第25話:爆買いの巨神(セレブ)襲来!プレゼン会場がランウェイなんですけどぉ!?
魔導博覧会の会場に、地響きのような足音と、バニラのような甘い香水が漂ってきた。
そこに現れたのは、5メートルを余裕で超える巨躯をド派手な金糸の衣装で包んだ、歩く財宝こと大商人マルコ・グレディア。
「ンッ!ぅぅっうん! ついに来たわよ! この時がぁ! さあ、アタシを驚かせる『可愛い子ちゃん』はどこかしらぁん!?」
一切の護衛も連れず、子供のように目を輝かせて会場を練り歩くマルコ。
気に入った魔導器を見つけるたびに、指先一つで「これ、棚ごといただくわ!」と豪快に買い上げていく。
周りの客も呆気に取られ、もはや、彼の独壇場と化していた。
その巨躯に似つかわしく無い乙女な仕草だが、その背筋から放たれる威圧感はマジで本物。
あたしは、エルドリンさんの工房で借りた少しカチッとした服に、お気に入りのネイルとアクセで武装して、紹介状を握りしめて待機していた。
「うは……ヤバい、マジで山が動いてる……オーク恐えぇぇぇ……」
「リアちゃん!大丈夫だよぉ?やったね吾輩、歴史的瞬間に立ち会っちゃうね!」
上機嫌なエルドリン。
さらに、物思いに耽りながらも優しく見守ってくれるアルメリアと、熱い眼差しで拳を握るミリナまで応援に来てくれていた。
『……おい。鼻から魂が出ているぞ、バカ人間……行くなら今だ』
髪の中でチュンペーの低音ボイスが響く。
「う……わ、わかってるよぉ! ……よーし、いくよ……孤児達の未来、あたしの雑貨屋、全部この一発にかけるんだから!」
凛愛は震える足で、大量の魔導器を買い漁るマルコの前に飛び出した。
「ぉ、押忍っ……あのっ、すみません…買い物の途中にマジでサーセン! でも、これ……アナタの好みにブッ刺さると…思うんですけどぉ!!」
凛愛は開き直り、エルドリンの紹介状を差し出しながら、片手でスマホの起動画面を光らせた。
魔力充電式へと生まれ変わった、未知の輝き。
マルコがピタッと足を止め、巨体を折り曲げるようにして、凛愛の手元のデバイスを覗き込んだ。
「ンッ……あら? 何かしら、この薄い板みたいなの……エルドリンの紹介? ……ふぅン、ただの板じゃないみたいねェ……んフンッ!アタシのセンサーがビンビン言ってるわよォん!」
マルコの鋭い視線が、スマホの画面に釘付けになる。
「娘ッ!コレ、触れても、いいかしら?」
凛愛の異世界ビジネス、運命のプレゼンがいよいよ幕を開ける……!
(……声デカっ! 圧が強すぎて、あたしのまつ毛、飛んでいきそうなんですけどぉ!!)
あまりのハイテンションと、5メートル超えの巨躯から放たれるメガトン級のパッションに、凛愛は思わずのけぞった。
マルコは凛愛のスマホを覗き込みながら、クネクネと身をよじって絶叫している。
その指先がスマホの画面に触れた瞬間、スルスルと動く地図の表示に、さらに彼の瞳がひっくり返った。
「ナ、ナ、ナ、ナニよ? コレぇン!? あ、あぁたしのハァトを、鷲掴みにする魔導器だわよォォ〜!! なんなのー? コレ! アンタが作ったのォ!?」
「あ、いや、あたしが持ってきたっていうか……エルドリンさんと一緒に、その、解析とかして……」
「ちょっと、アンタ! アタシのお抱え技師になんなさいッ! 幾らでも出すわヨォ? 金貨? 宝石? それともアタぁシのラヴ❤︎かしらぁンッ!?」
マルコがグイっと顔を近づけてくる。
(ヤ、ヤバい……! 融資どころか、あたし自身が『お買い上げ』されそうな勢いなんですけどぉ!)
『……おい。白目を剥くな、気をしっかり保て!バカ人間!商談だと言っただろう』
髪の中のチュンペーが、イケボで冷静に釘を刺す。
凛愛は震える足に力を込めて、ギャル特有のハッタリ(プレゼン力)を振り絞った。
「……ま、待ってくださいマルコさん! 落ち着いて! あ、あたぁしを雇うより、もっと…ヤバい話があるんです! ……これ、ただの一点物じゃないんです!」
凛愛は隣に控えるエルドリンに目配せをした。
「えと……実はコレ、アヴェントリアの技術をフル稼働すれば、量産……つまり、誰でも持てる様にできるんです! 街中の冒険者や商人が、これを持って歩く未来……想像してみたくないですか?」
マルコの動きが、ピタッと止まった。
その鋭い目が、一瞬だけ「捕食者の目」に変わる。
「おン?……量産? この『奇跡の板』を……バラ撒くっていうの……?」
「そ…うです! でも、あたしの力だけじゃ足りなくて……マルコさんみたいな、ガチで力のある人の融資が必要なんです!」
すると、隣でずっとうずうずしていたエルドリンさんが、ここぞとばかりに一歩前に出た。
「そうだよ、マルコ殿! 吾輩の魔導工学とリアちゃんの未知なる発想が合わされば、これはもはや単なる道具ではない。アヴェントリアの全市民が掌の上で世界を視る……そんな『新時代』の幕開けなのだよ! やったね吾輩、歴史を量産しちゃうね!」
エルドリンさんの鼻息の荒さに、後ろで見守っていたアルメリアさんが、穏やかに、でも確かな重みのある声で続けた。
「……マルコ、あなたの審美眼ならわかるはずよ。この子が持ってきた技術は、既存の魔導回路の概念を根底から覆す可能性を秘めているわ……私のような古い錬金術師ですら、この板の向こう側に新しい世界の形が見える気がするもの。この輝きを独り占めにするのは、少しもったいないと思わない?」
アルメリアの妖艶な微笑みに、さしものマルコも少し頬を染めた。
「ンン〜ん、ナニよ…アンタ達まで随分と推すじゃないの、変人とアルメリアに、そう言われると弱いわねェ……ふぅン」
そこに、ミリナがギュっと凛愛の服の裾を掴んで、一生懸命に声を張り上げた。
「あ、あの!マルコさん! お姉ちゃんは、この力を使って、外縁区のみんなも助けたいって言ってるんです! お金持ちだけじゃなくて、私みたいな市場の子供だって、これがあればもっと便利に、楽しくなれるって! ……その夢、私も一緒に見たいんです!」
ミリナの無垢で真っ直ぐな瞳に、マルコの巨躯がびくりと震えた。
「アラぁ〜……ヤダわぁ、こんなチッコい娘まで!?
量産……革命……そして、アタシのハァトを射抜く情熱。ンン〜んッ!いいわ、嫌いじゃないッ!最ッ高にゾクゾクするわよぉおお!!」
運命の分かれ道。
エルドリンの知恵、アルメリアの確信、そしてミリナの願い。
三人の強力なバックアップ(バフ)を受けたが、マルコの「ハァト」と「財布」、同時にこじ開けることはできるのか!?
現在のステータス
• 名前: 星凛愛
• レベル: 5
• 状況: マルコに「量産化」の爆弾発言を投下!
• スキル: 営業スマイル(限界突破中)マルコさんのキャラ話しやすいかも?
• 次の目標: 具体的な融資額の交渉・孤児院プロジェクトの資金確保




