巨大な魔導斧が立てかけられている。
「マルコさん……! 自らお出迎えとか、サービス精神旺盛すぎなんですけどぉ……」
改めて、色んな意味で圧倒してくる巨躯に震える凛愛。
「ンっふん!当たり前じゃない! アタシが投資する価値があるかどうか、特等席で見届けさせてもらうわよォ……さあ、娘っ!アヴェントリアの連中に、新しい時代の『輝き』を見せておやりッ!!ンふーッ!!」
鼻息で吹き飛びそうになる凛愛、マルコは鼓舞するかの様に、デカい手で凛愛の背中をペシっと叩く。
「いってぇ……! !くぅ〜……でも、やってやるんだからっ!」
マルコの強烈な送り出し(物理)を受けて、あたしは石造りの闘技場へと躍り出た。
「うわぁぁ……人、多すぎ! 視線が痛い……マジで人見知り発動してログアウトしたい……」
歓声の嵐の中、対戦相手のゲートが開く。そこに現れたのは、あたしの身長の倍はありそうな緑色の巨躯。
「ブゴォォォ……!」
オークのグラップラー。
その左腕には鈍く光る巨大な盾が装着されていた。
マルコの手が下され、開始のドラが鳴らされる!
「……こっわ!ガチじゃん!ヤダ……マジで!ちくしょー!先手ひっしょー!!」
凛愛は浮遊するピンクのスマホを起動させた。
画面には、エルドリンが組み込んだ四元素の紋章が、戦闘開始を告げるように怪しく、そして美しく明滅を開始。
間髪入れず、火の魔法を放った。
だが、放たれた火球はオークの盾に当たった瞬間、そのまま凛愛の方へ跳ね返ってきた!
「はぁー!?あたしの魔法で焼かれるとか、マジでシャレになんないんですけどぉ!?
え、ちょっと待って! 初戦から魔力反射持ちとか、運営の嫌がらせ!? あたしの魔法、全部跳ね返されんじゃん!」
グラップラーは盾を下ろすと猛ダッシュで迫る!
凛愛は泣きべそをかきながら、無我夢中で闘技場を走り出した。
『……見苦しいぞバカ人間! 泣いている暇があるなら手を動かせ!』
髪の中のチュンペーが怒鳴る。
「いやいや!ムリっしょー!逃げ一択!」
スキル【逃走の心得】が発動。
凛愛の素早さ12は、オークの鈍重な拳を紙一重でかわしていく。
観客席から、仲間たちの叫びが聞こえてくる。
「リア!右だ! 次は左に大きくステップ!!」
外縁区から来ていたラグの、的確すぎる攻撃予測その声に従って体を沈めると、オークの巨大な拳が頭上を空切った。
「リア! そのスマホは手元に置かなくていいわ! 魔導砲台のように離れた場所に浮かせて、ネイルで遠隔操作しなさい!」
アルメリアさんの鋭いアドバイス。あたしはハッとして、浮遊するスマホをオークの背後へと飛ばした。
指先の魔導ネイルをフリックし、離れた場所から術式を起動させる。
「あの魔力反射は永続ではない! 一度反射すれば術式の再充填に数秒の間隔があるはずだね!見切ったね!吾輩!」
エルドリンが身を乗り出して叫んだ。
「クールタイム……あ、ゲームの基本じゃん……一番爽快感ないヤツ!」
凛愛は涙を拭い、逃げながらも指先を激しく動かした!スマホをオークの死角へ。
前方しか守れない盾を無効化する、背面からの多角操作。
「……ビビり散らかして損した……みんな!ありがとっ!」
逃げ回るギャルと、それを追う巨体。
アヴェントリアの観衆が、見たこともない奇妙でトリッキーな戦いに釘付けになり始めていた。
現在のステータス
• 名前: 星凛愛
• 状況: 1回戦、オークグラップラーと激闘(逃走)中!
• スキル: 【逃走の心得】(限界突破中)
• 戦術: スマホ・リモートタレット運用 & 物理回避特化




