第138話:生体反応ゼロのハイテク街と、迷子のモリエを探せゲームなんですけどぉ!
髪の中からひょっこりと顔を出したチュンペーが、呆れたような声で凛愛に釘をさす。
「おいバカ人間、数値上の力や魔力が低かろうと、ヤツを自分と同列にみるなよ? ヤツの恐ろしさはそこにはない」
「わ、わかってるよ! セルヴァインさん、ステータスがあたしより低いんだから、現場ではちゃんとお年寄りを労るみたいに優しくするって!」
「ダメだこりゃ……」
あまりにも的外れなギャル脳の解釈に、チュンペーは小さな翼で頭を抱えて深くため息をついた。
そんなやり取りをしている間に、魔導船は大きく旋回し、下降を始める。
窓の外には、まるでここが禍々しい魔界であることすら忘れてしまうような、全くの別世界が広がっていた。
巨大な歯車が規則正しく噛み合い、幾重にも重なるパイプからは白い蒸気が規則正しく吹き出している。
行き交う人々すらも、どこか金属のパーツを身にまとったかのような、すべてが完璧な機械仕掛けの街。
「ここが、わたしの支配領域、東方機械領域アーベルーナ・クロニクルだ」
セルヴァインが誇らしげに胸を張る。
「わぁ〜! すっげ! 近未来のRPGの拠点を実写化したみたい! エルドリンさん工場の比じゃないね!!」
身を乗り出して窓にへばりつく凛愛の横で、チュンペーもまた、その壮大な景色に静かに息を呑んでいた。
「フン……儂が魔王の座を追われ、雀の姿に身をやつしている間に、魔界のインフラをここまで一変させた場所か。大したものだ」
そのとき、凛愛のスクールバッグの中から、しばらく気配を消していたメモリエルが、プカプカと久しぶりに喋りだしながら浮き出てきた。
「生体反応ゼロ。確認。魔導族は非常に我々機械生命体に似た生態の様です。興味深いサンプルを発見。これより単独でデータ収集を開始します」
モリエはそれだけを無機質に言い残すと、開いた窓の隙間からフラフラと外へ飛んでいってしまった。
「ちょ!! モリエ! 勝手に行かないでー!! ここ、めっちゃ迷子になりそうな構造じゃん!」
慌てて手を伸ばす凛愛だったが、メモリエルはアッという間に歯車の隙間へと消えていく。
セルヴァインは慌てる凛愛を咎めることもなく、遠ざかるメモリエルの後ろ姿に深い興味を示す。
「あれが、噂に聞くメモリエルか……なかなかに興味深い代物だな。だが心配することはない。アレがこの広大な街のどこで迷おうとも、わたしの管理システムが全ての位置を把握している」
「ご、ごめんなさい……あたしがちゃんとペットの管理みたいに、しつけしきれてないから……」
人見知りを発動させつつ申し訳なさそうに縮こまる凛愛に、セルヴァインはフッと冷徹な、しかしどこか楽しげな笑みを浮かべた。
「ならば、丁度良い。そうだな、最初の授業だ。君が自力でメモリエルを探す事から始めようか。制限時間は3分だ」
「えー!? マジで言ってる!? こんな複雑な構造の街中を、たったの3分で探すとか絶対ムリゲーなんですけどぉ!」
「そうだ。だが、君が勇者として、あの機械の妖精と本当に意思を通わせることが出来るならば、自ずと答えはわかるはずだ」
セルヴァインは懐中時計を取り出し、カチリと針を動かす。力なきギャルが知識と絆を試される、理不尽なタイムアタックが唐突にスタートした。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・ガチ焦り(スタートダッシュ): 「最初から無理難題押し付けるとか、この理系イケメンも中身はなかなかのドSじゃん!」と文句を言いつつ、運60の直感を信じて全力で船を飛び出そうとしている。
・相棒:
・見守る雀: 凛愛の髪の中で、「おいバカ人間、ただ走り回っても時間の無駄だ。あのポンコツ妖精がどこに惹かれるか、その頭で少しは考えろ」と、スパルタな授業をどこか楽しんでいる。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・ナビゲーター気取りの刀身: 「ワシに任せるのじゃ! ワシの聖なるアンテナを最大にすれば、モリエの機械の電波くらい一瞬で……あ、ごめん、歯車のノイズが多すぎて何も聞こえんわ!」と、秒で役に立たなくなっている。
・周囲の状況:
・セルヴァイン(計測中): 時計をじっと見つめながら、「さあ、どう動く、人の子よ。君の言う『絆』とやらをわたしに見せてみろ」と、彼女の行動を観察している。
・迷子のモリエ: アーベルーナ・クロニクルの巨大な高圧ボイラーの近くで、「非常に良い熱源を発見。データ解析中」と、マイペースにデータ解析進行中。
・力: 1
・体力: 1
・素早さ: 3
・知力: 2
・魔力: 0
・運: 60
・スキル: 逃走の極意、魔力感知?




