第133話:ジジイの混乱奥義!未熟な覚醒モードに策ないんですけどぉ!
畏怖した主人を見捨てるように、ネクロスの身体を覆っていた死霊葬衣は恐怖から逃れようと四方八方へと霧散していく。
「ひ、ひぃぃ! お許しをー!」と叫ぶ亡者たちの霧が晴れると、死の衣から解放されたチュンペーが、何事もなかったかのようにパサパサと羽を震わせながら宙に浮き上がった。
あまりの急展開に、金色の瞳を開いた状態の凛愛も完全に呆気にとられている。
「ちょ、チュンペー! あんたマジでなんともないの!? 骨のドレスにパックリいかれてたじゃん!」
『ああ、なんとかな。我を誰だと思っている、バカ人間』
チュンペーはいつもの偉そうな鳴き声で返し、凛愛の髪の中へと器用に戻っていく。
さっきまでネクロスの魂を恐怖のどん底に叩き落としていた、魔界を統べる絶対王者の圧倒的なプレッシャー。
それが一変して、いま目の前に居るのは、ただの小さくて丸い雀だ。
「わ、儂は……一体何を見ていたんじゃ……?」
ネクロスは細かく震える己の手を見つめ、茫然と呟く。
しかし、現実に目を向ければ、自慢の死霊葬衣は完全に破られ、跡形もなく消え去っている。
その事実が、老いた死霊術師のプライドを激しく逆撫でした。
「まやかしか……! 儂の精神を狂わせる、何か珍妙な幻術を使いおったな! 小賢しい小娘め!!」
ネクロスの濁った眼が、再び怒りでギラギラと輝き始める。
恐怖が怒りへと上書きされたことで、彼は目の前のギャル勇者を改めて冷酷に観察した。
自らの意志で覚醒したにせよ、その放つ聖なる波動は、かつて魔界を揺るがした伝説の勇者セリアの全盛期には、到底ほど遠い。
今の凛愛の覚醒が、経験不足による不完全なものであること。
ネクロスは百戦錬磨の知識で、それを見透かしていた。
「ウィッヒ! 死霊葬衣など無くとも、戦い方も知らぬ未熟な小娘に遅れをとる儂では無いわ!!」
「な、なんなのよ! 勝手にビビり散らかしたと思ったら、急に復活してキレだしてイミフなんですけど!」
情緒不安定すぎるジジイの態度に文句を言いつつも、凛愛は両手の光の剣をぐっと握り直し、再び身構える。
「ウィッヒヒヒ! 未熟な偽りの勇者め!!」
ネクロスの精神体が限界まで膨れ上がり、周囲の空間がガラスのようにひび割れ始める。
「過去を葬り、現在を蝕み、未来を閉ざす…….死の理!三生万物・生者必定終焉告死」
彼がその破滅の呪いを解き放つべく、右手を勢いよく振り上げた、まさにその瞬間。
バシッ。
凍てつく夜空に、肉体と肉体が激しくぶつかり合う、妙に生々しい音が響いた。
「な……!?」
振り上げたはずの右手を、何者かにガッチリと力強く掴まれ、ネクロスの動きが完全に制止する。
暗闇から音もなく現れ、ジジイの腕を容赦なく締め上げているその人物は、冷徹な響きを帯びた声で、静かに告げた。
「そこまでにして頂きましょう」
光の神器が照らし出す戦場に、新たな波乱を巻き起こす影が乱入する。この絶対絶命のタイミングで現れたのは?
現在のステータスと状況の後書き
・名前: 星凛愛
・職業: 勇者(一時的覚醒)
・状態:
・ツッコミが追いつかない(困惑): チュンペーが無事で一安心したのも束の間、「ジジイのキレ芸のテンションに疲れてきたところで、今度は誰!? 」と、次々に増える登場人物にギャル脳の処理落ちが始まっている。
・光の神器装備・継続: 目の前で腕を掴まれているネクロスを見ながら、いつでも光の刃を叩き込めるよう構えは崩していない。
・相棒:
・定位置に戻った雀: 凛愛の髪の中に収まりつつ、『フン……』と、ネクロスの腕を掴んだ乱入者の気配を鋭く睨みつけている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・ホッとした刀身: 「おお、雀が無事で良かったのじゃ! いや待て、いまワシの柄を掴んでいる凛愛の手が、怒りと混乱でめちゃくちゃ手汗をかいておる! 覚醒してはいるが……緊張感のなさがブレないのう、おぬし!」と、いつも通り騒いでいる。
・周囲の状況:
・ネクロス(完全停止): 最大の呪術を発動しようとした瞬間に物理的に腕を掴まれ、「な、何奴じゃ!? 儂の術の展開を、力技で止めただと……!?」と、またしても想定外の事態に目玉をひんむいている。
・乱入者: ネクロスの腕を完璧な力加減でロックし、冷たい眼差しで死霊術師を見下ろしている。
・力: 1
・体力: 1
・素早さ: 3
・知力: 2
・魔力: 0
・運: 60
・スキル: 逃走の極意、魔力感知?、魂の共鳴(完全発動・勇者モード)




