第142話:手がかりは人界の天才錬金術師!?ギャルの名推理なんですけどぉ!
さっきまでは「ギャルの知性を磨くタイムアタック!」なんてノリの課外授業だったはずが、一変。
データ上に存在しない隠蔽された設備と、魔界とも人界とも違う術式という、魔界を揺るがす大事件を追う形になってしまった。
アザエルの言葉を思い出す。
去り際、夜空を見上げて確かに彼は「時間がない」と言っていた。
それが何を意味するのかは分からないが、現魔王と七大貴族の長がここまで深刻になる以上、何かが魔界で起ころうとしているのは間違いなさそうだ。
重苦しい沈黙に耐えかねて、凛愛はボイラーの上のメモリエルにすがるように声をかける。
「ね、ねえモリエ! なんか他にも解ったことないの!? ほら、ゲームならここから次の目的地へのマーカーが出たりするじゃん!」
メモリエルはカメラアイの青い光をプツンといつもの無機質な色に戻し、無慈悲な電子音を響かせた。
「術式の残響をロスト。通信経路の完全な遮断を確認。これ以上の追跡は不可能です」
「ええーっ!? ここで役立たずモード入るの早すぎなんですけどぉ!」
凛愛の叫びが、ゴウゴウと音を立てる魔核炉の中に虚しく響き渡る。手がかりが完全に途絶えた。
そう思った、その時だった。
「……訂正、遮断直前の通信内容を1.4秒分取得」
「再生しろ」
セルヴァインの鋭い命令に、メモリエルのスピーカーからかすかな音が響く。
ザーー……ピシッ……ブツッ……。
激しいノイズと雑音にまみれた、途切れ途切れの、しかし確かにそこに存在する誰かの声だった。
『―――界中……局……第七計画』
ブツン
音声はそこで完全に途切れ、終わりを迎えた。魔核炉の中に、再び重枯しい静寂が戻ってくる。
「え? いまの何……?」
『……今なんと言った?』
「第七計画?」
現魔界の頂点たるアザエル、七大貴族の一角であるセルヴァイン、そして元魔王であるチュンペー。
魔界のすべてを知り尽くしているはずの彼らですら、その言葉の誰も意味が分からない。
メモリエルが、警告を示す赤色に激しく明滅する。
セルヴァインは腕を組み、ホログラムの画面を見つめたまま深く思考に沈んだ。
「大凶学院をカモフラージュに使い、魔界とも人界とも違う術式を用いて一体何をしている……学院の者が関与しているのか?」
謎は深まるばかりだ。
データが消された以上、これ以上この魔核炉で画面を睨んでいても新しい証拠は出てこない。
「……ここでは、これ以上の情報はとれそうもないな、そうだろう?」
セルヴァインの呟きに、メモリエルが静かに電子音を鳴らして同意する。
ここで凛愛の脳裏に、ある一人の少女の顔が鮮明に浮かび上がった。
人界でエルドリンと共にスマホを普及させた折に手渡した。
あの時、そのスマホにホログラム通信する術式を、たった単独で、しかも短期間で成し遂げてしまった規格外の天才。
「……フィオだ」
あの謎の術式に異常なまでに精通しているフィオなら、このわけのわからない天界の電波についても、何か手がかりを持っているかもしれない。
「ねえ、セルヴァインさん! この謎術式知ってるかもしれない娘がいるの!」
突然のギャルの提案に、セルヴァインの眼鏡の奥の瞳が微かに動いた。
力なき勇者の突拍子もない、けれど確かな芯を突いた一言が、停滞しかけた事態に新たな一筋のルートを切り開こうとしていた。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・ひらめきギャル(ドヤ顔): 「ちょっと待って、あたし天才じゃん!? 困った時のフィオ頼みってね! あいつならこういうオタクっぽい暗号、一瞬で解読してくれるっしょ!」と、自分の思いつきに大満足してドヤ顔を決めている。
・相棒:
・顎を引く雀: 凛愛の髪の中で、「フン、フィオの小娘か……確かにあの常識外れの頭脳なら、解析できるやもしれん。バカ人間にしては上出来な提案だ」と、内心で彼女の成長を少しだけ認めている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・無関心の刀身: 「ワシは小娘に全く興味が無いわい……」と、事件の深刻さを軽視している。
・周囲の状況:
・セルヴァイン(感心しつつ検討): 凛愛の提案を受け、「人界の天才錬金術師か……こちらのシステムで追えない以上、あえて外部の視点を取り入れるのは合理的だ。いいだろう、その案を採用する」と、モリエにデータのバックアップを指示している。
・モリエ(データ保存中): カメラアイを明滅させ、「了解。未知通信術式の波形、および1.4秒の音声ログを隔離領域に完全記憶。フィオへの提示準備を完了しました」と、テキパキと仕事をこなしている。
・力: 1
・体力: 1
・素早さ: 3
・知力: 2
・魔力: 0
・運: 60
・スキル: 逃走の極意、魔力感知?




