第141話:消えた0.8パーセントと、不穏すぎるデータなんですけどぉ!
セルヴァインは冷徹な手付きで手元の操作端末を叩く。
すると、二人の間の空間に、巨大魔核炉の精密な立体ホログラム図が青白く浮かび上がった。
そこには、網の目のように張り巡らされた無数の配管、魔力導管、そしてエネルギー流路が、都市全域へ伸びる巨大なネットワークとして映し出されている。
しかし、その完璧な回路の中でたった一本だけ、異質な輝きを放ちながら赤く光る線があった。
「これが、システムから失われている0.8パーセントの流路だ」
「え、データで見えるの!?」
「当然だ。この都市のエネルギーはすべて、わたしの管理下にある」
セルヴァインは当然とばかりに即答する。
「リア。次の問題だ」
「ええっ、またクイズ!? あたしの知力2のギャル脳、もうオーバーヒート寸前なんだけど!」
「この隠されたエネルギーは、一体何に使われていると思う?」
凛愛は頭を抱える。
このサイバーな街を動かす工場?
それとも、この極寒の地を温める暖房?
さっき見た蒸気列車?
それとも、夜の街を照らす街灯?
どれもこれも、全部ありそうに思えてしまう。
「うう、もうわかんない!」
「正解だ」
「は? なんでよ!」
不貞腐れる凛愛に対し、セルヴァインは皮肉げに、しかし少しだけ優しく笑う。
「わからないことを、素直にわからないと言えるのも一つの知性だ」
凛愛の髪の中で、チュンペーが小さく頷く。
あのプライドの高い元魔王が、珍しくこの理系魔王の言葉に同意していた。
「戦場において、生半可な推測で動けば死ぬ。必要なのは確実な証拠だ」
セルヴァインが端末をスワイプし、赤く光る流路を拡大した。
追跡用のラインが、複雑な街の回路を抜けていく。その先を見た瞬間、凛愛は画面の奇妙な違和感に気がついた。
「ん?」
そのエネルギーの配管は、この都市の施設ではなく、さらにその先にある別の場所へと向かっていた。
「大凶学院……? そっちに行ってるの?」
「……そうだ」
セルヴァインの表情から笑みが完全に消え、空気が一気に重くなる。
「大凶学院の、具体的にどこに向かってるの?」
「そこが、最大の、そして最悪の問題だ」
ホログラムの流路は、大凶学院の敷地に入った瞬間、まるで最初から存在しなかったかのようにプツリと消えていた。
「え? なんで消えちゃうわけ?」
「わたしのシステムに、これ以降の記録が無い」
「え?」
「つまり、存在するはずの設備が、この世界のデータ上に存在しないことになっている」
「な、なにそれ怖い! ホラーゲームのバグ演出じゃん!」
セルヴァインは冷たい眼差しで、静かに告げる。
「誰かが意図的に、わたしの目から隠している……ということだ」
この異常事態に、ボイラーの上でデータを吸い上げていたモリエがピピッと電子音を鳴らして反応した。
「追加報告。検出されたエネルギーパターンの解析を完了。過去のデータベースとの一致率、82パーセント」
「何と一致したというのだ?」
セルヴァインが鋭く問いかける。
メモリエルのカメラアイが、いつもの無機質な光から、より深い青色へと輝きを変える。
「該当データ……魔界、人界とも違う通信術式」
その瞬間。
凛愛の髪の中で、チュンペーがビクッと大きく羽を震わせた。
「どっちでもない……なにそれ?」
凛愛だけがその言葉の意味を理解できず、蚊帳の外でパチクリと瞬きをする。
しかし。
セルヴァインとチュンペーの顔色は、完全に変わっていた。
なぜなら。
この、謎の通信術式。
それは500年前。
あの伝説の勇者セリアが、聖光教会と交信するために使っていた秘奥の術式だからだ。
そして、さらに不吉な事実がある。
今の人界には、魔族すら解析不能なその神聖な術式を、独力で完全に再現してみせた規格外の天才少女がいる。
それは、凛愛のよく知る人物だった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・完全に置いてけぼり(ハテナ):「なんか急にみんなしてガチトーンでシリアスな雰囲気になってるんだけど! え、人界でその術式を再現したのって、もしかして……あの子のコト!? 」と、ストーリーの急展開にギャル脳が完全に置いていかれている。
・相棒:
・戦慄する雀: 髪の中でワタワタと震えつつ、「バカな……あの術式はセリアしか使えんはず。この魔界の、それも大凶学院の地下で一体……!」と、かつての敵の技術が身近に迫っている恐怖に激しく反応している。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・ボケた刀身: 「ふむ………懐かしさを覚えるが…….なんじゃったか?」と、物思いに耽っている。
・周囲の状況:
・セルヴァイン(冷徹な分析): 謎の通信術式の危険性を再認識し、「……これは単なる課外授業の範疇を超えたな」と、端末を操作しながら学院の隠蔽された区画の特定を急いでいる。
・モリエ(追跡継続): 「術式の残響を追跡中。大凶学院地下へのアプローチ方法を模索します」と、淡々と次のターゲットを設定している。
・力: 1
・体力: 1
・素早さ: 3
・知力: 2
・魔力: 0
・運: 60
・スキル: 逃走の極意、魔力感知?




