第23話:外縁区の小さな灯――あたし、あの子を放っておけないんですけど!
第23話:外縁区の小さな灯――あたし、あの子を放っておけないんですけど!
「おはよーございまーす! エルドリンさん、見てこれ! ギルドカード、ガチでゲットしちゃいましたぁ!」
翌朝、凛愛はピカピカのギルドカードをエルドリンに突き出した。
「おや、リアちゃん! やったね!! 吾輩の魔導ネイルの効果、テキメンだっただろう? やったね吾輩、最高傑作!」
「マジそれ! ゴブリン三体、一瞬で(ハルドさんが)片付けちゃいましたし!」
あたしは、これからの「冒険者ライフ」を本格的に進めるために、少し真面目なトーンで切り出した。
「……で、相談なんですけど。ギルドの仕事もガッツリやりたいんで、工房のバイト、少しシフト減らしてもらってもいいですか? もちろん、急ぎの作業がある時は秒で飛んできますし!」
「そうだねぇ、レベル5にもなれば、外の世界をもっと見るべきだ。分かったよ、リアちゃんの門出を吾輩が邪魔するわけにはいかないからね! やったね、自由!!」
エルドリンさんの快諾にホッとして、あたしは気になっていたことを口にした。
「……あの、エルドリンさん。一つ聞いてもいいですか? この街の『外縁区』……スラムっぽいところにいる、孤児たちのことなんですけど」
エルドリンさんは眼鏡を指で押し上げ、少し表情を曇らせた。
「……あそこは、光の届かない場所だよ。戦争や魔物の被害で親を失った子たちが、肩を寄せ合って生きている。この外縁区は基本的には見て見ぬフリされる場所なんだよ」
「……そうなんだ……あの、フィオっていう、小さなエルフの女の子、知りませんか? 以前見かけてから、なんだかずっと気になってて……市場のミリナちゃんみたいに、笑って話せる子が一人でも増えればいいなって……あの子を放っておけないんです」
「フィオ……エルフの孤児か……残念ながら、吾輩は直接は知らないね。だが、外縁区の子たちは、よく市場のゴミ捨て場や、南の『冒険者門』の近くで、小銭稼ぎや食べ物探しをしていると聞くよ」
エルドリン工房を出たあたしの胸の中は、ざわざわしていた。
ギルド登録できた喜びが、急に色褪せて見える。
『……貴様、未熟者が他人の心配をしている場合か、バカ人間め』
その瞬間、久しぶりに、あたしの背筋にゾクッと甘い衝撃が走った。
(……うっ……!チュンペーの超絶イケボ罵倒……! 脳みそ溶ける……!)
頬を赤く染めて悶えるあたしを、髪の中のチュンペーが冷ややかな目で見下ろす。
『……おい、悶える時間があるなら、さっさと済ませろ』
「はっ、そうだった! 行くよ、チュンペー! まずは市場の裏か、門の近く。あの子を見つけて、あたしが稼いだお金で……もっとマシなもん、食わせてあげたいんだわ!」
『……勝手にしろ』
あたしは無限収納バッグの肩紐をぎゅっと握り、ギャル特有の早歩きで、外縁区へと続く影の多い道へと踏み出した。
市場の裏も、冒険者門の近くもスカ。
「……どこだろ。チュンペー、心当たりある?」
『……以前会ったのは、外縁区の廃墟宿屋の裏だったな。あの辺りを根城にしているかもしれん』
チュンペーのナビを頼りに薄暗い路地を進むと、廃墟の陰に小さな影を見つけた。
ボロボロのパンの耳をかじっている、あの子。
「……フィオちゃん?」
大きな丸い目が、凛愛を捉える。
「……あ」
再会したフィオは、前より少し汚れてたけど、目は変わらず澄んでいた。
あたしはしゃがんで、目線を合わせた。
「……覚えてる? あたし、リア。この前キャンディーあげた」
こくん、と頷くフィオ。
凛愛は無限収納バッグから、市場で仕入れた焼肉串を取り出した。
「これ、食べる?柔らかジューシーおいしいよ! 」
小さな手で焼肉串を大事そうに食べる姿を見て、あたしの胸がぎゅっとなった。
(……この子、ここに一人でいるんだ。毎日……マジでありえないんですけどぉ)
その時、路地の奥からフードを被った鋭い目の女性――ラグさんが現れた。
「……スマホを取り返しに来た人間か。今日は何の用だ」
あたしは立ち上がり、真っ直ぐにラグさんを見た。
「フィオちゃんを探してて……あの、ラグさん。一個、提案があるんです」
「……なんだ」
「ラグさんって、義賊ですよね……だったら、孤児院、作りませんか」
ラグの目が細くなった。
「……孤児院?」
「はい。フィオちゃんみたいな子たちが、ちゃんと屋根の下で眠れて、ご飯が食べられる場所。あたし、お金を稼ぐのが目的でこの街にいるわけじゃないけど……でも、こういうことには使いたいって思ったんです!」
資金はどうすると問うラグに、凛愛は自分の夢もぶつけた。
「ギルドで稼いで、バイトもして、あたしはこの街に雑貨屋も出したい。その収益を回す! 今はないけど、絶対集めます!」
ラグは最後にため息をついて。
「……話だけなら、聞いてやる……次来る時は、具体的な話を持ってこい」
「はい! 絶対持ってきます!」
帰り道、フィオが凛愛のスカートの裾をそっと掴んでいた。
その小さな手の温もりに、凛愛の覚悟は決まった。
「……フィオちゃん。またすぐ来るね。約束する」
『……フン、どこまでもお人好しなバカ人間め』
イケボで罵倒するチュンペーにゾクゾクしつつ、夕暮れの外縁区を歩く。
あたしの「異世界ログイン」、なんだか目的がガチな方向に進化しちゃったんですけどぉ!
現在のステータス
• 名前: 星凛愛
• レベル: 5
• 力:4 / 体力:4 / 素早さ:6 / 知力:6 / 魔力:2 / 運:10
• スキル: 【逃走の心得】、【魔力感知】
• 本日の成果: フィオと再会、ラグへの孤児院プレゼン(仮)
• やることリスト: 1. 孤児院設立の資金集め
2. 雑貨屋オープンの夢




