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第143話 : 魔界のインフラ全部使って人界へ接続しちゃうんですけどぉ!

 モリエに謎の術式のデータを記憶させ、人界にいるフィオに解読してもらうという凛愛のアイデア。

 しかし、そこで新たな問題が浮上する。


「あ、でも待って……フィオにデータを送るって言っても、ここ魔界じゃん? 魔界と人界を繋ぐ通信ってどうやるわけ? あたしのスマホ、アンテナが一本も立ってない圏外状態なんだけど!」


 人界にいた頃は当たり前のように使えていた通信機能も、世界が違えばただの黒い板。

 ゲームでいうところのサーバー違いでメッセージすら送れない状態だ。


「魔界と人界って繋がるの?」


 不安そうに尋ねる凛愛に対し、セルヴァインはすっと眼鏡のブリッジを押し上げた。


「繋ぐのではない」


「え?」


「向こうをこちらへ引き寄せる」


「……はい?」


 あまりにも壮大すぎる理系的なパワーワードに、凛愛の脳内は完全に疑問符で埋め尽くされる。

 セルヴァインが手元の特殊な操作端末のキーを鮮やかな手付きで叩き、画面を強くスワイプした。 


 その瞬間。


 二人がいる巨大魔核炉全体が、地響きのような音を立てて低く唸り始めた。


 ゴォォォォ……!


「うわっ、何これ!? 地震!?」


 足元から伝わる激しい振動に凛愛がスクールバッグを抱えてうろたえる中、炉内に張り巡らされた都市全域の魔力導管が一斉に眩い光を放ち、輝き始める。


 思わず窓の外へと目をやると、アーベルーナ・クロニクルの街中の街灯、走り続ける蒸気列車、稼働する巨大な工場、そのすべての明かりと魔界中のエネルギーが、一瞬だけ連動して同じリズムで激しく明滅した。


 ゾク、と凛愛の肌に鳥肌が立つ。

 世界そのものが形を変えていくような、圧倒的なスケールの技術。


「え……」


 凛愛の髪の中で、チュンペーが信じられないものを見るように目を見開く。


『都市全部を通信アンテナにしたのか……! 街一つのエネルギーをすべて一箇所に収束させて……!』


 驚愕する元魔王を前に、セルヴァインだけは表情一つ変えず、淡々と答えた。


「そうだ。通信とは、情報の位相を合わせる技術だ。位相さえ一致すれば、世界の壁など障害にはなり得ない」


 完璧に管理された魔界のインフラを強引にハッキングし、世界の境界線を無理やり歪めて人界の電波を引き寄せる超荒技。

 その規格外すぎる光景に、凛愛は頭を抱えて叫んだ。


「この理系魔王、発想がおかしい!! 規模がデカすぎて普通のWi-Fi環境がゴミに見えるんですけどぉ!」


「魔界の通信網を設計したのは私だ。世界が違う程度で、繋げられないとでも思ったか」


 完璧主義者の魔導族の長によるチートじみた技術によって、今、魔界と人界を繋ぐ特級の通信ルートが無理やりこじ開けられた。


「さすが理系魔王! あとはフィオに繋ぐだけっ! ほらモリエ、早くコールして!」


 勝算が見えて一気にテンションを上げる凛愛。

 しかし、ホログラムの画面は奇妙な静寂を保ったまま、真っ暗な表示から一向に変化しない。


「あれ………接続失敗? 電波がまだ微弱とか?」


 首を傾げる凛愛に対し、ボイラーの上のモリエが淡々とログを吐き出した。


「否定。通信は完全に成立しています」


「え? じゃあなんで画面真っ暗なの?」


「相手側が応答できません。コール音は到達していますが、受話のプロセスが強制的に保留されています」


「……!」


 その機械的な報告に、ボイラー室の空気が一瞬で凍りつく。

 繋がっているのに、出られない?

 ホログラム通信で辺りを見渡せるはずだが、真っ暗だった……。

 凛愛の髪の中で、チュンペーが低く、苦々しい声を漏らす。


「……人界で何かあったか」


 魔界の地下で動き出した不穏な計画と、タイミングを合わせるかのように途絶えた人界の友の応答。


 世界の壁を越えて繋がった回線の向こう側から、新たな危機の足音が静かに響き始めていた。


 現在のステータス

 ・名前: 星凛愛ホシ・リア

 ・状態:

 ・ガチの不安(冷や汗):「ちょっと待って、繋がってるのに出ないとか、フィオの身に何かあったってコト……!?」と、人界の親友の安否が急に心配になってオロオロしている。


 ・相棒チュンペー

 ・険しい表情の雀: 髪の中でじっと動かず、「フン、フィオの身に何かあったと見るべきか……」と、状況の連動性に最悪のシナリオを想定している。


 ・聖光剣アルスカイゼリオン:

 ・静まり返る刀身:「勇者よ、これは人界もただ事では済まんかもしれんのう……」と、珍しく真面目なトーンで引き締まっている。


 ・周囲の状況:

 ・セルヴァイン(回線維持に集中): 端末のログを見つめながら、「通信の切断ではなく保留……向こうの空間そのものが何らかの結界、あるいは妨害電波で隔離されている可能性があるな。このまま回線を維持し、逆探知を試みる」と、冷静に次の手を打っている。


 ・モリエ(ログ監視): 「人界側の空間位相の乱れを感知。フィオの端末の周囲で高エネルギーの衝突反応を予測」と、人界で戦闘が発生している可能性を示唆している。


 ・力: 1

 ・体力: 1

 ・素早さ: 3

 ・知力: 2

 ・魔力: 0

 ・運: 60

 ・スキル: 逃走の極意、魔力感知?

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