第134話:すべてを凍らせる乱入者と、ジジイの居残り残業は許さないマンなんですけどぉ!
ネクロスが最大の呪詛である終焉告死を完成させようとした、まさにその瞬間。
その場の温度が、劇的に変わった。
いや。
それは温度などという単純なものではなかった。
世界そのものが、完全に静止したのだ。
激しく舞い散っていたピンクの雪が、まるで時間が凍りついたかのように空中でピタリと止まる。
四方八方に吹き荒れていた、ネクロスと凛愛の凶悪な魔力の嵐が、一瞬にしてその音を失って消え去る。
覚醒モードの金色の瞳を開いていた凛愛ですら、その異様な気配に思わず息を呑んだ。
知力2の頭でも、あるいはそこにいた全員が瞬時に理解した。
何か、とんでもない次元の存在が、この戦場に降り立ったのだと。
ネクロスの右腕をガッチリと掴んだその乱入者の顔を見て、大死霊術師の顔が驚愕に歪む。
「あ、アザエル!? な、なぜじゃ、なぜ儂の邪魔を!?なぜ止めるのじゃ!」
現れたのは、現魔界の頂点に君臨する男であり、チュンペーことクロウヴァルドの弟であるアザエルだった。
アザエルはネクロスの腕を掴んだまま、冷徹極まる視線を向け、淡々と、だけど拒絶を許さないトーンで告げた。
「星凛愛、彼女自らの意志による覚醒をもたらした。今回の件において、これ以上の成果は必要ありません」
「な……何を言うておる! この小娘はまだ未熟! いま、ここでその芽を摘まねば、いずれ魔界全体の災いとなるぞ!」
ネクロスが必死に反論するが、アザエルの表情は1ミリも動かない。
「それが、私の望みです」
アザエルは静かに、しかし絶対的な決定事項として言葉を重ねる。
「それに、勝負は一度……いや、二度ついています」
一度目は、凛愛の精神世界でギャルの思い出の輝きに敗北したこと。
二度目は、チュンペーという小さな雀の奥底に眠る、かつての魔王の深淵に触れて完全に心を折られたこと。
そのすべてを見透かされているのだと知り、ネクロスの声がさらに情けなく裏返る。
「ま、まだじゃ! 儂の死霊術はまだ終わっておらん! 儂はまだこうしてピンピンしておるわ!」
往年の大死霊術師としてのプライドが、この場での撤退を必死に拒もうとする。
だが、アザエルは掴んでいたネクロスの腕をさらに容赦なく締め上げ、冷たい声で最後通告を突きつけた。
「いま勇者を屠られては私の念願は果たせなくなる」
その言葉に含まれた絶対的な冷徹さに、ネクロスの背筋に冷たいものが走る。
「それゆ、課外授業でもなく独断で星凛愛を狙ったのは、いただけません」
アザエルの瞳の奥に、凍てつくような怒りの炎が灯る。
「彼女を自ら覚醒に至らせた事は評価しますが、これ以上は、黙っていられません」
「引き際は弁えて頂きたいものですな。これ以上は……」
世界を静止させるほどの圧倒的な力を誇る、現魔王アザエルの乱入により、ネクロスの暴走は完全に押さえ込まれた。
最悪のデスゲームから一転、魔界の最高権力者による冷たい政治劇のような空気が流れ始める中、身動きの取れない凛愛は、光の剣を構えたままこの奇妙な救世主の動向をじっと見つめるしかなかった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・職業: 勇者(一時的覚醒)
・状態:
・完全に置いてけぼり(フリーズ): 命拾いしたものの、「ジジイを、片手で黙らせちゃった……アザエルさん、どんだけ強いの!?」と、緊迫した空気の中で超えるべき存在の姿に驚愕。
・光の神器装備・待機状態: 世界が止まっているため、不用意に動けず光の剣を構えたまま硬直中。
・相棒:
・複雑な視線を向ける雀: 乱入した実の弟であり、今の魔界の頂点であるアザエルを睨みつけながら、『アザエルめ……だが、あの老いぼれの無様な居残り残業を止めたことだけは評価してやるか』と、髪の中で静かに息を潜めている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・一安心の刀身: 「やはりな、更なる魂の覚醒が必要なようじゃな!ジジイの奥義も、くらえば終わっていたじゃろう……」と真面目に考察。
・周囲の状況:
・ネクロス(強制連行寸前): 現魔王アザエルの絶対的な魔力で腕をロックされ、「おのれ、儂をここまでコケにしおって……! だが、いま此奴を敵に回すのは時期尚早……!」と、渋々引き下がる準備を始めている。
・アザエル(戦場支配): 片手でネクロスを抑え込み、完全にこの場の主導権を握っている。
その視線は、静かに凛愛の金色の瞳へと向けられている。
・力: 1
・体力: 1
・素早さ: 3
・知力: 2
・魔力: 0
・運: 60
・スキル: 逃走の極意、魔力感知?、魂の共鳴(完全発動・勇者モード)




